品質コスト(CoQ)とは?
品質コスト(Cost of Quality:CoQ)は、成果物の品質に関わるすべての費用を指します。品質を確保するために使うお金と、品質が足りなかったために失うお金の両方を含みます。
ポイントは、「品質のためのお金」だけを見ないことです。試験や研修の費用は目に見えるので、削られやすい費用です。一方、欠陥の手直しや苦情対応の費用は、あちこちに散らばって見えにくくなります。CoQ は、それらを同じ表に並べ、総額で最も安くなる使い方を考えるための枠組みです。
2026年版の ECO では、「品質コスト(CoQ)とサステナビリティを管理する」が Process タスク7のイネーブラーです。2021年版の品質のタスクには無かった項目です。品質マネジメントの全体像は品質マネジメントとは?で解説しています。
適合コストと不適合コストの違いは?
CoQ は、大きく2つ、細かく4つに分けます。
| 大分類 | 小分類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| 適合コスト | 予防コスト | 欠陥を作らないための費用 | 研修、設計レビュー、標準の整備、適切な道具、プロセスの改善 |
| 適合コスト | 評価コスト | 欠陥を見つけるための費用 | 試験、検査、品質監査、測定機器の校正 |
| 不適合コスト | 内部失敗コスト | 引き渡す前に見つかった欠陥の費用 | 手直し、作り直し、廃棄、再試験、遅れ |
| 不適合コスト | 外部失敗コスト | 引き渡した後に見つかった欠陥の費用 | 保証対応、返品、回収、苦情対応、損害賠償、信用の低下 |
適合コストは、欠陥を防ぎ、見つけるために、あらかじめ使うお金です。不適合コストは、欠陥があったために、後から使うことになったお金です。不適合コストは「失敗のコスト」とも呼ばれます。
予防と評価は予算の中で計画できる費用、失敗のコストは計画外に生じる費用、と押さえると分類しやすくなります。
POINT
よくある誤答は3つです。①試験・検査を「予防」に入れる(欠陥を見つける費用なので評価)。②引き渡し前の手直しを「外部失敗」に入れる(社内で見つかったので内部失敗)。③品質監査を「予防」に入れる(今の状態を確かめる費用なので、評価に分けるのが一般的)。
不適合コストの内部失敗と外部失敗はどう違う?
どちらも欠陥による費用ですが、誰が欠陥を見つけたかで分かれます。
内部失敗は、引き渡しの前に、チームや組織の中で見つかった欠陥の費用です。試験で見つかったバグの修正や、検査で不合格になった部品の作り直しなどです。費用はかかりますが、顧客には影響が出ていません。
外部失敗は、引き渡した後に、顧客や利用者が見つけた欠陥の費用です。修理や返品の費用に加え、苦情の対応、信用の低下、ときには事故や法的な責任まで広がります。金額で測りにくい損失も多く、一般に最も高くつくのが外部失敗です。
欠陥は、見つかるのが後になるほど直す費用が膨らむ、という経験則があります。設計の段階なら紙の上で直せる誤りも、製造後なら作り直し、出荷後なら回収と謝罪が必要になるからです。
なぜ予防にお金をかけるのか?計算例で確かめる
PMP の品質の考え方の基本は「検査より予防」です。予防に費用をかけると総額がどう変わるかを、架空の数値で確かめます。
CoQ = 予防 + 評価 + 内部失敗 + 外部失敗
- 1対策前:予防200+評価300+内部失敗400+外部失敗600=1,500万円
- 2対策前の内訳:適合コスト500万円、不適合コスト1,000万円
- 3設計レビューと研修に予防を200万円上乗せ(予防400万円)
- 4対策後:予防400+評価300+内部失敗250+外部失敗250=1,200万円
- 5差:1,500−1,200=300万円の削減
予防に200万円多く使い、品質コストの総額は300万円下がった
架空の数値。実際の効果はプロジェクトによって異なる
この例では、予防の上乗せ200万円に対し、失敗のコストが合計500万円(内部150万円+外部350万円)減っています。予防の費用は目に見えるので、削りたくなる費用に見えます。しかし総額で見ると、最も効率のよい使い道になることが多いのです。
ただし、予防や評価にいくらでもお金をかければよいわけではありません。ある点を超えると、追加の費用に見合うほど失敗が減らなくなります。CoQ の管理とは、総額が最も小さくなるつり合いを探すことです。
プロジェクトならではの注意点もあります。プロジェクトは、期間が終われば解散します。保証や回収といった外部失敗の費用は、引き渡した後に運用部門や組織が負うことが多いのです。プロジェクトの予算だけを見ると、予防への投資は損に見えます。組織全体の費用で判断することが大切です。
アジャイルでも考え方は同じです。自動試験の整備、ペアでの作業、完了の定義(DoD)に品質の基準を入れることは、どれも予防と早い評価への投資です。短い反復で利用者に見せるのも、欠陥や誤解を外部失敗になる前に見つける工夫と言えます。
分類を練習:この費用はどれにあたる?
試験では、費用の例を4つの分類に当てはめる問題がよく出ます。次の表で、左の例を見て分類を言えるか試してください。
| 費用の例 | 分類 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 新人に設計標準の研修を行う | 予防 | 欠陥を作らないための費用 |
| 品質計画を作り、作業手順を整える | 予防 | 欠陥が起きにくい仕組みを作る費用 |
| 受け入れ前に抜き取り検査をする | 評価 | 欠陥を見つけるための費用 |
| 品質監査で手順が守られているか調べる | 評価 | 今の状態を確かめる費用 |
| 試験で見つかったバグを直して再試験する | 内部失敗 | 引き渡し前に見つかった欠陥 |
| 検査で不合格になった部品を廃棄する | 内部失敗 | 引き渡し前に見つかった欠陥 |
| 出荷後の不具合で製品を回収する | 外部失敗 | 引き渡し後に見つかった欠陥 |
| 保証期間中の修理と苦情に対応する | 外部失敗 | 引き渡し後に見つかった欠陥 |
見分ける問いは2つです。「欠陥が起きる前の費用か、後の費用か」と、「後なら、引き渡しの前か後か」です。この種の分類は、選択肢を枠に当てはめるマッチング形式とも相性がよく、解き方はマッチング問題の解き方で扱っています。
サステナビリティと品質コストの関係は?
新ECOは、CoQ とサステナビリティを1つのイネーブラーにまとめました。どちらも長い目で見た費用と影響を考える点が共通するから、と当サイトでは読んでいます。
たとえば、欠陥による作り直しや廃棄は、費用だけでなく資材とエネルギーの無駄にもなります。予防で欠陥を減らせば、品質コストと環境への負荷を同時に下げられます。また、少し高い資材でも長持ちするなら、交換や廃棄の回数が減ります。ライフサイクル全体の費用と負荷が下がることもあります。詳しくはサステナビリティの記事で扱います。
PMP試験では品質コストがどう問われる?
確認問題1
費用の分類
(当サイトの独自問題)製品の開発プロジェクトで、次の費用が発生しました。このうち、品質コストの「予防コスト」に分類されるものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。欠陥を作らないための研修は、予防コストです。
2:欠陥を見つけるための検査なので、評価コストにあたります。3:引き渡し前に見つかった欠陥の手直しは、内部失敗コストです。4:引き渡し後の欠陥による回収と交換は、外部失敗コストに分類されます。
確認問題2
予算削減の提案
(当サイトの独自問題)プロジェクトの予算が厳しくなり、スポンサーから費用の削減を求められました。チームの一人は「設計レビューの回数を半分にすれば、すぐに費用が浮く」と提案しています。前回の類似案件では、設計の誤りによる手直しが多く発生していました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。設計レビューは予防コストです。削ると手直しなどの失敗のコストが増え、総額ではかえって高くなるおそれがあります。前回の実績も使って品質コストの総額で比べ、その結果をスポンサーに示して判断を仰ぎます。
1:目に見える費用だけで判断しています。影響を確かめるのが削った後では遅すぎます。2:評価コストを削ると、欠陥が顧客に届くおそれが高まります。3:品質と予算に関わる判断を丸投げしています。
確認問題3
外部失敗が多い
(当サイトの独自問題)稼働したシステムで、利用者からの不具合の報告が相次いでいます。対応の費用は、当初の見込みを大きく超えました。調べると、試験の段階では見つからなかった種類の欠陥が多く、原因は設計の段階での要件の誤解でした。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。外部失敗は最も高くつく品質コストで、原因は設計段階の要件の誤解です。根本原因である要件の確認とレビューのプロセスを改め、予防に費用をかけます。
1:対応は速くなりますが、欠陥は減りません。2:試験で見つけにくい種類の欠陥なので、効果が限られます。4:目の前の不具合は直せても、要件の誤解が生まれる仕組みは残り、再発を防げません。