新ECO でメンタリングはどこに入った?
旧版の試験内容の概要(2021年版)では、People 領域に「関係するステークホルダーをメンタリングする」という独立したタスクがありました。メンタリングに時間を割く、メンタリングの機会を見つけて行動する、という例が挙がっていました。
2026年7月9日からの新版(ECO 2026)では、独立したタスクではなくなりました。People タスク5「ステークホルダーの期待をそろえる」の例のひとつとして、「メンタリングの機会を整え、行動に移す」が挙がっています(当サイトによる要約)。
期待のすり合わせとメンタリングが同じタスクに入っているのは、関係者の理解や力を育てることが、期待を現実的なものにそろえる助けになるからだと当サイトは考えています。
たとえば、プロジェクトに初めて関わる業務担当者は、アジャイルの進め方や自分の役割を知らないため、期待がずれやすいです。そうした人を支えることで、期待のずれを減らせます。期待のすり合わせそのものは期待の調整方法の記事で解説しています。
メンタリングとコーチングはどう違う?
メンタリング、コーチング、研修(トレーニング)は、どれも人の成長を助ける方法です。ただし、目的と進め方が違います。
| 方法 | 目的 | 期間 | 関わり方 | 担い手 |
|---|---|---|---|---|
| メンタリング | 長い目での成長やキャリアを支える | 長期(数か月〜数年) | 経験や助言を伝え、相談に乗る | 経験のある先輩・上位者 |
| コーチング | 目の前の課題や目標の達成を助ける | 短〜中期 | 質問で本人の考えを引き出す | コーチ(同じ分野の経験者でなくてもよい) |
| 研修 | 決まった知識や技能を身につける | 短期(決まった日程) | 内容を教える | 講師 |
大まかに言えば、研修は「教える」、コーチングは「引き出す」、メンタリングは「経験を伝え、長く支える」です。実際には、メンターが場面に応じて質問で考えを引き出すこともあります。
試験では、「長い目での育成」「経験の共有」「キャリアの相談」といった言葉が、メンタリングの手がかりになります。
プロジェクトで育成の機会はどう見つける?
プロジェクトは、育成の機会にあふれています。日々の仕事そのものが、学びの場になるからです。PM は次のような場面に目を向けます。
- 新しい役割を担うとき: 初めてリーダーを務める、初めて顧客と交渉する、など。
- 難しい作業に挑戦するとき: 新しい技術、経験の少ない分野の作業。
- 失敗やトラブルの後: 何が起きたかを一緒にふりかえり、次に生かす。
- フェーズの節目: 教訓をまとめるとき、次のフェーズで任せる範囲を広げるとき。
- 本人が希望を口にしたとき: 「設計もやってみたい」「将来は PM になりたい」など。
機会を見つけたら、それを「整える」ことが大切です。メンターとなる人を決める、相談の時間を作業計画の中に確保する、本人と目標を話し合う、といった準備が要ります。忙しいプロジェクトでは、時間を確保しないと育成は後回しになります。
メンタリングはどう進める?
PM が自分でメンターになることもあれば、チームの経験者をメンターに任命することもあります。進め方の例を示します。
- 見つける
機会を見つける
新しい役割や本人の希望から、育成の機会を見つける
- 決める
組み合わせを決める
メンターと相手を決め、相談の時間を計画に入れる
- 合意
目標を合意する
何を身につけたいかを本人と話し合う
- 支える
経験を伝え支える
定期的に話し、助言し、挑戦を後押しする
- ふりかえり
ふりかえる
成長を確かめ、次の目標を決める
プロジェクトの間くり返す
アジャイルでは、ペア作業やスクラムマスターの支えなど、育成の場が日々の作業に組み込まれやすいです。予測型では、育成の時間を資源の計画に入れておかないと、作業に押されて後回しになりがちです。
ステークホルダーへのメンタリングとは?
メンタリングの対象は、チームのメンバーだけではありません。新ECO がメンタリングを「ステークホルダーの期待をそろえる」タスクに入れているように、関係者を支えることも含まれます。たとえば次のような場面です。
- 初めてプロダクトオーナーを務める業務部門の担当者に、バックログの優先順位のつけ方を経験をもとに助言する。
- プロジェクトに初めて関わる顧客の担当者に、レビューでどこを見ればよいかを伝える。
- PM を目指す若手のメンバーに、関係者との調整の場に同席してもらい、後で考え方を説明する。
こうした支えがあると、関係者は自分の役割を果たしやすくなり、プロジェクトへの期待も現実的になります。結果として、顧客の満足にもつながります。顧客の期待と満足については顧客満足を管理する方法で解説しています。
試験ではどう問われる?
メンタリングの問題では、次のような判断が問われると考えられます。
- 育成を後回しにしない: 忙しいからといって、育成の機会を手放す選択肢は誤りになりやすい。時間を計画に入れる。
- 経験者と組み合わせる: 初めての役割を担う人には、経験のある人をメンターとしてつける。
- 仕事を取り上げない: 経験の浅い人がつまずいたとき、すぐに担当を替えるより、支えながら任せる。
- 方法を見分ける: 決まった知識なら研修、目の前の課題ならコーチング、長い目の成長ならメンタリング。
チームを率いる行動全体はPMPのリーダーシップスタイル、新ECO の変更点はPMP新ECO 2026の解説にまとめています。育成に関わる状況問題は、無料模試30問でも試せます。
確認問題1
初めてプロダクトオーナーを務める担当者
(当サイトの独自問題)業務部門から、アジャイルの経験がまったくない課長がプロダクトオーナーに任命されました。課長は「何を基準に優先順位を決めればよいのか分からない」と不安を口にし、スプリントの計画が遅れがちです。社内には、ほかのプロジェクトでプロダクトオーナーを長く務めた人がいます。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。初めての役割に不安を抱える関係者には、経験者をメンターとしてつけ、経験をもとに支えてもらうのが効果的です。課長の業務の知識を生かしたまま、役割を果たせるようにします。
1:PM が代わりに決めると、プロダクトオーナーの役割が形だけになります。2:本を渡すだけでは、実際の判断の悩みに応えられません。3:業務の知識を持つ人を外すことになります。まず支えることを考えます。
確認問題2
忙しさで育成が止まっている
(当サイトの独自問題)プロジェクトの開始時に、若手のメンバー2人にそれぞれベテランのメンターをつけ、週1回の相談の時間を設けることにしました。しかし作業が立て込み、この1か月、相談はほとんど行われていません。若手の1人は「質問したいことがたまっている」と話しています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。育成は、時間を計画に入れないと後回しになります。メンターと話して、無理のない形で相談の時間を作業計画に組み込み直すのが適切です。
1:育成の機会を手放しています。3:チャットだけでは、経験を伝えて長く支えるメンタリングの役割を果たしにくいです。4:メンター本人と話す前に替えると、これまでの関係が無駄になり、ベテランの経験も生かせません。
確認問題3
育成の方法の選び方
(当サイトの独自問題)PM を目指している中堅のメンバーが、「将来に向けて、関係者との調整の考え方を身につけたい」と相談してきました。特定の資格や決まった手順を学びたいわけではなく、長い目で経験を積みたいと話しています。プロジェクト・マネジャーの対応として、最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。長い目での成長を望んでおり、決まった手順を学びたいわけではありません。経験のある人が経験を伝えるメンタリングが適しています。調整の場に同席させるのは、プロジェクトの中で育成の機会を作る方法です。
2:1日の研修は決まった知識の習得には向きますが、長い目での経験の積み上げには足りません。3:本人の成長の機会を逃しています。4:手順の暗記では、場面に応じた考え方は身につきにくいです。