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費用便益分析とBCRの計算方法|プロジェクト選定の判断と例題

費用便益分析とBCR(便益費用比)の計算方法を例題で解説。分析の手順と費用・便益の洗い出し方、複数の候補から選ぶときの判断、NPV・ROI・回収期間との使い分け、確認問題3問つき。

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約8分
執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • 費用便益分析は、プロジェクトで得られる便益と、かかる費用を金額で比べて、実施する価値があるかを判断する方法です。
  • BCR(便益費用比)= 便益 ÷ 費用。1より大きければ便益が費用を上回り、1より小さければ下回ります。
  • 複数の候補から1つ選ぶ問題では、BCR が大きい方を選ぶのが基本です。規模の違う候補では、純便益や NPV もあわせて見ます。
  • 選定の後も、便益の見込みは変わります。BCR が1を下回りそうなら、ビジネスケースの見直しをスポンサーに提起します。

費用便益分析とは?

費用便益分析(Cost-Benefit Analysis)は、プロジェクトから得られる便益(売上の増加・費用の削減など)と、そのためにかかる費用を、お金の単位でそろえて比べる方法です。

プロジェクトを始める前には、ビジネスケースの中で「この投資に見合う価値があるか」を説明する根拠に使います。始めた後も、便益の見込みが変わっていないかを確かめる物差しになります。

ECO 2026年版では、Process タスク3「価値ベースのデリバリーを確実に支援する」に、プロジェクトを通じたビジネス価値の確認が含まれます。Business Environment タスク1「プロジェクト・ガバナンスの定義と確立」には、成功の指標を決めることが含まれます。費用便益分析は、この両方に関わる道具です。

POINT

便益と費用が何年にもわたって出る場合は、将来の金額を現在の価値に割り引いてから比べます。割引の考え方は NPV(正味現在価値)の計算とIRR で扱っています。この記事の例では、すでに現在価値にそろえた金額を使います。

費用便益分析はどんな手順で進める?

費用便益分析は、計算の前の準備が結果を左右します。流れは次のとおりです。

費用便益分析の進め方
  1. 1

    目的と比べる案を決める

    何を判断するかを決め、「現状維持」も比べる案に入れる

  2. 2

    費用と便益を洗い出す

    初期費用・運用費、売上の増加・費用の削減など

  3. 3

    金額にする

    時間の短縮は人件費に、ミスの減少は手直しの費用に置きかえる

  4. 4

    現在価値にそろえる

    何年にもわたる金額は、割引率で今の価値に直す

  5. 5

    比べて提案する

    BCR・純便益を出し、前提と、外れたときの影響を添える

当サイトの整理

「現状維持」も比べる案に入れるのがポイントです。何もしない場合にかかり続ける費用や、失う機会が見えるからです。

費用と便益には何を数える?

費用と便益の洗い出し(当サイトの整理)
種類例金額にする方法(例)
初期の費用開発・購入、導入作業、データ移行、研修見積りの金額
運用の費用保守、ライセンス、運用の人件費1年あたりの金額 × 年数
目に見える便益売上の増加、作業時間の短縮、外注費の削減短縮した時間 × 時間単価 など
金額にしにくい便益顧客満足、安全性、従業員の負担の軽減評価表で点数にして、別に示す

よくある漏れは、運用の費用と、導入した後の研修です。便益を5年分数えるのに費用を初年度分しか数えないと、BCR は実際より大きく出ます。

BCR(便益費用比)はどう計算する?

BCR(Benefit-Cost Ratio)は、便益を費用で割った値です。

BCR の計算

BCR = 便益(の現在価値) ÷ 費用(の現在価値)

  1. 1便益 = 1,500万円、費用 = 1,000万円
  2. 2BCR = 1,500 ÷ 1,000 = 1.5
  3. 3純便益(便益 − 費用)= 1,500 − 1,000 = 500万円

BCR 1.5:費用1円あたり1.5円の便益

当サイトの架空の例

BCR の読み方
BCR意味判断の目安
1より大きい便益が費用を上回る実施する価値がある
ちょうど1便益と費用が同じ金銭面では損も得もない
1より小さい費用が便益を上回る金銭面だけなら見送る

「費用 ÷ 便益」と逆に割らないよう注意してください。名前は「便益費用比」で、便益が先(分子)です。

ROI(投資利益率)を「(便益 − 費用) ÷ 費用」で出す場合、その値は BCR から1を引いたものと同じです。BCR 1.5 なら、ROI は0.5(50%)です。

複数の候補からはどう選ぶ?

(当サイトの架空の例)3つの候補から1つを選ぶ場面で考えます。金額は、現在価値にそろえてあります。

候補の比較
候補便益費用BCR純便益
A:受注システム刷新1,500万円1,000万円1.50500万円
B:倉庫の自動化900万円500万円1.80400万円
C:新店舗の出店1,200万円1,300万円約0.92−100万円

PMP の問題で「BCR が示されていて、どれを選ぶか」と聞かれたら、BCR が最も大きいものを選ぶのが基本です。この例では B(1.80)です。C は1未満なので、金銭面では見送りです。

BCRと純便益で結論が違うときは?

上の例では、純便益は A(500万円)の方が B(400万円)より大きくなっています。BCR は「効率」を、純便益や NPV は「規模」を表すので、結論が分かれることがあります。

効率で選ぶか、規模で選ぶか

BCR(効率)で選ぶ

  • 例題で選ぶ候補B(BCR 1.80)
  • 向く状況予算に限りがあり、残りのお金を別の投資に回せる
  • 考え方費用1円あたりの便益を最大にする

純便益・NPV(規模)で選ぶ

  • 例題で選ぶ候補A(純便益 500万円)
  • 向く状況予算に余裕があり、得られる価値の総額を重視する
  • 考え方便益から費用を引いた額を最大にする

問題文に予算の制約が書かれていれば効率、価値の総額を重視するとあれば規模を重く見ます。

当サイトの整理

他の指標とどう組み合わせる?

プロジェクト選定で使う主な指標(当サイトの整理)
指標表すもの選び方
BCR費用1円あたりの便益(効率)大きい方
ROI(投資利益率)費用に対するもうけの割合大きい方
NPV(正味現在価値)割り引いた後の、便益から費用を引いた額(規模)大きい方(0より大きいこと)
IRR(内部収益率)投資の利回り大きい方
回収期間投資を回収するまでの年数短い方
機会費用選ばなかった候補のうち最大の価値判断の際に考慮する

機会費用は、ある候補を選んだときに、あきらめた候補から得られたはずの価値です。A と B のどちらか一方しか選べず A を選んだなら、機会費用は B の価値です。

金銭以外の要素(法令への対応、戦略との整合、リスク)も判断に入ります。法令で求められる対応は、BCR が1未満でも実施することがあります。

例題で確認

(当サイトの独自例題)研修システムの導入で、5年間の便益の現在価値が3,600万円、費用の現在価値が2,400万円と見積もられました。BCR と純便益を求め、実施の判断を示してください。

例題の解き方

BCR = 3,600 ÷ 2,400

  1. 1BCR = 3,600 ÷ 2,400 = 1.5
  2. 2純便益 = 3,600 − 2,400 = 1,200万円
  3. 3BCR > 1、純便益 > 0

金銭面では実施する価値がある

当サイトの架空の例

費用便益分析の限界は?

費用便益分析は分かりやすい反面、次の弱点があります。結果を伝えるときは、あわせて説明します。

  • 金額にできない価値が抜ける:安全や満足度は、別の評価と組み合わせて示します。
  • 前提で結果が大きく変わる:便益の見込みや割引率が少し変わるだけで、BCR が1をまたぐこともあります。前提を明記し、外れた場合の BCR も示します。
  • 規模が見えない:BCR は効率の指標です。総額は、純便益や NPV で見ます。

確認問題1

ビジネスケースのBCR

(当サイトの独自問題)スポンサーから、ビジネスケースに BCR を記載するよう依頼されました。財務部門の試算では、便益の現在価値は2,400万円、費用の現在価値は1,600万円です。記載すべき BCR はどれか(小数第3位を四捨五入)。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:4。BCR = 便益 ÷ 費用 = 2,400 ÷ 1,600 = 1.5 です。

1:費用 ÷ 便益と、逆に割っています。2:純便益(便益 − 費用)で、比ではありません。3:純便益 ÷ 費用(800 ÷ 1,600)で、BCR ではありません。

確認問題2

候補から1つを選ぶ

(当サイトの独自問題)運営委員会(ステアリング・コミッティ)は、今期は1つのプロジェクトしか承認できないと決めました。プロジェクト・マネジャーは、4つの候補の BCR を比較資料にまとめています。金銭面の指標だけで判断する場合、推薦すべき候補はどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。BCR が最も大きい1.6の候補が、費用に対する便益の効率が最も高い候補です。

1・4:1より大きいですが、1.6より効率が低い候補です。2:1未満で、費用が便益を上回ります。

確認問題3

途中でBCRが1を下回りそう

(当サイトの独自問題)プロジェクトの実行中に、競合他社が同じ機能を無料で提供し始めました。マーケティング部門の再試算では、便益の見込みが大きく下がり、BCR は当初の1.4から0.9程度になる見込みです。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。便益の前提が変わったので、続けるべきかをガバナンスで判断してもらう必要があります。プロジェクト・マネジャーは事実と影響を整理し、スポンサーにビジネスケースの見直しを提起します。

2:価値が見込めない投資を続けるおそれがあり、スポンサーへの透明性にも欠けます。3:スコープの変更は承認なしにはできず、報告も遅れます。4:中止はスポンサーやガバナンスが決めることで、プロジェクト・マネジャーが始めるものではありません。

次に何をすればいい?

BCR は割り算1回で解けるので、確実に取りたい問題です。そのうえで、NPV・回収期間との違いを説明できるようにしておくと、選定の問題で迷いません。計算全体の地図は PMPの計算問題の公式一覧 にあります。

費用便益分析の結果は、ビジネスケースにまとめて判断に使います。作り方と途中の見直しは ビジネスケースとは? で解説しています。選定やビジネスケースの判断を状況問題で練習したい人は、無料模試30問から試してください。

よくある質問

BCR が1を超えていれば、必ず実施すべきですか?

金銭面では価値がありますが、戦略との整合、リスク、資源の制約、他の候補との比較もあわせて判断します。最終的な判断は、スポンサーやガバナンスの役割です。

BCR と NPV で結論が違うときは、どちらを優先しますか?

BCR は効率、NPV は規模を表すので、結論が分かれることがあります。予算に制約があるなら効率(BCR)、価値の総額を重視するなら規模(NPV)を重く見ます。問題文の条件に合わせて判断します。

便益を金額にできない場合はどうしますか?

顧客満足や安全性など、金額にしにくい便益もあります。その場合は、点数化した評価表など別の方法と組み合わせて判断します。

出典・参考

  1. [1]PMI: PMP Examination Content Outline – 2026(PDF。Process タスク3・Business Environment タスク1)
  2. [2]PMI: Project Management Professional (PMP)(試験内容の概要 ECO 2026年7月版の入手先)

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記事の次は、本番形式の問題で。

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