スクラムとは?
スクラムは、チームが短い期間(スプリント)を区切って、価値のある成果物を少しずつ作る枠組みです。作るたびに結果を確かめ、次の行動を決めます。
定義の原典は、考案者のケン・シュエイバーとジェフ・サザーランドが公開している「スクラムガイド」です。現在の版は2020年版です。2人は1995年の OOPSLA という学会で、初めてスクラムを共同で発表しました。
名前はラグビーのスクラムに由来します。1986年、竹内弘高・野中郁次郎の両氏が Harvard Business Review に論文を発表しました。チームが一体で進める製品開発を、ラグビーにたとえた論文です。これがスクラムの源流の一つとされています。
スクラムガイドは、スクラムを「軽量なフレームワーク」と位置づけています。細かい作業手順は決めず、役割・イベント・作成物と、それらをつなぐルールだけを定めています。ユーザーストーリーやストーリーポイントなどの技法は、スクラムの一部ではありません。チームが必要に応じて取り入れるものです。
アジャイルとの関係も押さえておきます。アジャイルは価値観と原則の総称で、スクラムはそれを実践する代表的なフレームワークの1つです。この記事の説明は、スクラムガイド(2020年版)に沿って当サイトが要約したものです。
スクラムの3本柱と5つの価値基準は?
スクラムの土台は経験主義です。知識は経験から生まれ、判断は観察した事実に基づいて行う、という考え方です。無駄を減らして本質に集中するリーン思考も土台にしています。経験主義を支えるのが、次の3本柱です。
- 1
透明性
作業の状況や作成物が、関係者に見える状態にある
- 2
検査
作成物とゴールへの進み具合を、頻繁に確かめる
- 3
適応
ずれが見つかったら、できるだけ早く調整する
適応のあと、透明性に戻って繰り返す
見えなければ確かめられず、確かめなければ直せません。3つはつながっています。
スクラムチームが大切にする5つの価値基準は、確約(コミットメント)・集中・公開・尊敬・勇気です。PMP の問題では、「問題を隠さず早く共有する」(公開・勇気)や「チームの判断を尊重する」(尊敬)が正解の行動になりやすいです。価値基準と行動を結び付けて覚えると役立ちます。
スクラムの3つの役割(責任)は?
スクラムチームは、1人のプロダクトオーナー、1人のスクラムマスター、複数の開発者で構成されます。チームの中に上下関係はなく、全員でプロダクトゴールを目指します。人数は通常10人以下が目安です。大きくなりすぎたら、複数のチームに分けます。2020年版のスクラムガイドは、「役割」ではなく「責任(accountabilities)」という言葉を使っています。
| 責任 | 主な仕事 | 決める・持つもの |
|---|---|---|
| プロダクトオーナー | プロダクトの価値を最大化する。プロダクトゴールを示し、バックログを並べる | プロダクトバックログの中身と並び順。1人であり、委員会ではない |
| スクラムマスター | スクラムが理解され実践されるよう、チームと組織を支える。障害の除去を促す | スクラムチームの有効性。チームと組織に仕える真のリーダー |
| 開発者 | スプリントごとに使えるインクリメントを作る。計画を作り、日々調整する | スプリントバックログ(作業の計画)と作り方 |
PMP の問題で特に大事なのは、次の分担です。優先順位はプロダクトオーナー、作り方と作業の分担は開発者、障害の除去とスクラムの浸透はスクラムマスターです。詳しくはスクラムマスターの役割で扱います。
スクラムの5つのイベントは?
イベントは、検査と適応を行うための決まった機会です。スプリントは他の4つのイベントを入れる「入れ物」です。1か月以内の固定の長さで、前のスプリントが終わるとすぐ次が始まります。
- 1
スプリントプランニング
なぜ・何を・どうやって。スプリントゴールを決める
- 2
デイリースクラム(毎日)
開発者が15分でゴールへの進み具合を確かめ、計画を直す
- 3
スプリントレビュー
成果を関係者と検査し、次に何をするか話し合う
- 4
スプリントレトロスペクティブ
進め方を見直し、改善を決める
この4つがスプリント(1か月以内)の中で行われ、終わるとすぐ次のスプリントが始まります。
| イベント | 上限(1か月のスプリント) | 2週間のスプリントの目安 | 主な参加者 |
|---|---|---|---|
| スプリント | 1か月以内(固定の長さ) | 2週間 | スクラムチーム全員 |
| スプリントプランニング | 8時間 | 4時間以内 | スクラムチーム(必要に応じて他の人を招く) |
| デイリースクラム | 15分(スプリントの長さによらない) | 15分 | 開発者 |
| スプリントレビュー | 4時間 | 2時間以内 | スクラムチームと主要な関係者 |
| スプリントレトロスペクティブ | 3時間 | 1.5時間以内 | スクラムチーム |
プロダクトバックログの手入れ(リファインメント)は、イベントではなく継続的な活動です。スプリントを中止できるのはプロダクトオーナーだけで、スプリントゴールが意味を失ったときに限られます。
毎日行うデイリースクラムのように、各イベントの進め方は個別の記事で詳しく扱っています。
3つの作成物と確約とは?
作成物は、作業や価値を見える形にしたものです。2020年版では、それぞれの作成物に「確約(コミットメント)」が対応し、進み具合を測る基準になっています。
| 作成物 | 中身 | 確約 | 主に責任を持つ人 |
|---|---|---|---|
| プロダクトバックログ | プロダクトを良くするために必要なものを並べた一覧 | プロダクトゴール(長期の目標) | プロダクトオーナー |
| スプリントバックログ | スプリントゴール・選んだアイテム・実現の計画 | スプリントゴール(そのスプリントの唯一の目的) | 開発者 |
| インクリメント | プロダクトゴールへの具体的な一歩。完成して使える状態のもの | 完了の定義(DoD:品質の基準) | スクラムチーム |
アイテムが完了の定義を満たした時点で、インクリメントが生まれます。スクラムガイドの日本語版では「完成の定義」と訳されています。PMP の日本語の教材では「完了の定義」と呼ぶことが多いです。完了の定義を満たさない作業は、スプリントレビューで見せることもできず、プロダクトバックログに戻します。
スクラムが向くプロジェクト・向かないプロジェクトは?
スクラムは、どんな仕事にも合うわけではありません。PMP でも、進め方を選ぶこと自体が Process 1 のタスクです。目安は次のとおりです。
| 観点 | スクラムが向く | 工夫が要る・向かない |
|---|---|---|
| 要求 | 使ってみないと決まらない・変わりやすい | 最初から細かく決まり、ほぼ変わらない |
| 作り直しの費用 | 小さく作り直せる(ソフトウェアなど) | 作り直しが高くつく(建物・金型など) |
| 成果の出し方 | 一部だけでも先に使える | 全部そろわないと使えない |
| チーム | 専任で集まれ、必要な技能がそろう | 兼務が多く、毎日そろわない |
| 関係者 | 毎スプリントのレビューに参加できる | 最後の検収でしか関われない |
全部がスクラムに向かなくても、一部だけをスクラムで進めることはできます。組み合わせ方はハイブリッド開発とは?で扱います。
スクラムでよくある誤解は?(PMP試験での見分け方)
PMP は特定の手法の試験ではありません。スクラムガイドの細かい文言より、スクラムの場面で適切な行動を選べるかが問われます。誤答の選択肢には、次のような誤解がよく使われます(当サイトの整理)。
| よくある誤解 | スクラムでの考え方 | 正解になりやすい行動 |
|---|---|---|
| スクラムマスターはチームの管理者 | チームと組織に仕えるリーダー。作業の指示はしない | 障害の除去を支援し、チームの判断を尊重する |
| デイリースクラムは進捗の報告会 | 開発者がゴールへの進み具合を確かめ、計画を直す15分 | 目的を確認し、詳しい議論は会議の後に回す |
| スプリントレビューは発表会・承認会 | 関係者と成果を検査し、次に何をするか決める作業の場 | 出た要望は、プロダクトオーナーがバックログで扱う |
| 要望が来たらスプリントに差し込む | スプリントゴールを守る。何をいつ作るかはプロダクトオーナーが決める | 要望はバックログに入れ、次のスプリント以降で扱う |
| スプリントの長さは毎回変えてよい | 1か月以内の固定の長さ | 間に合わない分は延ばさず、バックログに戻す |
| ふりかえりは話して終わり | 効果の大きい改善は、次のスプリントバックログに入れることもできる | 改善を絞り、作業として扱って確かめる |
| ストーリーポイントはスクラムの決まり | スクラムガイドに無い、チームが選ぶ技法 | 見積もり方はチームが決める |
アジャイル問題全体の判断の原則は、PMPのアジャイル対策にまとめています。
確認問題1
デイリースクラムが報告会になっている
(当サイトの独自問題)新しく立ち上げたスクラムチームで、デイリースクラムが毎回40分近くかかっています。開発者が一人ずつスクラムマスターに作業内容を報告し、スクラムマスターが質問を重ねる形です。開発者からは「時間が長すぎる」という声が出ています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。デイリースクラムは、開発者がスプリントゴールへの進み具合を確かめ、計画を直すための15分のイベントです。スクラムマスターへの報告会ではありません。目的を共有し、時間内に収める工夫を促します。
1:目的から外れた運営が続くだけです。3:毎日の検査の機会が失われます。4:報告の手間が増え、チームの自己管理も弱めます。
確認問題2
スプリントの途中の大きな変更
(当サイトの独自問題)2週間のスプリントの3日目に、主要な顧客が使う外部サービスの仕様が変わりました。今のスプリントで作っている連携機能は、ほぼ無意味になります。チームは作業を続けるべきか迷っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。スプリントゴールが意味を失った場合、スプリントを中止できるのはプロダクトオーナーだけです。PMは事実を伝え、判断を促します。
1:価値のない作業を続けることになります。2:何を作るかの判断はプロダクトオーナーの責任で、PMが開発者に指示するものではありません。3:残りの1週間以上、無意味な作業が続いてしまいます。
確認問題3
作成物と確約の組み合わせ
(当サイトの独自問題)スクラムを導入したばかりの組織で、新任のプロジェクト・マネジャーが研修資料を作っています。スクラムの作成物と、それに対応する確約の組み合わせとして正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:3。インクリメントの確約は完了の定義です。プロダクトバックログはプロダクトゴール、スプリントバックログはスプリントゴールに対応します。
1:プロダクトバックログの確約はプロダクトゴールです。2:スプリントバックログの確約はスプリントゴールです。4:スプリントゴールは、スプリントバックログに対応します。
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