ローリングウェーブ計画法とは?
ローリングウェーブ計画法(Rolling Wave Planning)は、近い将来の作業は詳しく、遠い将来の作業は大まかに計画する方法です。時間が進むにつれて、次の期間を順に詳しくしていきます。
名前は「押し寄せる波」のイメージから来ています。目の前の波(直近の作業)ははっきり見えますが、遠くの波(先の作業)はぼんやりしか見えません。波が近づいたら、その波を詳しく見て対応します。
たとえば1年がかりのプロジェクトで、最初の3か月分は日単位まで決めます。4か月目以降は「設計」「開発」「テスト」くらいの粒度にしておきます。3か月目に入るころ、それまでにわかったことをもとに、次の3か月を詳しく計画します。
段階的詳細化との関係は?
段階的詳細化(Progressive Elaboration)は、情報が増えるにつれて計画を詳しくしていく、広い考え方です。情報が増えれば、見積りの精度も上がります。スコープ、コスト、リスクなど、計画のあらゆる部分に当てはまります。
ローリングウェーブ計画法は、この段階的詳細化を、主に作業とスケジュールの計画に当てはめた具体的な手法です。関係を図にすると次のようになります。
- 段階的詳細化(考え方)情報が増えるにつれ、計画のあらゆる部分を詳しくする
- ローリングウェーブ計画法(手法)近い作業は詳しく、遠い作業は粗く。時間とともに次の期間を詳しくする
- 計画パッケージ(道具)まだ細かく分けていない、先の作業の入れ物
考え方→手法→道具の順に具体的になる。
段階的詳細化は、計画をいいかげんに作ることではありません。先のことも、わかる範囲で大まかに計画し、予算や期間の枠は持っておきます。わからない部分を無理に細かく決めないだけです。
計画パッケージとは?
計画パッケージ(Planning Package)は、WBS の中で中身はある程度わかっているが、まだアクティビティに分けていない部分です。予算の枠は割り当てておき、詳しい計画は後で立てます。
ローリングウェーブ計画法では、遠い時期の作業を計画パッケージとして置いておきます。時期が近づいたら、ワーク・パッケージやアクティビティに分けていきます。WBS の作り方は WBSとは? で解説しています。
| 時期 | 作業 | 計画の詳しさ |
|---|---|---|
| 4〜6月 | 要件定義・基本設計 | アクティビティ単位で日程・担当まで決定 |
| 7〜9月 | 詳細設計・開発 | ワーク・パッケージ単位(大まかな期間と予算) |
| 10〜12月 | テスト | 計画パッケージ(予算の枠と大まかな期間だけ) |
| 1〜3月 | 移行・研修・本番稼働 | 計画パッケージ(同上) |
6月が近づいたら、要件定義でわかったことをもとに7〜9月を日単位まで詳しくします。同時に、10〜12月をワーク・パッケージ単位に分けます。これを繰り返していきます。
次の期間はいつ詳しくする?
ローリングウェーブ計画法で一番大事なのは、詳しくするタイミングを先に決めておくことです。よく使われる区切りは次の3つです。
- 段階(フェーズ)の終わりの前:今の段階が終わる数週間前に、次の段階を詳しくする。
- 一定の間隔:毎月の計画会議で、次の数か月分を詳しくする。
- 大事な時点の前:試験の結果や契約の締結など、先の判断に必要な情報が出る時点の後に詳しくする。
どの区切りでも、作業する人たちと一緒に詳しくします。それまでにわかったことを使えるので、見積りの精度が上がります。
メリットとよくある失敗は?
メリットは、わからない部分を無理に決めずに済み、手戻りが減ることです。わかっている部分には早く手を付けられ、計画を作る手間も必要な時期に分散できます。
一方で、使い方を誤ると「計画がないまま進む」状態になります。よくある失敗と対策をまとめました。
| よくある失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 詳しくするタイミングを決めていない | 直前まで先の計画が粗いまま残る | 段階の終わりの前など、詳しくする時期を計画に入れておく |
| 先の部分に予算と期間の枠がない | 全体の見通しが立たず、承認も得にくい | 計画パッケージにも予算と期間の枠を割り当てる |
| PM が一人で詳しくする | 見積りが外れ、現場が納得しない | 作業する人たちと一緒に見積もる |
| 詳しくした結果、枠を超えても放置する | ベースラインと実態がずれる | 枠を超えるなら、変更管理の手続きで扱う |
アジャイルとの共通点は?
ローリングウェーブ計画法は予測型の手法ですが、考え方はアジャイルとよく似ています。
| ローリングウェーブ計画法 | アジャイル(スクラムの例) | |
|---|---|---|
| 近い作業 | 詳しく計画する | 次のスプリントの分をスプリント・プランニングで詳しく決める |
| 遠い作業 | 計画パッケージとして大まかに | プロダクト・バックログの下の方は粗い粒度のまま |
| 見直しのタイミング | 期間の区切りや段階の終わり | スプリントごと |
| 全体の枠 | スコープ・ベースラインは保つ | スコープは変わりうる。時間と費用の枠を固定することが多い |
共通しているのは、「先のことは不確かなので、わかった時点で詳しくする」という姿勢です。違いはスコープの扱いです。予測型では全体のスコープを最初に合意して保ち、アジャイルではスコープ自体を優先順位に応じて変えていきます。アジャイルで期間を区切る考え方は タイムボックスとは? で解説しています。
PMP試験ではどう問われる?
ECO 2026年版の Process 領域には、統合した計画をつくるタスクがあります。選んだ進め方に応じてスケジュールを準備するタスクも含まれます。ローリングウェーブ計画法は、次のような場面で答えになります。
- 先の工程の情報がまだない → 近い作業を詳しく計画し、先の作業は大まかにしておく。
- スポンサーが最初から全工程の詳細な日程を求めている → 不確かさを説明し、段階的に詳しくする計画を提案する。
- 長い予測型のプロジェクトで、後半の要件が未定 → ローリングウェーブ計画法やハイブリッドの進め方を検討する。
どの進め方を選ぶかの判断は 予測型とアジャイルの見分け方 で詳しく扱っています。用語の確認は 用語集 で、問題演習は 無料模試30問 でできます。
確認問題1
後半の情報がない
(当サイトの独自問題)2年がかりの工場建設プロジェクトで、後半の設備の仕様は、1年目の試験の結果を見て決めることになっている。スポンサーは全体の計画を早く承認したいと考えている。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。わかっている部分は詳しく、わからない部分は枠だけ持って大まかに計画します。情報が出たら詳しくするのがローリングウェーブ計画法です。全体の枠があれば、スポンサーも承認しやすくなります。
1:仮の仕様で細かく決めると、後で大きな手戻りが出ます。2・4:わかっている部分まで止めたり遅らせたりする必要はありません。
確認問題2
計画パッケージの意味
(当サイトの独自問題)WBS の「本番移行」は1年後に行う作業である。予算は割り当てられているが、細かいアクティビティにはまだ分けられていない。この要素の説明として最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。予算の枠はあり、詳しい計画は時期が近づいてから立てる。これが計画パッケージです。
1:先の作業を今すぐ細かくする必要はありません。3:予算があるので、スコープには含まれています。4:本番移行は作業であり、時点ではありません。
確認問題3
詳しくするタイミング
(当サイトの独自問題)ローリングウェーブ計画法で進めているプロジェクトで、基本設計の段階がまもなく終わる。次の詳細設計の段階は、まだワーク・パッケージの単位でしか計画されていない。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。段階が近づいたら、それまでにわかったことを使って次の段階を詳しく計画します。作業する人たちと一緒に計画すると、見積りの精度も上がります。
1:始まってから決めるのでは遅すぎます。2:全体を作り直す必要はありません。3:必要な作業を省くと、品質を損ないます。