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かんばん方式とは?トヨタ発の仕組みとWIP制限・リードタイムを解説

かんばん方式とは何かを、トヨタ生産方式での起源からソフトウェア開発での原則、ボードの作り方、WIP制限の効果、リードタイムとサイクルタイム(計算例つき)、スクラムとの違いまで解説。確認問題3問つき。

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執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • かんばん方式は、作業の流れを見える化し、同時に進める作業の数(WIP)を制限して、流れを良くしていく方法です。トヨタ生産方式のかんばんが起源で、ソフトウェアや事務の仕事にも応用されています。
  • WIP制限をかけると、作業の切り替えが減り、詰まっている場所(ボトルネック)が見え、1つ1つの作業が早く終わります。
  • 流れの指標はリードタイム・サイクルタイム・スループットです。平均のWIPを減らすと、平均のサイクルタイムが短くなります(リトルの法則)。
  • スクラムと違い、決まった期間(スプリント)や決まった役割はありません。今のやり方から始め、少しずつ改善します。

かんばん方式の起源は?(トヨタ生産方式)

かんばんは、トヨタ生産方式で使われてきた仕組みです。トヨタ生産方式には「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の2本の柱があります。かんばんは、ジャスト・イン・タイム(必要なものを、必要なときに、必要なだけ造る)を支える道具です。

後の工程は、使った分だけ前の工程から部品を引き取ります。何がどれだけ必要かを知らせる札が「かんばん」です。引き取る量と時期を示す「引き取りかんばん」と、造る量と時期を示す「仕掛けかんばん」があります。作りすぎと在庫を減らすのが目的です。

この考え方を、ソフトウェア開発などの知識労働に当てはめたのが「かんばん方式(Kanban Method)」です。2000年代にデビッド・J・アンダーソンらが体系化し、2010年の著書『Kanban』で広まりました。部品の札の代わりに、作業のカードとボードを使います。PMI の『アジャイル実務ガイド』の日本語版では「カンバン方式」と書かれています。

当サイトの整理。
観点トヨタ生産方式のかんばんソフトウェア開発のかんばん方式
流れるもの部品・製品作業(機能の開発、問い合わせ対応など)
札・カード部品箱に付けたかんばんボードの上の作業カード
目的作りすぎと在庫をなくす作業の滞留をなくし、早く届ける
量の制限かんばんの枚数で在庫を制限する列ごとのWIP制限で、進行中の作業を制限する
共通の考え方後工程が必要な分だけ引き取る(プル)空きができたら次の作業を引く(プル)

ソフトウェアのかんばん方式の原則は?

かんばん方式には、今のやり方を大きく壊さないという特徴があります。『アジャイル実務ガイド』は、4つの原則と6つの特性(実践)を挙げています。要点は次のとおりです(当サイトの要約)。

  • 今のやり方から始める: 役割や手順をいきなり変えず、まず今の流れを見える化します。
  • 少しずつ進化させることに合意する: 大きな改革ではなく、小さな変更を試しては確かめます。
  • 今のプロセス・役割・責任を尊重する: 肩書きや担当を壊さずに始めるので、抵抗が小さくなります。
  • あらゆる立場のリーダーシップを促す: 改善の提案は誰からでも出せます。

実践は、流れの見える化、WIPの制限、流れの管理、ルールの明示、フィードバックの仕組み、協力しての改善の6つです。

かんばんボードはどう作る?

かんばんボードは、作業の状態ごとに列を分けた板(または画面)です。作業1つにつき1枚のカードを作り、進むにつれて左から右へ動かします。作り方は次のとおりです。

かんばんボードの列の例(かっこはWIP制限)
  1. 1

    未着手

    優先順に並べた作業の候補

  2. 2

    分析(2)

    内容と受入基準を詰める

  3. 3

    開発(3)

    作る・コードレビューを受ける

  4. 4

    テスト(2)

    受入基準を確かめる

  5. 5

    完了

    利用者に届いた状態

列の数や名前は、チームの実際の流れに合わせて決めます。

  1. 今の流れを書き出す: 実際に作業が通る段階を並べます(例:未着手 → 分析 → 開発 → テスト → 完了)。
  2. カードを置く: 今ある作業をすべてカードにして、今の状態の列に置きます。
  3. WIP制限を書く: 各列の上に、同時に置けるカードの上限を書きます(例:開発 3、テスト 2)。
  4. ルールを明示する: 「次の列に動かせる条件」をボードに書きます(例:テストに動かすのはコードレビュー後)。
  5. 毎日見る: ボードの前で、右側(完了に近い方)から順に、止まっている作業を確かめます。

かんばんボードは、関係者がいつでも状況を見られる情報ラジエーター(情報を発信する掲示物)でもあります。PMが一人ひとりに進捗を聞いて回る必要がなくなります。

WIP制限にはどんな効果がある?

WIP(Work In Progress)は、着手したがまだ終わっていない作業のことです。WIP制限は、その数に上限を設けるルールです。上限に達した列には、新しい作業を入れられません。

「同時にたくさん進めた方が早く終わる」と思いがちですが、実際は逆になりやすいです。WIP制限の効果は次のとおりです。

  • 切り替えのむだが減る: 複数の作業を行き来すると、思い出す時間や準備の時間がかかります。
  • ボトルネックが見える: テストの列が上限で詰まると、開発者は新しい作業を始められず、詰まりがはっきりします。
  • 助け合いが生まれる: 新しい作業を始められない人は、詰まっている列の作業を手伝います。「始めることをやめて、終わらせることを始めよう」という考え方です。
  • 1つ1つが早く終わる: 同時に進める数が減るので、各作業が完了までにかかる時間が短くなります。

リードタイムとサイクルタイムの違いは?

かんばんでは、流れの良さを時間で測ります。定義は組織や文献で少しずつ違うため、チームで定義をそろえることが大切です。PMP の参考になるのは『アジャイル実務ガイド』の定義で、要点は次の表のとおりです。

リードタイム・応答時間・サイクルタイムは『アジャイル実務ガイド』、仕掛かり日数は Kanban Guide にもとづく(文は当サイトの要約)。
指標測る範囲主に誰の目線か
リードタイムボードに載ってから、完了して届くまで依頼した顧客。「頼んでから届くまで何日?」
応答時間(待ち時間)ボードに載ってから、作業が始まるまで顧客やプロダクトオーナー。「いつ着手してもらえる?」
サイクルタイム作業を始めてから、完了するまでチーム。「始めてから終わるまで何日?」
スループット一定期間に完了した作業の数チームの処理能力。「1週間に何件終わる?」
仕掛かり日数(Work Item Age)作業を始めてから今日までチーム。「止まっている作業はどれ?」

式にすると、リードタイム = 応答時間 + サイクルタイム です。顧客の待ち時間を縮めるには、作業そのものを速くするより、着手までの待ちを減らす方が効くこともあります。

WIPを減らすと何が変わる?(リトルの法則の計算例)

WIP・サイクルタイム・スループットの間には、リトルの法則と呼ばれる関係があります。流れが安定しているとき、平均の値について次の式が成り立ちます。

リトルの法則で見るWIP制限の効果

平均サイクルタイム = 平均WIP ÷ 平均スループット

  1. 1今:平均WIP 12件、平均スループット 週4件
  2. 2平均サイクルタイム = 12 ÷ 4 = 3週間
  3. 3WIP制限で平均WIPを6件に減らす(スループットは週4件のまま)
  4. 4平均サイクルタイム = 6 ÷ 4 = 1.5週間

処理能力が同じでも、抱える作業を減らすだけで、1件あたりの完了までの時間は半分になります。

当サイトの計算例。流れが安定していることが前提です。

処理能力を上げなくても、抱える作業を減らすだけで、1件あたりの完了までの時間が縮みます。「同時にたくさん進めた方が早い」という感覚と逆になる点が、WIP制限の要です。

スクラムとの違いは?

観点かんばん方式スクラム
期間の区切りなし。作業は流れ続ける1か月以内のスプリントで区切る
役割決まった役割はない(今の役割から始める)プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者
作業量の制御列ごとのWIP制限スプリントで選ぶ量(スプリントゴール)
変更の受け入れWIPに空きができれば、いつでも次の作業を引ける原則として次のスプリントで扱う
主な指標リードタイム・サイクルタイム・スループットベロシティ・バーンダウンなど
向く仕事問い合わせ対応・保守・運用など、依頼が不定期に来る仕事新しいプロダクトの開発など、まとまった目標がある仕事

スクラムの役割・イベント・作成物の全体は、スクラムとは?で図にして整理しています。

両方を組み合わせる「スクラムバン」のような使い方もあります。スクラムのチームが、かんばんボードとWIP制限を使うのは珍しくありません。スクラムの指標であるベロシティはベロシティとは?、スプリントの残り作業を示す図はバーンダウンチャートの見方で扱います。

メリット・デメリットは?

かんばん方式は導入しやすい反面、決まりが少ない分だけ運用の規律が要ります。

かんばん方式のメリットと注意点(当サイトの整理)

メリット

  • 今のやり方のまま始められる
  • 詰まりが見え、改善する場所が分かる
  • 急ぎの依頼にもすぐ対応しやすい
  • 1件あたりの完了が早くなる

デメリット・注意点

  • 期限の区切りがないため、目標を別に決める必要がある
  • ボードを更新しないと実態とずれる
  • WIP制限を守らないと効果が出ない
  • 優先順位を決める責任者を、別に決めておく必要がある

かんばんを含むアジャイル問題全体の考え方は、PMPのアジャイル対策にまとめています。

確認問題1

テストの列が詰まっている

(当サイトの独自問題)保守チームのかんばんボードで、テストの列がWIP制限の2件に達しています。開発の列の開発者2人は手が空いたため、「未着手から新しい作業を始めたい」と言っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。WIP制限で詰まりが見えたら、新しい作業を始めるより、詰まっている所を手伝って流れを回すのが基本です。どう手伝うかはチームで決めます。

1:WIPが増えて、完了までの時間がさらに延びます。2:制限を上げても詰まりの原因は変わらず、見えにくくなるだけです。4:原因の分析は必要ですが、流れが止まっている今、手を打たずに待つのは遅すぎます。

確認問題2

問い合わせ対応チームの進め方

(当サイトの独自問題)社内システムの問い合わせと小さな改修を担当するチームがあります。依頼は毎日不定期に届き、急ぎのものも多いです。経営層は「アジャイルにしたいので、2週間のスプリントを導入せよ」と言っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。依頼が不定期に来る仕事には、決まった期間で区切らず、流れを管理するかんばん方式が合います。今のやり方から始めて少しずつ改善できるので、導入の抵抗も小さくなります。

2:急ぎの依頼を次のスプリントまで待たせることになり、仕事の性質に合いません。3:WIPが増え、すべての依頼が遅れます。4:分析は進めながらでもできます。3か月待つ間、改善の機会を失います。

確認問題3

リトルの法則の計算

(当サイトの独自問題)あるチームは、平均して常に15件の作業を進行中にしています。1週間に平均5件を完了しており、流れは安定しています。チームはWIP制限を導入し、平均WIPを10件にしました。スループットは変わらないものとします。平均サイクルタイムはどう変わるか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:2。導入前は 15 ÷ 5 = 3週間、導入後は 10 ÷ 5 = 2週間です。

1・4:導入前の平均サイクルタイム(15 ÷ 5 = 3週間)が合っていません。3:導入後は 10 ÷ 5 = 2週間で、2.5週間ではありません。

流れや指標の読み取りは、図表を使った問題の題材にもなりえます。無料模試30問で確かめられます。

よくある質問

かんばんとかんばんボードは同じですか?

かんばんボードは道具で、かんばん方式は進め方全体を指します。ボードで流れを見える化し、WIPを制限して改善していく進め方です。ボードを貼るだけでは、かんばん方式とは言えません。

「かんばん」と「カンバン」は違うものですか?

同じものを指します。トヨタは「かんばん」、PMI の『アジャイル実務ガイド』の日本語版は「カンバン」と書いています。

WIP制限の数はどう決めますか?

決まった式はありません。今の作業の数を見て、それより少し小さい数から始めます。詰まり具合を見ながら調整するのが一般的です。

かんばん方式でも振り返りはしますか?

します。決まったイベントはありませんが、流れの指標を定期的に見て、改善を話し合う場を設けるのが一般的です。

出典・参考

  1. [1]トヨタ自動車75年史:トヨタ生産方式(かんばん)
  2. [2]トヨタ自動車:トヨタ生産方式
  3. [3]PMI・Agile Alliance『アジャイル実務ガイド』日本語版(PDF)
  4. [4]Kanban University: The Official Guide to The Kanban Method
  5. [5]The Kanban Guide
  6. [6]Agile Alliance: Kanban

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