クリティカルパスとは?
クリティカルパスは、プロジェクトの開始から終了までの経路のうち、所要期間の合計が最も長い経路です。
「最長」の経路が「最短」の期間を決めるのは、矛盾して見えるかもしれません。作業は並行して進められても、最も長い経路が終わるまでプロジェクトは終わりません。だから最長の経路の長さが、終えられる最短の期間になります。
クリティカルパス上の作業には、余裕(フロート)がありません。1日遅れれば、完了日もそのまま1日遅れます。プロジェクト・マネジャー(PM)が重点的に見張る作業は、ここにあります。
POINT
主に予測型のスケジュールで使う考え方です。ECO 2026年版では、Process タスク8「スケジュールの計画と管理(Plan and manage schedule)」に関わります。このタスクには、スケジュールの作成やベースライン化、差異の分析が含まれます。なお、PMBOK ガイド第8版の日本語版では「クリティカル・パス」と中黒つきで書かれています。
ネットワーク図はどう読む?
求めるには、作業(アクティビティ)の順序をつないだネットワーク図を使います。PMP では、作業を箱、順序を矢印で表すプレシデンス・ダイアグラム法(PDM)が主流です。
日本の解説では、矢印で作業を表すアローダイアグラム(PERT図とも呼ばれます)もよく見かけます。描き方は違っても、最長の経路を探す考え方は同じです。
この記事では、次の5つの作業で考えます(当サイトの架空の例・単位は日)。
| 作業 | 所要期間 | 先行作業 |
|---|---|---|
| A:要件定義 | 3日 | なし(最初) |
| B:画面設計 | 4日 | A |
| C:データ設計 | 6日 | A |
| D:画面実装 | 5日 | B と C |
| E:データ移行準備 | 4日 | C |
D は、B と C の両方が終わらないと始められません。E は C が終われば始められます。プロジェクトは、D と E の両方が終わった時点で完了です。
作業の順序の関係(依存関係)には、終了−開始のほかにも種類があります。前倒し(リード)や待ち時間(ラグ)を付けることもあります。この記事では、すべて「前が終わったら次を始める」関係で考えます。
求め方①:経路を書き出して最長を選ぶ
経路の数が少ない試験問題なら、開始から終了までの経路をすべて書き出し、期間を足す方法が確実です。
経路の期間 = 経路上の作業の所要期間の合計
- 1経路1:A → B → D = 3 + 4 + 5 = 12日
- 2経路2:A → C → D = 3 + 6 + 5 = 14日
- 3経路3:A → C → E = 3 + 6 + 4 = 13日
- 4最長は経路2(14日)
クリティカルパス = A → C → D、プロジェクトの期間 = 14日
当サイトの架空の例
書き出しの漏れを防ぐには、分かれ道ごとに枝をたどります。A の後は B か C。B の後は D だけ、C の後は D か E。合わせて3本です。
クリティカルパスに載らない作業の余裕も、経路の差から分かります。B が載るのは経路1だけで、最長より 14 − 12 = 2日短いので、B の余裕は2日です。E は経路3だけに載り、余裕は 14 − 13 = 1日です。
求め方②:フロートが0の作業をつなぐ
経路が多いと、書き出しに時間がかかり、漏れも起きます。その場合は各作業の最早・最遅の日を計算し、フロートが0の作業をつなぎます。手順は次の4つです。
- フォワードパス:最初の作業から順に、最早開始(ES)と最早終了(EF = ES + 期間)を出す。合流点では、先行の EF の大きい方を ES にする。
- バックワードパス:最後の作業から逆順に、最遅終了(LF)と最遅開始(LS = LF − 期間)を出す。分かれ道では、後続の LS の小さい方を LF にする。
- フロートを出す:トータルフロート = LS − ES(= LF − EF)。
- 0の作業をつなぐ:フロートが0の作業を順にたどった経路が、クリティカルパス。
| 作業 | 期間 | ES | EF | LS | LF | フロート |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 3 | 0 | 3 | 0 | 3 | 0 |
| B | 4 | 3 | 7 | 5 | 9 | 2 |
| C | 6 | 3 | 9 | 3 | 9 | 0 |
| D | 5 | 9 | 14 | 9 | 14 | 0 |
| E | 4 | 9 | 13 | 10 | 14 | 1 |
フロートが0なのは A・C・D で、求め方①の経路2と一致します。B の2日、E の1日も同じ結果です。D の ES が9になるのは、合流点で B の EF(7)ではなく C の EF(9)を取るからです。
初日を1日目と数える「1始まり」の教材もあります。その場合は EF = ES + 期間 − 1 で計算し、開始日(ES・LS)の数字が1ずつ大きくなります。フロートとクリティカルパスは変わりません。詳しい手順は フォワードパスとバックワードパスの計算、余裕の種類は トータルフロートとフリーフロートの違い で解説しています。
クリティカルパスが複数あるときは?
最長の経路が同じ長さで2本以上あれば、クリティカルパスは複数です。珍しいことではありません。
複数あると、遅れが完了日に響く作業が増え、スケジュールのリスクは高くなります。どちらの経路の作業が遅れても、完了日がずれるからです。
期間を縮めたいときは、すべてのクリティカルパスを同時に短くする必要があります。1本だけ縮めても、もう1本が最長のまま残ります。
- ニア・クリティカルパス:最長に近い経路です(例では経路3の13日)。少し遅れるだけでクリティカルになるので、見張る対象に入れます。
- 縮めると入れ替わる:D を2日縮めると、経路2は12日です。すると経路3(13日)が新しいクリティカルパスになり、期間は1日しか縮みません。
期間を縮める方法には、資源を足すクラッシングと、作業を重ねるファストトラッキングがあります。使い分けと費用の計算は クラッシングとファストトラッキングの違い で解説しています。
ガントチャートやPERTとはどう違う?
クリティカルパスと一緒に出てくる用語を、役割で整理します。
| 用語 | 何を表すか | クリティカルパスとの関係 |
|---|---|---|
| WBS | 成果物と作業を、階層に分解したもの | 作業の洗い出しに使う。順序と期間は含まない |
| ネットワーク図 | 作業の順序(依存関係)を、箱と矢印でつないだ図 | 最長の経路を探す土台になる |
| ガントチャート | 作業の期間を、日付の上に横棒で並べた図 | 進み具合は見やすい。最長の経路は、棒を見ただけでは分かりにくい |
| PERT | 楽観値・最可能値・悲観値から期間を見積もる手法 | 経路の期間の見積りに使う。日本では矢印の図を「PERT図」と呼ぶことも多い |
| クリティカルチェーン | 資源の制約も入れた、最長の作業の流れ | 作業ごとの余裕をまとめた「バッファー」で管理する |
クリティカルパスは、まず人や設備の制約を入れずに求めます。同じ人が2つの作業を同時にできないと、作業をずらす必要が出て、期間が延びることもあります。その調整を資源平準化と呼びます。
よくある誤りは?
計算問題で点を落とす原因は、ほぼ決まっています。解いた後に、次の6点を見直してください。
- 並行する作業を1本の経路に並べる:同時に進む B と C を、A → B → C → D と足してしまう。
- 合流点で小さい方を取る:フォワードパスでは、先行の EF の大きい方が後続の ES になる。
- クリティカルパスは1本だと思い込む:同じ長さの最長の経路が2本あれば、どちらもクリティカルパス。
- クリティカルパス以外を縮める:完了日は早まらず、費用だけが増える。
- ラグを足し忘れる:「前の作業の2日後に開始」なら、その2日も経路の長さに入る。
- 「クリティカル=重要な作業」と考える:日程に余裕がないという意味で、作業の難しさや大切さとは別の話。
PMP試験ではどう出る?
ECO 2026年版では、図やグラフを読んで答える問題(Graphic-Based Questions)が新しい形式として加わりました。ネットワーク図は、この形式に向いた題材です。考えられる出方は次のとおりです。
- ネットワーク図から、クリティカルパスやプロジェクトの期間を答える。
- ある作業が◯日遅れたとき、完了日がどうなるかを答える。
- 図の中で、クリティカルパス上の作業をクリックして選ぶ(ポイント・アンド・クリック形式)。
- 状況の説明つきで、「どの作業を縮めるか」「次に何をするか」を選ぶ。
どの形式でも、経路を書き出すか、フロートを出すという手順は同じです。図が出ても慌てずに、作業と期間を書き写してから解きます。
遅れが出たら、PMは何をする?
状況問題では、遅れの報告を受けた PM の次の行動がよく問われます。考える順番は次のとおりです。
- 1
どの作業かを確かめる
クリティカルパス上か。フロートの範囲に収まるか
- 2
影響を分析する
完了日への影響と、ニア・クリティカルパスへの波及
- 3
選択肢を比べる
クラッシング・ファストトラッキング・資源の付け替え・スコープの調整
- 4
手続きに乗せる
ベースラインを変えるなら変更管理。関係者に伝える
当サイトの整理
いきなり延期を申請する、すぐに残業を指示する、といった選択肢は誤りになりがちです。先に影響を確かめ、選択肢を比べてから決めます。本番に近い形で練習したい人は、無料模試30問で計算と状況判断の組み合わせを試してください。
ベースラインの作り方から遅れへの対応まで、スケジュール管理の全体の流れは スケジュール管理の手順 で解説しています。
確認問題1
最長経路を求める
(当サイトの独自問題)新しい研修プログラムの立ち上げで、作業 P(2日)が最初にあります。Q(5日)と R(3日)は P の後に始まります。S(4日)は R の後、T(2日)は Q と S の両方の後に始まり、T が最後の作業です。スポンサーに最短の完了日を伝える前に、クリティカルパスを確かめます。正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。経路は P → Q → T(2+5+2=9日)と P → R → S → T(2+3+4+2=11日)の2本です。最長は11日の経路です。
1:短い方の経路です。2:最後の作業 T が抜けています。4:Q と R は並行する作業で、1本の経路には並びません。
確認問題2
余裕のある作業が遅れた
(当サイトの独自問題)作業 A(3日)の後に B(4日)と C(6日)が並行し、D(5日)は B と C の両方の後に始まります。E(4日)は C の後に始まり、D と E が終わればプロジェクトは完了です。B の担当者が病気になり、B が3日遅れると報告がありました。プロジェクトの完了はどうなるか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。最長は A → C → D の14日で、B を含む A → B → D は12日です。B が3日遅れると A → B → D は15日になり、14日を1日上回るので、完了は1日遅れます。
1:B の余裕は2日しかなく、3日の遅れは吸収できません。3:B の余裕の日数(2日)を、遅れる日数と取り違えています。4:B がクリティカルパス上にあると誤解しています。
確認問題3
クリティカルパス上の作業が遅れそう
(当サイトの独自問題)予測型のプロジェクトで、クリティカルパス上の作業を担当する外部業者から、納品が4日遅れる見込みだと連絡がありました。契約上の完了日は変えられません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。クリティカルパス上の4日の遅れは、そのまま完了日に響きます。まず影響を分析し、クラッシングやファストトラッキングなど短縮の選択肢を比べてから、関係者と対応を決めます。
1:完了日は変えられない前提です。短縮の手を検討する前に、延期を求めています。2:原因の確認は必要ですが、違約金の請求では遅れを取り戻せません。3:資源の付け替えは選択肢の1つですが、効果を確かめる前に決めています。
次に何をすればいい?
まず、経路の書き出しで確実に解けるようにします。次に、同じ問題をフォワードパス・バックワードパスでも解き、答えがそろうかを確かめてください。どちらの解き方にも慣れます。
慣れたら、遅れの日数を変えて「完了日はどうなるか」「どの作業を縮めるか」を自分で問い直します。試験でよく問われるのは、この2つの判断です。