PMP で問われるリーダーシップとは?
PMP 試験のリーダーシップの問題は、スタイルの名前を当てるより、プロジェクト・マネジャー(PM)としてどう関わるかを選ぶ問題が中心です。基本の考え方は次の3つです(当サイトの整理)。
- ふだんはチームに任せて支える: チームと話し合って決める協働型や、チームを支えるサーバント型の行動が正解になりやすい。
- 指示を強めるのは限られた場面: 経験のない作業、緊急時、安全や法令に関わる場面。
- 相手と作業で変える: 同じ人にも、慣れた作業と初めての作業で関わり方を変える。
旧版の試験内容の概要(2021年版)は、スタイルの例として「指示型(directive)」と「協働型(collaborative)」を挙げていました。新版では例が消えましたが、この対比は今も判断の軸になります。
People タスク3「チームを率いる」の範囲は?
新しい試験内容の概要(ECO 2026)の People タスク3は「プロジェクトチームを率いる(Lead the project team)」です。イネーブラー(仕事の例)は次の7つです(当サイトによる要約)。
| イネーブラー(要約) | 具体的な行動の例 |
|---|---|
| チームとしての期待を決める | 成果の基準・働き方・連絡の仕方をチームで合意する |
| チームに権限を委ねる | 作業の進め方や見積もりをチームに決めてもらう |
| 問題を解決する | チームで解けない障害を、PM が関係者と調整して取り除く |
| チームの声を代弁する | チームの懸念や提案を、スポンサーや関係者に伝える |
| 多様な経験・技能・視点を支える | 異なる意見を歓迎し、得意を生かす役割を考える |
| 適切なリーダーシップスタイルを決める | チームの成熟度や状況に合わせて関わり方を変える |
| チーム内の役割と責任を明確にする | 誰が何を決め、何をするかを決めて共有する |
旧版の「チームを率いる」「チームのパフォーマンスを支える」「チームに権限を与える」などは、このタスクにまとまったと見られます(当サイトの見方)。期待の設定にはグランドルールづくりも関わります。
リーダーシップスタイルにはどんな種類がある?
リーダーシップスタイルの分け方は研究者や教材によって違い、ひとつに決まった分類はありません。PMP の学習でよく出るものを、試験での扱われ方とあわせて整理します。
| スタイル | 特徴 | 合う場面 | 試験での扱い |
|---|---|---|---|
| 指示型 | やることと進め方を具体的に指示する | 新人が多い、緊急時、安全に関わる作業 | 常用すると誤り。限られた場面では正解 |
| 協働型・参加型 | チームと話し合って決める | 専門性のあるメンバーが多い | 正解になりやすい |
| サーバント型 | チームを支え、障害を取り除き、成長を助ける | アジャイル、自律的なチーム | 正解になりやすい |
| 変革型 | ビジョンで動機づけ、変化を起こす | 大きな変革、組織の方向転換 | ビジョン共有の場面で登場 |
| 取引型 | 成果に応じて報酬や評価を与える | 定型作業、明確な目標管理 | 単独では弱い。動機づけ理論と組み合わせて出る |
| カリスマ型 | 人柄や熱意で人を引きつける | 立ち上げや危機での鼓舞 | それだけに頼る選択肢は弱い |
| 自由放任型 | ほとんど関与せず任せる | 十分に成熟した専門家の集まり | 関与しない選択肢は誤りになりやすい |
教材によっては、取引型・変革型・カリスマ型を組み合わせた相互作用型(interactional)も挙げられます。自由放任型を「奔放型」、取引型を「業務達成型」と訳す教材もあります。
サーバントリーダーシップは、アジャイルとの関係で特によく問われます。詳しくはサーバントリーダーシップの記事で解説しています。
状況対応型リーダーシップとは?
状況対応型(シチュエーショナル)リーダーシップは、「最善のスタイルはひとつではなく、相手の状況で変わる」という考え方です。ハーシーとブランチャードが示したモデルが知られています。
メンバーの力(できるか)と意欲(やる気・自信)に合わせて、関わり方を変えます。呼び名は版によって違うため、ここでは広く使われる「指示・コーチ・支援・委任」で示します。
- 指示その作業の経験がない人に、やり方を具体的に示し、こまめに確かめる初めての作業
- コーチ少し慣れたが自信が揺れている人に、理由を説明しながら一緒に考える慣れ始め
- 支援力はあるが迷いがある人に、決定を任せつつ相談に乗る力はある
- 委任力も意欲も高い人に、目標だけ合意して進め方は任せる任せられる
同じチームの中でも、人と作業ごとに関わり方を変えてよい。
ポイントは、判断を人ではなく作業ごとにすることです。ベテランでも、新しい技術を使う作業では、最初は関わりを厚くします。逆に、力のある人を細かく管理すると、意欲を下げてしまいます。
チームの成長段階(形成期・混乱期など)によっても、PM の関わり方は変わります。段階ごとの関わり方はタックマンモデルの記事で整理しています。
チームに権限を委ねるとはどういうこと?
新ECO は「チームに権限を委ねる」をタスク3の例に挙げています。とくにアジャイルやハイブリッドでは、作業の進め方や見積もりは、その仕事をする人が決めるのが基本です。
権限を委ねるときは、次の3つをそろえます。
- 目的と制約を共有する: 何のためにやるのか、守るべき期限や予算は何かを先に伝える。
- 決めてよい範囲を明確にする: チームで決めてよいこと、PM やスポンサーの承認が要ることを分ける。
- 支える仕組みを用意する: 困ったときに相談できる場と、障害を PM が取り除く約束。
試験で誤りになりやすいのは、PM がチームの見積もりを勝手に削る選択肢です。チームが決めるべき作業の割り当てを PM が決める選択肢も同じです。逆に、委ねた後に放っておく(自由放任)のも誤りです。委ねたうえで、チームの声を外に届け、問題解決を助けます。
予測型とアジャイルで PM の関わり方はどう違う?
PMP の問題は約40%が予測型、残りがアジャイルとハイブリッドです。同じ「率いる」でも、PM の関わり方は開発アプローチで変わります。
予測型
- 作業の割り当て計画に沿って、PM がチームと相談して決める
- 見積もり作業する人や専門家の意見をもとに作る
- 進め方の決定計画とベースラインの範囲で決める
- PM の主な役割計画・調整・統制を率いる
アジャイル
- 作業の割り当てチームが自分たちで選ぶ
- 見積もりチームが相対見積もりなどで決める
- 進め方の決定チームが自己組織的に決める
- PM の主な役割障害を取り除き、チームを支える
どちらでも、作業する人の意見を聞いて決めるのが PMI の考え方。
役割と責任はどう明確にする?
役割があいまいだと、作業の抜けや重複、決定権をめぐる対立が起きます。予測型では、作業ごとに誰が実行し、誰が説明責任を持つかを表にした責任分担表(代表例が RACI チャート)を使います。
アジャイルでは、スクラムのように役割の枠組み(プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者)が決まっていることが多いです。それでも、誰が何を承認するか、外部の関係者との窓口は誰か、などは決めておきます。
役割と責任は、決めたら終わりではありません。メンバーの入れ替わりやスコープの変化があれば見直し、全員が最新の分担を知っている状態を保ちます。
試験で正解になりやすいリーダーの行動は?
当サイトでは、リーダーシップの状況問題を次の見方で解くことをすすめています。
- チームの状態を見てから関わり方を決める: 新人には具体的に、熟練者には任せる。
- 決める前にチームの意見を聞く: ただし安全・法令・緊急時は PM が決める。
- チームの代わりに外と調整する: チームが作業に集中できるよう、障害や外からの割り込みを引き受ける。
- 個人の問題は個別に扱う: 成果が落ちたメンバーには、人前でなく1対1で理由を聞く。
リーダーシップの判断は、People 領域の多くの問題に関わります。タスク別ドリルで People のタスクを続けて解くと、判断の型が身につきやすくなります。
確認問題1
経験の浅いメンバーに重要な作業を任せた
(当サイトの独自問題)入社2年目のメンバーが、初めて外部システムとの連携部分の設計を担当することになりました。本人は意欲的ですが、この種の設計の経験はありません。チームのほかのメンバーは経験豊富で、自分たちで作業を進めています。プロジェクト・マネジャーがこのメンバーに対してとるべき関わり方はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。意欲はあっても、経験がない作業です。状況対応型の考え方では、指示を厚くするのが適切です。チームのほかのメンバーとは、関わり方を変えてかまいません。
2:経験のない作業を任せきりにすると、手戻りが大きくなるおそれがあります。3:成長の機会を奪い、本人の意欲も下げます。4:基準を確認しても、完成まで進み具合を見なければ、問題の発見が遅れます。
確認問題2
スポンサーが作業の進め方に口を出す
(当サイトの独自問題)アジャイルで進めているプロジェクトで、スポンサーが毎日チームの作業部屋を訪れ、開発者に直接「この機能を先に作ってほしい」と頼んでいます。開発者たちは、スプリントの計画が崩れて困っていると PM に相談しました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。PM はチームの声を代弁し、外からの割り込みを調整します。優先順位の要望はプロダクトオーナーを通してバックログで扱う流れを、スポンサーに説明して協力を求めます。
1:アジャイルでは、新しい要望はプロダクトオーナーがバックログで扱います。割り込みの流れも変わりません。2:スプリントの計画が崩れ、チームの負担が増えます。3:今まさに起きている割り込みを、ふりかえりまで放置することになります。
確認問題3
誰が承認するのかで作業が止まった
(当サイトの独自問題)ハイブリッド型のプロジェクトで、画面の設計案を「誰が最終承認するのか」が決まっていません。デザイナーとプロダクトオーナーと顧客の担当者が、それぞれ別の修正を求めています。設計作業は1週間止まっています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
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正解:2。作業が止まった原因は、承認の役割と責任があいまいなことです。関係者と決めて記録し、共有すれば、同じ混乱がくり返されません。
1:要望が食い違っていれば全部は取り入れられず、原因も残ります。3:PM が承認権を持つと合意されていないのに決めると、新たな対立を生みます。4:役割を決めれば解ける問題で、延長を申請するのは早すぎます。