経験欄では何を書くことが求められる?
申請書の経験欄には、プロジェクトごとに基本情報と説明文を入力します。基本情報は、プロジェクト名、組織名、自分の役職、開始と終了の年月などです。
説明文の中身は、PMIの公式ブログ(2026年8月28日)が参考になります。プロジェクトごとに説明できるようにしておく点を、6つ挙げています。当サイトの言葉で整理すると、次のとおりです。
| 観点 | 書くこと | 英語の書き出しの例 |
|---|---|---|
| 目的 | 何のためのプロジェクトか。規模も添える | The objective of the project was to ... |
| 期間 | 開始と終了の年月(入力欄にも入れる) | From April 2024 to March 2025, ... |
| 率い方(役割) | 自分の立場と、率いた範囲 | As the project manager, I led a team of ... |
| 関わった相手 | 協力し、働きかけた関係者 | I worked with the sponsor, two vendors, and ... |
| 率いた活動 | 自分が行ったマネジメントの仕事 | I developed / coordinated / managed ... |
| 成果 | 結果と、目標に対してどうだったか | The project was completed ... and achieved ... |
この順に書くと、読み手が迷いません。各観点に1〜3文が目安です。長く書くほど通りやすくなるわけではありません。
説明文には語数(字数)の制限があります。ネットでは「200〜500語」などの数字も見られますが、PMIのハンドブックやECOに具体的な数字の記載はありません。変わることもあるので、入力画面に表示される条件に合わせてください。
どんな経験なら書ける?肩書きは要る?
肩書きが「プロジェクト・マネジャー」である必要はありません。PMIのブログは、肩書きより仕事の中身が大事だとしています。リーダーやコーディネーターの立場でも、プロジェクトを率いて方向づけていれば対象です。
逆に、プロジェクト・マネジャーの肩書きでも、定型の運用業務は数えられません。ECOとPMIのブログをもとに、書ける経験と書けない経験を整理しました。
書ける経験の例
- システムの導入を率いた
- 新しい製品・サービス・業務手順の立ち上げを管理した
- 部門をまたぐ改善の取り組みを取りまとめた
- 規制対応やガバナンス整備のプロジェクトを率いた
- 大きなプログラムの一部の作業を率いた
書けない経験の例
- 学校の課題
- 学位のための研究
- 私的なイベントの計画
- 自宅の改修
- 毎週くり返す問い合わせ対応などの定型業務
決まった目的と期限があり、その時だけの状況で価値を生む取り組みかどうかで判断する。
無給の経験でもかまいませんが、仕事の場でのものに限られます(ECO)。経験は申請前の10年以内のものだけを数えます。
期間が重なるプロジェクトは、重なった月を1回だけ数えます。たとえば4〜9月と7〜12月のプロジェクトなら、重なる7〜9月を二重に数えず、合計は9か月です。
なぜ「作業」ではなく「マネジメント」を書くのか?
PMPの受験資格は「プロジェクトを率いて方向づけた経験」です。審査では、説明文から「この人はプロジェクトを率いていたか」を判断します。
そのため、専門の作業(設計、コーディング、施工、分析など)を詳しく書いても、評価にはつながりません。書くべきは、計画を立てた、関係者を調整した、リスクに手を打った、進捗を報告した、といったマネジメントの動きです。
書くときは、PMPの出題範囲の言葉を手がかりにしましょう。たとえば、スコープの定義、スケジュールの作成、リスクの特定、ステークホルダーとの調整、変更の管理、終結と教訓などです。26タスクの全体は新ECOの26タスク一覧で確認できます。
作業の説明(伝わりにくい)
- 計画Wrote program code for the new system.
- 調整Tested the modules.
- 管理と報告Fixed defects.
マネジメントの説明(伝わる)
- 計画Planned the development schedule and work breakdown.
- 調整Coordinated testing with two vendors.
- 管理と報告Tracked defects and reported status to the sponsor.
主語を I にして、計画・調整・判断・報告の動詞で書く。
予測型のプロジェクトはどう書く?
予測型(ウォーターフォール)のプロジェクトでは、立ち上げから終結までの流れに沿って書くと自然です。以下は当サイトが作った架空の例です。そのまま使わず、自分の経験に置き換えてください。
記入例(予測型・社内システムの更改)
Objective: The objective was to replace the company's legacy order management system within 12 months and a budget of 80 million yen. As the project manager, I led a team of eight internal staff and two vendors. I defined the scope with business departments and created the work breakdown structure and the baseline schedule. I identified risks in data migration and arranged a rehearsal as a response. I held weekly status meetings and reported progress and cost performance to the steering committee. When the sales department requested additional reports, I submitted a change request and obtained approval before updating the plan. Outcome: The new system went live one week ahead of schedule within budget, and I documented lessons learned for future projects.
この例には、予測型の代表的なマネジメントの動きが入っています。スコープ、WBS、ベースライン、リスク対応、報告、変更管理、教訓です。
アジャイルとハイブリッドのプロジェクトはどう書く?
アジャイルで進めたプロジェクトでは、スプリントやバックログなど、実際に使った言葉で書きます。スクラムマスターやプロダクトオーナーの立場だった場合も、チームを導いた経験なら対象です。
記入例(アジャイル・顧客向けアプリの開発)
Objective: The objective was to release a mobile application for customer appointments and improve it based on user feedback. I served as the project lead for a cross-functional team of six members using two-week sprints. I facilitated sprint planning, daily stand-ups, reviews, and retrospectives, and worked with the product owner to prioritize the backlog by business value. I removed impediments such as delayed access to test environments by escalating to the infrastructure manager. Outcome: The first release was delivered in four months, and the online booking rate increased in the following quarter.
記入例(ハイブリッド・新工場の生産ライン立ち上げ)
Objective: The objective was to set up a new production line, including equipment installation and the development of control software. I managed the equipment installation with a predictive plan and fixed milestones, while the software team used iterative development to reflect feedback from operators. I integrated both plans, managed procurement of equipment, and coordinated safety inspections required by regulations. Outcome: The line started operation on the planned date and met the target for initial production quality.
ハイブリッドでは、どの部分を予測型で、どの部分を反復で進めたかを書き分けると、実態が伝わります。
英語表現の型と、字数のまとめ方は?
英語が得意でなくても、型を決めれば書けます。ポイントは3つです。
- 主語はI(私)にする:「The team did ...」ばかりだと、自分の役割が見えない。
- 過去形の動詞で始める:led, planned, defined, coordinated, managed, monitored, resolved, reported, closed など。
- 数字を入れる:期間、人数、予算、成果の数値があると、規模と結果が伝わる。
語数が足りないときは、リスクへの対応や関係者との調整の具体例を1文足します。多すぎるときは、技術の説明や背景を削ります。マネジメントの動きは削らないでください。
翻訳ツールを使うのは問題ありません。ただし、出てきた英文が自分の実態と合っているかは必ず確かめてください。大げさな表現になっていないかも見直しましょう。
差し戻されやすい書き方はどんなもの?
次のような書き方は、追加の説明を求められたり、経験として認められなかったりしやすい例です。
| 書き方 | なぜ問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 作業の羅列(設計した、テストした) | 担当者の仕事に見える | 計画・調整・報告の動きを書く |
| 定型業務(毎月のシステム運用、月次の締め) | プロジェクトではない | 期限のある取り組みだけを書く |
| 学校の課題や私的な活動 | 仕事の場での経験ではない | 外す |
| 目的や成果がない | 何を達成したかが分からない | 冒頭に目的、最後に結果を書く |
| 主語がチームだけ | 自分の役割が見えない | Iを主語にした文を中心にする |
| 期間と内容が合わない | 数か月の期間に過大な内容 | その期間に実際にしたことに絞る |
| 他人の例文をほぼそのまま | 実態と合わず、確認者の署名が得にくい | 自分のプロジェクトの事実で書く |
経験を実態より大きく書くのは避けてください。監査になると、各プロジェクトの確認者に内容を見てもらい、署名をもらいます。確認者が「この人はそこまでやっていない」と感じれば、署名は得られません。監査の流れはPMPの監査に当たったらで解説しています。
提出する前に何を確かめる?
送信した後で書き直すのは手間がかかります。提出の前に、次の7点を確かめてください。
- 経験は申請前の10年以内か。重なった月を二重に数えていないか。
- 定型業務・学校の課題・私的な活動が混ざっていないか。
- 各プロジェクトに、目的・期間・率い方・関わった相手・率いた活動・成果がそろっているか。
- 主語がI(私)で、マネジメントの動詞で書いているか。
- 期間・人数・予算・成果の数字が実態どおりか。
- 各プロジェクトに、内容を確かめて署名できる上司などがいるか。
- 顧客の機密情報など、外に出せない内容を書いていないか。
POINT
申請書を書き終えたら、PMPの問題でも同じ「マネジメントの動き」が問われます。経験を言葉にした直後は、試験の考え方をつかむよい機会です。無料模試30問で、自分の判断がPMIの考え方と合っているか確かめてみてください。