ベロシティとは?
ベロシティ(velocity)は、アジャイルのチームが1つのスプリント(イテレーション)で完了させた作業の量です。多くのチームは、完了したアイテムのストーリーポイントの合計で表します。
英語の意味は「速度」です。ただし「どれだけ速く作業したか」ではなく、「1スプリントでどれだけ完了できるチームか」という実績の目安です。
使い道は大きく2つあります。1つは、スプリントプランニングで今回どれだけ選ぶかの参考にすること。もう1つは、残りの作業が終わる時期や、決まった日付までに届けられる範囲を予測することです。
ベロシティはスクラムガイドの用語ではなく、チームが必要に応じて使う指標です。ポイントの付け方はストーリーポイントとは?で解説しています。
ベロシティの計算方法は?
計算は、そのスプリントで完了の定義(DoD)を満たしたアイテムのポイントを足すだけです。途中まで進んだアイテムは数えません。「8ポイントのうち8割終わったから6ポイント」のような部分点は付けないのが原則です。
ベロシティ = 完了したアイテムのポイントの合計(未完了は0)
- 1スプリントで選んだアイテム:A 5・B 3・C 8・D 2・E 5(合計23ポイント)
- 2完了の定義を満たしたもの:A・B・C・D
- 3Eはテストが終わらず未完了 → 0として数える
- 4ベロシティ = 5 + 3 + 8 + 2 = 18ポイント
選んだ23ポイントではなく、完了した18ポイントがこのスプリントのベロシティです。Eはプロダクトバックログに戻します。
1回分のベロシティは、休暇や想定外の障害でぶれます。予測には、直近の3スプリント程度の平均や幅を使うのが一般的です。たとえば直近3回が18・22・20なら、平均は60 ÷ 3 = 20ポイントです。
ベロシティチャートはどう読む?
スプリントごとのベロシティを棒グラフにしたものを、ベロシティチャートと呼びます。次は、あるチームの6スプリント分の例です。
- 1回目14
- 2回目18
- 3回目20
- 4回目12
- 5回目21
- 6回目19
立ち上がりで増え、4回目に落ち込み、その後は20前後です。直近3回(12・21・19)の平均は52 ÷ 3 ≒ 17.3、4回目を除いた直近3回(20・21・19)の平均は20です。
当サイトが作成した数値例。
| チャートの形 | 考えられること | 対応の例 |
|---|---|---|
| 最初の数回が低く、だんだん増える | チームが進め方やポイントの基準に慣れてきた | 安定するまでは予測の幅を広くとる |
| 1回だけ大きく落ちる | 休暇・祝日・障害・割り込み | 原因を確かめる。稼働が減っただけなら、その回を除いた見通しも示す |
| 急に大きく増える | ポイントの付け方が変わった、未完了を数えた | 完了の定義と見積もりの基準を確かめる |
| 毎回大きく上下する | アイテムが大きすぎる、割り込みが多い | アイテムを小さく分け、割り込みの扱いを決める |
| 少しずつ下がり続ける | 技術的負債・障害の増加・疲れ | ふりかえりで原因を話し合う |
例の4回目の落ち込みが祝日による稼働の減少なら、残りの見通しは20前後で考える方が実態に近いでしょう。ただし、原因を確かめずに都合の悪い回だけを外すのは避けます。
ベロシティでリリース時期はどう予測する?
残りのバックログの合計ポイントを平均ベロシティで割ると、あと何スプリントかかるかの目安が出ます。スプリントは途中で区切れないので、小数になったら切り上げます。
残りのスプリント数 = 残りのポイント ÷ ベロシティ(切り上げ)
- 1残りのバックログ:120ポイント。直近3回のベロシティ:18・22・20
- 2平均で計算:120 ÷ 20 = 6.0 → 6スプリント
- 3最大の22で計算(楽観):120 ÷ 22 = 5.45… → 6スプリント
- 4最小の18で計算(慎重):120 ÷ 18 = 6.66… → 7スプリント
- 51スプリント2週間なら、12〜14週間後が目安
「6〜7スプリント(12〜14週間)」と幅で伝えると、関係者は不確かさも含めて判断できます。
日付が決まっている場合は、逆に計算します。残り5スプリントで平均20ポイントなら、届けられるのは約100ポイント分です。プロダクトバックログの上から100ポイント分が、届けられる見込みの範囲です。プロダクトオーナーは、それを見て並び順を考えます。
予測は、スプリントが終わるたびに新しい実績で計算し直します。関係者への説明には、完了の累計と全体の量を並べるバーンアップチャートが便利です。読み方はバーンダウンチャートの見方で扱います。
キャパシティとの違いは?(休暇があるスプリントの計算)
キャパシティ(capacity)は、次のスプリントでチームが使える稼働の量です。人数×日数から、休暇や他の仕事の時間を引いて考えます。ベロシティが「これまでの実績」なら、キャパシティは「次回の条件」です。
いつもより稼働が少ないスプリントで平均ベロシティをそのまま使うと、選びすぎになります。稼働の割合に合わせて見込みを下げるのが、一つの方法です。
次の見込み = 平均ベロシティ × 次の稼働 ÷ いつもの稼働
- 1いつもの稼働:5人 × 10日 = 50人日。平均ベロシティは30ポイント
- 2次のスプリント:1人が5日休む → 50 − 5 = 45人日
- 3見込み:30 × 45 ÷ 50 = 27ポイント
27ポイントを目安に、最後は開発者が「これなら終えられる」と判断して選びます。
この補正は当サイトの計算例で、決まった公式ではありません。選ぶ量はスプリントプランニングで開発者が決めます。進め方はスプリントプランニングの進め方で扱います。
なぜチーム間で比べてはいけない?
ベロシティは、そのチームのポイントの基準で測った数字です。チームAの「3ポイント」とチームBの「3ポイント」は、同じ大きさとは限りません。そのため、次の使い方は誤りです。
- チーム間の比較: 「Aは40、Bは25だからBは生産性が低い」とは言えません。
- 個人の評価: ポイントは個人ではなくチームの見積もりです。
- 目標にする: 「次は30ポイントを目指せ」と言うと、見積もりを大きくするだけで数字は上がります。実際の成果は変わりません(数字が目標になると、指標として役に立たなくなります)。
- 品質との交換: ベロシティを上げるために完了の定義をゆるめると、技術的負債がたまり、後で速度が落ちます。
ベロシティが下がったときは、責めるのではなく原因を探ります。障害が増えた、作業の割り込みが多い、メンバーが変わった、などです。レトロスペクティブ(ふりかえり)で話し合うのが適切です。
流れを重視するかんばんでは、ベロシティの代わりにスループット(単位期間あたりの完了数)やリードタイムを使います。違いはかんばん方式とは?で扱います。
計算問題の例は?
ベロシティの計算は、数字を読んで割り算する程度です。つまずきやすいのは「未完了を数えない」「切り上げる」「稼働の変化を見落とす」の3点です。次の表で確かめてみましょう。
| 問い | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 選んだ30ポイントのうち、8ポイントのアイテムが未完了。ベロシティは? | 30 − 8 = 22 | 22ポイント |
| 直近のベロシティが24・28・26。平均は? | (24 + 28 + 26) ÷ 3 = 78 ÷ 3 | 26ポイント |
| 残り150ポイント、平均26。あと何スプリント? | 150 ÷ 26 = 5.76… | 6スプリント(切り上げ) |
| 1スプリント2週間。あと何週間? | 6 × 2 | 12週間 |
| 残り4スプリントで平均26。届けられるのは? | 4 × 26 | 約104ポイント分 |
| 平均30、いつもは50人日。次は45人日。見込みは? | 30 × 45 ÷ 50 | 27ポイント |
確認問題1
リリースまでのスプリント数
(当サイトの独自問題)あるスクラムチームの直近3スプリントのベロシティは、32・28・30ポイントでした。リリースに必要な残りのアイテムは、合計170ポイントです。スプリントは2週間です。スポンサーからリリースの見通しを聞かれました。最も適切な見通しはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。平均は (32 + 28 + 30) ÷ 3 = 30。170 ÷ 30 = 5.66… を切り上げて6スプリントです。最小の28では、170 ÷ 28 = 6.07… を切り上げると7スプリントになります。この幅で伝えるのが最も適切です。
1:最大の値だけを使い、さらに切り捨てています。2:割り算は合っていますが、6.07 を切り捨てています。3:切り捨てており、残りの作業が終わりません。
確認問題2
ベロシティを目標にする指示
(当サイトの独自問題)事業部長が、チームの平均ベロシティ25を見て「来月から35を目標にする。達成できたら評価に反映する」と発表しようとしています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。ベロシティは見積もりの数字です。目標や評価に使うと、ポイントを大きく付けるだけで数字が上がり、実際の成果は変わりません。届けた価値や完成したインクリメントで見る方法を提案します。
2:持続可能なペースを崩します。3:問題に気づきながら黙るのは、関係者への助言の責任を果たしていません。4:品質を下げて数字を作ると、技術的負債が生まれます。
確認問題3
途中まで進んだアイテムの扱い
(当サイトの独自問題)スプリントの終わりに、13ポイントのアイテムが「実装は終わったがテストが残っている」状態でした。開発者は「ほぼ終わったので、10ポイントとしてベロシティに入れたい」と言っています。完了の定義には、テストの合格が含まれています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。完了の定義を満たさないアイテムはベロシティに数えず、プロダクトバックログに戻します。部分点を付けると、予測が実態より楽観的になります。
1・2:未完了を数えると、ベロシティが実態より大きくなり、予測を誤らせます。4:後から実装とテストに分けて実装だけを完了にするのは、完了の定義を骨抜きにする操作です。
ベロシティを含む計算問題は無料模試30問でも出題しています。