進捗報告には何を書く?現状・予測・課題・依頼
進捗報告の目的は、受け手が判断し、手を打てるようにすることです。そのために、当サイトでは次の4つの型をすすめます。
- 現状:今どこにいるか。指標(SPI・CPI、残りの作業量)と、完了した成果物。
- 予測:このまま進むとどうなるか。完了の見込み時期、完了時のコストの見込み。
- 課題とリスク:何が問題で、どう対応しているか。新しく見つかったリスク。
- 依頼(判断してほしいこと):スポンサーや運営委員会(ステアリング・コミッティ)に決めてほしいこと、支援してほしいこと。
| 項目 | 書くこと | 記入例(架空の週次報告) |
|---|---|---|
| 全体の状態 | 合意した基準での色と一言 | 黄:主要な成果物が1週間遅れ。費用は予算内 |
| 現状 | 指標と、完了した成果物 | SPI 0.90・CPI 1.20。画面設計12本のうち9本が承認済み |
| 予測 | このまま進んだときの完了時期と費用 | 対策なしでは、リリースが2週間遅れる見込み |
| 課題とリスク | 問題と対応、新しく見つかったリスク | 外部APIの仕様の確定が遅れている。ベンダーと週2回の確認を始めた |
| 依頼 | 判断や支援をしてほしいこと | 試験の要員2名を4週間追加することの承認 |
特に忘れられがちなのが予測と依頼です。「今週は○○をしました」という作業の羅列だけでは、受け手は何を判断すればよいか分かりません。報告の頻度・形式・受け手は、コミュニケーションの計画で決めておきます。
報告の量は、受け手に合わせます。経営層には1枚の要約、チームには詳しい作業の状況、というように、同じ情報でも粒度を変えます。
新ECOのProcessタスク9は何を求める?
2026年版の ECO では、Process タスク9が「プロジェクトの状況を評価する」です。イネーブラーは8つあり、大きく指標とアーティファクト(文書や記録)に分かれます。
| 区分 | イネーブラー(要約) |
|---|---|
| 指標 | プロジェクトの指標・分析・照合の仕組みを作る |
| 指標 | 現在の進捗を評価する |
| 指標 | 指標を測り、分析し、更新する |
| 報告 | プロジェクトの状況を伝える |
| アーティファクト | 必要なアーティファクトを特定し、テーラリングする |
| アーティファクト | アーティファクトが作成・レビュー・更新・記録されるようにする |
| アーティファクト | アーティファクトにアクセスしやすくする |
| アーティファクト | アーティファクト管理の有効性を継続的に評価する |
旧版(2021年版)には、状況の評価という独立したタスクはありませんでした。進捗の測定はスケジュールのタスクの一部で、アーティファクトの管理は別のタスクでした。2026年版では、両方がタスク9にまとまっています。
この記事では、指標と報告を扱います。アーティファクトの管理はプロジェクトのアーティファクト管理で解説します。
People 領域のタスク8「コミュニケーションを計画し管理する」にも、報告の要件と報告書の作成が含まれます。試験では両方の視点で問われます。
進捗を測る指標(KPI)は何を使う?
指標は、プロジェクトの進め方と、報告を受ける人の判断に合わせて選びます。
SPI = EV ÷ PV / CPI = EV ÷ AC
- 1PV(今日までに終わる予定だった作業の価値)=1,000万円
- 2EV(実際に終わった作業の価値)=900万円
- 3AC(実際に使った費用)=750万円
- 4SPI=900÷1,000=0.90 → 予定の90%しか進んでいない(遅れ)
- 5CPI=900÷750=1.20 → 使った費用に対して多く進んでいる(予算内)
遅れているが費用は抑えられている。人を足して遅れを取り戻す余地があるか検討する
架空の数値
| 指標 | 向く進め方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| SPI(スケジュール効率指数)=EV÷PV | 予測型 | 1未満なら計画より遅れている |
| CPI(コスト効率指数)=EV÷AC | 予測型 | 1未満なら予算を超えて使っている |
| マイルストーンの達成状況 | 予測型・ハイブリッド | 大きな節目に間に合っているか |
| バーンダウン/バーンアップチャート | アジャイル | 残りの作業がどう減っているか、完了の見通し |
| ベロシティ | アジャイル | 1スプリントで終えられる作業量の実績 |
| 欠陥の数・管理図 | 共通 | 品質が安定しているか |
| リスクと課題の件数・重大度 | 共通 | 脅威が増えているか、手が打たれているか |
| 便益の先行指標 | 共通 | 成果物が使われ、価値が出始めているか |
予測型では、ガントチャートに予定と実績を並べると、どの作業が遅れているかが一目で分かります。
アジャイルの指標の代表であるベロシティは、チームの見通しを立てるための数字です。チームどうしの比較や評価の物差しに使うと、数字を操作する動機が生まれるので避けます。
数字だけでなく、照合(reconciliation)も大事です。たとえば、報告上の完了率と、実際に受け入れられた成果物の数が合っているかを突き合わせます。数字のずれは、問題の早い兆しです。
信号の色とダッシュボードはどう使う?
ダッシュボードは、主要な指標を1画面にまとめたものです。スポンサーや経営層向けに、状態を色(緑・黄・赤)で示すことがよくあります。
情報ラジエーターは、チームの部屋や共有の画面など、誰でも見える場所に状況を表示する仕組みです。タスクボード、バーンダウンチャート、課題の一覧などを貼り出します。熱を放つ暖房器具(ラジエーター)のように、聞かれる前に情報が周りに伝わる、という意味の名前です。
どちらも、受け手に取りに来てもらう伝え方(プル型)です。メールで送る報告(プッシュ型)より透明性が高く、報告書を作る手間も減ります。ただし、悪い知らせや判断の依頼は、置いておくだけで済ませず、会議などの対話の場でも伝えます。
色の基準は、事前に関係者と合意しておきます。基準が無いと、同じ状況でも人によって色が変わります。基準の例を示します。
| 色 | 基準の例(架空) | 報告での扱い |
|---|---|---|
| 緑 | SPI と CPI が0.95以上。マイルストーンに間に合う見込み | 現状と予測を短く報告する |
| 黄 | SPI か CPI が0.90以上0.95未満。または節目の遅れが2週間以内の見込み | 原因と、取り戻す計画を添える |
| 赤 | SPI か CPI が0.90未満。または節目の遅れが2週間を超える見込み | 影響・選択肢・判断してほしいことを示す |
冒頭の記入例は SPI 0.90 で、遅れの見込みは2週間です。この基準では「黄」になります。遅れが2週間を超える見込みになったら、「赤」に変えて報告します。
報告で隠してはいけないことは?
PMP で最も大事なのは正直さです。PMI の倫理規定は、誠実さを中心的な価値の一つに挙げています。報告でよくある誤りを挙げます。
- 中身は赤なのに緑と報告する(外は緑で中は赤い、という意味で「スイカ報告」と呼ばれることがあります)
- 悪い知らせを、解決するまで伏せる:取り戻せると思って黙っているうちに、手を打てる時期を逃します。
- 数字を都合よく選ぶ:良い指標だけを示し、悪い指標を省く。
- ベースラインを黙って変える:遅れを隠すために計画を書き換える。
悪い知らせは、分かった時点で、事実と対応案を添えて早く伝えるのが正解です。早く伝えれば、スポンサーは予備費の使用や範囲の調整などの手を打てます。
確認問題1
遅れを報告するか迷う
(当サイトの独自問題)月例の運営委員会の前日に、主要な成果物の作成が3週間遅れていると分かりました。チームは「来月までに取り戻せるかもしれないので、今回は黄色で報告してほしい」と言っています。遅れを取り戻す具体的な計画は、まだありません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。悪い知らせは早く、正直に伝えます。合意した基準で状態を示し、影響と対応案を添えます。そうすれば、運営委員会が必要な判断をできます。
1:根拠の無い見込みで、状態を良く見せる報告です。2:報告を遅らせ、判断の機会を奪います。3:原因の確認は必要ですが、運営委員会に伝えないまま対策を進めることになります。
確認問題2
指標の読み取り
(当サイトの独自問題)予測型のプロジェクトで、今月末の時点の値は PV=800万円、EV=720万円、AC=600万円でした。スポンサーへの報告で、プロジェクトの状態を最も正しく表しているものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:3。SPI=720÷800=0.90(1未満なので遅れ)、CPI=720÷600=1.20(1を超えるので予算内)です。
1:SPI と CPI を逆に読んでいます。2:SPI が1未満なので、計画どおりではありません。4:CPI は1を超えており、費用は良い状態です。
確認問題3
報告書が読まれていない
(当サイトの独自問題)毎週、詳しい進捗報告書をメールで送っています。ところが、関係者の多くは読んでいないようで、会議のたびに同じ質問が出ます。チームも報告書の作成に時間を取られています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。受け手が本当に必要な情報と形式を確かめ、報告の形を見直します。主要な指標は、ダッシュボードや情報ラジエーターでいつでも見られるようにします。
2:読まれていない報告を厚くしても効果は薄く、手間も増えます。3:受け手のニーズに合わない形のまま、読ませようとしています。4:受け手が必要な情報を確かめないまま送付をやめると、関係者が状況を知る手段がなくなり、会議で同じ質問が続きます。