デイリースクラムの目的は?
デイリースクラムの目的は、スプリントゴールへの進み具合を確かめ、必要ならスプリントバックログ(作業の計画)を直すことです。スクラムガイド(2020年版)では、開発者のための15分のイベントとされています。
ポイントは「ゴールに対して」確かめることです。一人ひとりの作業量を報告し合う場ではありません。「このままでスプリントゴールに届くか」「届かないなら今日どう組み替えるか」を話します。
毎日同じ時間・同じ場所で行うと、準備の手間が減り、習慣になります。スクラムガイドが挙げる効果は、コミュニケーションの改善、障害の発見、素早い意思決定です。結果として、ほかの会議を減らすことにもつながります。
- 1
ゴールに対する現状を見る
タスクボードやバーンダウンで、ゴールまでの距離を確かめる
- 2
障害を出す
止まっていること・困っていることを隠さず共有する
- 3
今日の計画を直す
誰と誰が組むか、何を先にやるかを組み替える
- 4
会議の後で解決する
詳しい議論は関係者だけで続ける
会議の後で解決するのあと、ゴールに対する現状を見るに戻って繰り返す
この小さな周期を毎日回すことで、スプリントの終わりに慌てずに済みます。
なぜ15分のタイムボックスなのか?
デイリースクラムは、スプリントの長さに関係なく15分です。あらかじめ決めた時間枠で区切るこの考え方を、タイムボックスと呼びます。
短く区切るのは、毎日行う会議だからです。15分でも、10人のチームが2週間のスプリント(稼働日10日)で毎日行えば、延べ25時間になります(15分×10人×10日)。長引けば、その分だけ作業の時間が減ります。
15分で終えるコツは次のとおりです。
- 事前にボードを更新する: 各自が会議の前にタスクボードを最新にしておくと、説明が短くなります。
- ボードの前で行う: タスクボードやバーンダウンチャートを見ながら話します。
- ゴールに関係する話に絞る: 細かい技術の議論が始まったら、「後で話そう」と区切ります。
- 会議の後の時間を使う: 詳しい話が必要な人だけが残る時間(いわゆるアフターパーティー)を設けます。スクラムガイドも、開発者は日中に集まって計画を細かく直すことが多い、と書いています。
- 形式はチームで決める: 3つの質問が合わなければ、ボードのアイテムごとに話す形などに変えます。
スプリントの計画の立て方は、スプリントプランニングの進め方で扱っています。
3つの質問は今も使う?
「昨日やったこと・今日やること・困っていること」の3つの質問は、2017年版のスクラムガイドに例として載っていました。2020年版では削除され、ゴールに焦点が合っていれば形式は自由になりました。
3つの質問は、一人ずつの報告になりやすいのが弱点です。ゴールに目を向けた問いの例を並べます。
| 3つの質問(2017年版の例) | ゴールに目を向けた問いの例 |
|---|---|
| 昨日やったことは? | 昨日の作業で、スプリントゴールにどれだけ近づいたか? |
| 今日やることは? | ゴールのために、今日は誰と何を最優先にするか? |
| 困っていることは? | ゴールを妨げているもの、止まっているアイテムはどれか? |
| (対応する質問なし) | 会議の後で話す必要があるのは、誰と誰か? |
形式を変えても、目的は同じです。「ゴールに届くか」を全員で確かめ、今日の計画を直せれば十分です。
誰が参加し、誰が進める?
| 人 | デイリースクラムでの立場 |
|---|---|
| 開発者 | 主役。参加して進め方を決め、計画を直す |
| スクラムマスター | 開かれるようにし、15分に収まるよう支える。開発者が自分たちで運営できるよう教える |
| プロダクトオーナー | スプリントバックログの作業を担当している場合は、開発者として参加する |
| プロジェクト・マネジャー(PM)・管理職など | 参加は必須ではない。見学する場合でも口を挟まず、進め方を乱さない |
よくある誤解は「スクラムマスターが毎朝司会をする」です。スクラムマスターの仕事は、会議が開かれ、目的どおりに時間内に終わるようにすることです。開発者が自分たちで回せるようになるまで支えます。
PMP の問題文でPMがデイリースクラムに出ている場合も、同じ考え方です。PMは進め方を指示せず、出てきた障害のうちチームが外せないものを引き受けます。この「仕えるリーダー」の考え方は、サーバントリーダーシップで詳しく扱います。
障害はどう拾い、どう解決する?
デイリースクラムは障害を「見つける」場で、「解決する」場ではありません。拾った障害は、次の流れで扱います。
- 出す: 開発者が「〇〇の承認待ちで止まっている」と短く伝える。
- 記録する: 障害を、チーム全員が見える場所(ボードの障害欄など)に書く。
- 担当を決める: チームの中で解けるものは開発者が、外部との調整が要るものはスクラムマスターやPMが引き受ける。
- 会議の後で解決する: 関係する人だけで話し合い、手を打つ。
- 翌日確かめる: 次のデイリースクラムで、障害が外れたかを確認する。
新ECO(2026年版)の Business Environment のタスク4は、障害を取り除き、課題を管理することです。障害の影響を評価し、優先順位を付け、取り除く手を打ち、継続的に見直すことが含まれます。デイリースクラムは、その入口になる仕組みです。
よくある失敗と、試験で正解になる行動は?
デイリースクラムの失敗は、PMP の状況問題の題材にもなります。よくある失敗と対策を、当サイトで整理すると次のとおりです。
| よくある失敗 | 起きること | 正解になりやすい行動 |
|---|---|---|
| 一人ずつの進捗報告会になる | 聞き手(スクラムマスターやPM)に向かって話し、ゴールの話が出ない | 目的を確認し、開発者どうしで話す形に戻す |
| 30分以上かかる | 作業の時間が減り、参加が負担になる | 詳しい議論は会議の後に回す |
| 管理職が参加して指示を出す | 開発者が自分で計画を直さなくなる | 目的を説明し、要望はプロダクトオーナーへ。状況は掲示物で伝える |
| 障害が出ても誰も動かない | 同じ障害が何日も報告される | 担当を決める。チームの外の障害はリーダーが除去を支援する |
| 悪い報告が出ない | 遅れがスプリントの終わりに発覚する | 問題を出した人を責めず、早く出したことを評価する |
| リモートで参加しにくい | 一部の人が発言しなくなる | 時間や道具を見直し、全員が参加できる形にする |
どの失敗も、「開発者がゴールに向けて計画を直す場」という目的に戻すことが、解決の方向です。
確認問題1
会議の中で技術の議論が始まる
(当サイトの独自問題)デイリースクラムで、開発者2人が性能の問題の原因について議論を始めました。他の開発者は黙って待っています。開始から、すでに20分が過ぎました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。デイリースクラムは15分で、詳しい議論は会議の後に関係者だけで行います。残りの開発者の確認を済ませ、ゴールへの見通しを共有します。
2:関係のない人の時間を奪い、タイムボックスも守れません。3:問題の解決はチームの仕事で、PMが引き取るものではありません。4:他の開発者の障害や、計画を見直す機会が失われます。
確認問題2
部長が毎朝参加して指示を出す
(当サイトの独自問題)事業部長がデイリースクラムに毎朝参加し、開発者に「今日はこれを先にやって」と指示を出すようになりました。開発者は戸惑い、自分たちで計画を直さなくなっています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。デイリースクラムは、開発者が計画を直す場です。事業部長には目的を説明し、要望はプロダクトオーナーを通してバックログで扱う流れを伝えます。進み具合を知りたいなら、ボードなどの掲示物を案内します。
1:チームの自己管理が失われます。2:隠すことで信頼を損ない、根本の解決になりません。3:対立をチームに押し付けており、PMが関係者に働きかけていません。
確認問題3
報告された障害が放置される
(当サイトの独自問題)ある開発者が、3日続けてデイリースクラムで「外部の業者からテストデータが届かない」と報告しています。他の開発者はうなずくだけで、誰も対応していません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。障害を見える場所に記録し、担当を決めて手を打ち、翌日に確かめるのが基本の流れです。外部の業者との調整は、チームの外との窓口になるリーダーが引き受けるのが適切です。
1:外部との調整を、一人の開発者に押し付けています。3:問題を先送りするだけで、スプリントゴールに影響します。4:障害を出すことは、デイリースクラムの大切な役割です。
障害の除去が問われる問題は、タスク別ドリルの Business Environment のタスクでも練習できます。