管理図とは何か?
管理図(control chart)は、プロセスの測定値を時間の順に点で打ち、中心線と上下の管理限界の線と一緒に表した図です。部品の寸法、1日の処理件数、欠陥の数、作業の所要時間などを対象にします。
目的は、プロセスが安定しているかを判断することです。どんなプロセスにも、ある程度のばらつきはあります。管理図は、そのばらつきが「いつもの範囲」なのか、「何か特別なことが起きている」のかを見分ける道具です。前者を偶然の原因、後者を特別な原因(異常原因)によるばらつきと呼びます。
PMP では、品質管理の道具の1つとして扱います。2026年版の ECO の Process タスク7(品質)には、「品質のプロセスと道具を計画する」「品質のレビューを継続的に行う」があります。
さらに新形式の図表問題(グラフや図を読み取って答える問題)が加わりました。管理図は、図表問題で出やすい図の代表です。品質マネジメントの全体は品質マネジメントとは?を参照してください。
管理限界と仕様限界はどう違う?
管理図で最も大切で、最も混同されやすいのが、この2つの線です。架空の部品(目標の長さ50.0mm)で示します。
- 仕様上限 55.0mm顧客の要求。これを超えると不合格仕様
- 管理上限 53.0mmプロセスの実績から計算(平均+3σ)管理
- 中心線 50.0mm測定値の平均
- 管理下限 47.0mmプロセスの実績から計算(平均−3σ)管理
- 仕様下限 45.0mm顧客の要求。これを下回ると不合格仕様
架空の例(σ=1.0mm として、50.0±3.0)。仕様限界が管理限界の外側にある、望ましい状態
| 管理限界 | 仕様限界 | |
|---|---|---|
| 誰が決めるか | プロセスの実績データから計算する | 顧客・要求事項・契約が決める |
| 何を表すか | プロセスの「いつものばらつき」の範囲 | 成果物として合格できる範囲 |
| よく使う値 | 平均±3σ(標準偏差の3倍) | 要求に応じて決まる |
| 外に出たら | プロセスが管理外(特別な原因を調べる) | その成果物は不合格(欠陥) |
2つの線の関係で、プロセスの状態が分かります。上の例のように管理限界が仕様限界の内側にあれば、プロセスが安定している限り、ほぼすべてが合格します。
逆に、管理限界が仕様限界より外にあるなら、プロセスは安定していても、一定の割合で不合格品を出し続けます。この場合は、管理図の点に反応するのではなく、プロセスそのものの能力を高める改善が必要です。
7の法則とは?管理外と判断する条件は?
PMP の学習でよく使われる判断の目安は、次の2つです。
- 管理限界の外に点が出た:1点でも外に出たら、管理外と判断します。
- 7の法則(ルール・オブ・セブン):管理限界の中にあっても、平均(中心線)の片側に7点以上連続して並んだら、偶然とは考えにくいので、管理外と判断します。
7の法則の考え方は、コインを投げて7回続けて表が出る確率が低いのと同じです。プロセスが安定していれば、点は中心線の上下にばらばらに散るはずです。片側に偏り続けるのは、何かが変わった兆しです(材料の切り替え、機械の摩耗、担当者の交代など)。
注意したいのは、7の法則は経験則(目安)であり、PMI が数値を定めた決まりではないことです。統計的品質管理の判定ルールには、別の流儀もあります。たとえば米国立標準技術研究所(NIST)の統計ハンドブックが紹介するルールでは、片側に8点連続を目安にしています。6点続けて上がる・下がる傾向を見るルールもあります。
PMP の学習教材では「7点」が広く使われています。試験対策としては、まず「限界の外」と「片側に7点」の2つを確実に押さえてください。
POINT
よくある誤答:「点がすべて仕様の範囲内だから問題ない」「管理外なので、原因を調べる前に機械の設定を動かして中心に戻す」。前者は管理外の兆しを見逃し、後者は特別な原因を残したまま症状だけを消しています。判断の基準は仕様限界ではなく管理限界と点の並び方で、対応はまず原因の調査です。
管理図にはどんな種類がある?
管理図は、測るデータの種類で使い分けます。長さや時間のような計量値と、不良品や欠点の数のような計数値です。主なものを示します。
| 種類 | データ | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| Xバー-R 管理図・Xバー-s 管理図 | 計量値(サンプルの平均と、範囲または標準偏差) | 1時間ごとに5個ずつ抜き取る部品の長さ |
| 個々の値の管理図(X-Rs 管理図) | 計量値(1回に1つの値と、前の値との差) | 1日1回のビルドの所要時間 |
| p 管理図 | 計数値(不良品の割合) | 検査した製品のうち不良品の比率 |
| c 管理図・u 管理図 | 計数値(欠点の数) | 基板1枚のはんだ不良の数、1単位あたりの欠陥の数 |
PMP では、種類の名前より読み取りが中心です(当サイトの見立て)。どの管理図でも、「管理限界の外」と「中心線の片側に続く点」を見る考え方は同じです。
図表問題で管理図はどう出る?読み取りの例
新形式の図表問題では、管理図を見せて「プロセスの状態は?」「次に何をすべきか?」を問う形が考えられます。数値の例で、読み取りを練習します(管理上限53.0、中心線50.0、管理下限47.0、仕様は45.0〜55.0)。
| サンプル | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 測定値(mm) | 49.6 | 50.3 | 49.8 | 50.4 | 50.6 | 50.2 | 50.8 | 50.5 | 50.3 | 50.7 | 50.1 | 49.7 |
| 中心線との関係 | 下 | 上 | 下 | 上 | 上 | 上 | 上 | 上 | 上 | 上 | 上 | 下 |
まず、管理限界の外の点を探します。すべて47.0〜53.0の中にあるので、外に出た点はありません。次に、中心線の片側に続く点を数えます。サンプル4〜11の8点が続けて中心線より上にあります。7点以上なので、7の法則により管理外と判断します。
このとき、すべての点は仕様の範囲(45.0〜55.0)にも入っているので、今の時点で不合格品は出ていません。それでも、プロセスに何らかの変化が起きている兆しなので、原因を調べる必要があります。「不合格品が無いから問題ない」と判断するのは誤りです。
他の図も含めた読み方の順番は、PMPの図表問題の読み方でまとめています。
管理外のときは何をする?
プロセスが管理外と判断したら、次の流れで対応します。
- 特別な原因を調べる:その時期に何が変わったかを確かめます。特性要因図や、なぜを繰り返す分析で根本原因を探ります。
- 原因を取り除く:材料の切り替えが原因なら元に戻す、機械の摩耗なら整備する、などです。必要なら変更の手続きを経ます。
- 効果を確かめる:対策後のデータで、プロセスが管理状態に戻ったかを管理図で確かめます。
- 記録し共有する:原因と対策を記録し、教訓として残します。品質の報告にも反映します。
逆に、管理状態にあるのに、点が少し動くたびに機械を調整するのは誤りです。偶然のばらつきに反応して調整すると、かえってばらつきが大きくなります。管理図の役目は、「反応すべき変化」と「反応すべきでない揺らぎ」を分けることです。
品質の状態は、状況報告の大事な材料でもあります。報告の作り方は進捗報告の書き方で扱います。管理外の兆しを放置すると、手直しや外部失敗のコストが膨らみます(品質コスト(CoQ)とは?)。図表を読み取る問題は、模試パックの本番形式模試にも収録しています。
確認問題1
限界の内側で片側に偏る
(当サイトの独自問題)部品の長さを管理図で監視しています。直近の測定値はすべて管理限界の内側にありますが、最後の8点が続けて中心線より下にあります。仕様の範囲を外れた部品はまだありません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。中心線の片側に7点以上続いているので、7の法則によりプロセスは管理外です。不合格品が出る前に、特別な原因を調べて取り除きます。
1:仕様内でも、プロセスの変化の兆しを見逃しています。3:都合よく限界を広げると、管理図の意味がなくなります。4:原因を調べる前に調整しており、順番が逆です。原因の手がかりも消えてしまいます。
確認問題2
安定しているが不合格品が出る
(当サイトの独自問題)ある工程の管理図では、点はすべて管理限界の内側にあり、中心線の上下にばらばらに散っています。しかし、管理上限は顧客の仕様上限より外側にあり、毎月一定の割合で不合格品が出ています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。プロセスは管理状態(安定)ですが、その能力が仕様を満たしていません。偶然のばらつきそのものを小さくする改善(設備・材料・手順の見直し)が必要です。
2:管理状態のばらつきは偶然の原因によるもので、作業者個人の問題ではありません。3:顧客の要求を変える前に、自分たちのプロセスを改善します。4:検査で除くことはできても、不合格品を作り続ける費用は減りません。
確認問題3
管理限界の外に1点
(当サイトの独自問題)ソフトウェアのビルドにかかる時間を管理図で監視しています。昨日のビルドの時間が管理上限を超えました。他の日はすべて管理限界の内側で、偏りもありません。チームの一人は「1回だけなので様子を見よう」と言っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。1点でも管理限界の外に出たら、管理外です。その日に何が変わったか(設定の変更、サーバーの負荷など)を調べ、特別な原因があれば取り除きます。
1:管理外のサインを見逃しています。2:原因を調べずに、対象そのものを変えています。4:原因を調べずに点を除くと、問題の手がかりを捨てることになります。