お金の時間価値とは?
今もらえる100万円と、1年後にもらえる100万円では、今の100万円の方が価値があると考えます。今のお金は運用すれば増やせるうえ、将来のお金には受け取れない不確かさもあるからです。これをお金の時間価値と呼びます。
将来の金額を今の価値に直すことを、「割り引く」と言います。割り引くときに使う率が割引率で、会社が投資に求める収益率などを使います。
現在価値 = 将来の金額 ÷ (1 + 割引率)^年数
- 11年後の 500万円、割引率 10% → 500 ÷ 1.1 ≒ 454.5万円
- 22年後の 500万円 → 500 ÷ 1.1² = 500 ÷ 1.21 ≒ 413.2万円
- 33年後の 500万円 → 500 ÷ 1.1³ = 500 ÷ 1.331 ≒ 375.7万円
遠い将来のお金ほど、今の価値は小さくなる
当サイトの架空の例
POINT
ここでの現在価値(Present Value)は、EVM の PV(計画価値)とは別のものです。略語が同じなので、問題文の文脈で区別してください。
NPVはどう計算し、どう判断する?
NPV(Net Present Value)は、正味現在価値と訳します。将来の収入をすべて現在価値に直して合計し、初期投資を引いた値です。割引率10%なら、NPV =(1年目の収入 ÷ 1.1 + 2年目の収入 ÷ 1.1² + …)− 初期投資 です。
(当サイトの架空の例)初期投資1,200万円で、3年間、毎年500万円の効果が見込めるプロジェクトがあります。効果とは、収入の増加や費用の削減です。これを割引率10%で評価します。
NPV = 各年の収入の現在価値の合計 − 初期投資
- 11年目:500 ÷ 1.1 ≒ 454.5
- 22年目:500 ÷ 1.21 ≒ 413.2
- 33年目:500 ÷ 1.331 ≒ 375.7
- 4合計 ≒ 1,243.4
- 5NPV ≒ 1,243.4 − 1,200 = +43.4万円
NPV > 0 なので、投資する価値がある
当サイトの架空の例
| NPV | 意味 | 判断 |
|---|---|---|
| 0より大きい | 求める収益率を上回る価値を生む | 投資する価値がある |
| 0 | ちょうど求める収益率と同じ | 損も得もない |
| 0より小さい | 求める収益率に届かない | 金銭面では見送る |
割り引かずに足すと、500 × 3 − 1,200 = 300万円の得に見えます。割り引くと、得は43.4万円まで小さくなります。
同じ条件で毎年の収入が400万円なら、割り引く前はちょうど0です。しかし割り引いた後の合計は約994.7万円で、NPV は約 −205.3万円になります。時間価値を無視すると、判断を誤ることがあります。
POINT
表計算ソフトの NPV 関数は、1つ目の金額を「1年後」として割り引きます。初期投資(今すぐ払うお金)は関数に入れず、結果から引いてください。
割引率が変わるとNPVはどう変わる?
同じプロジェクトでも、割引率を変えると NPV は変わります。割引率が高いほど、将来の収入は大きく割り引かれ、NPV は小さくなります。
| 割引率 | 収入の現在価値の合計 | NPV | 判断 |
|---|---|---|---|
| 8% | 約1,288.6 | 約 +88.6 | 投資する価値がある |
| 10% | 約1,243.4 | 約 +43.4 | 投資する価値がある |
| 12% | 約1,200.9 | 約 +0.9(ほぼ0) | ほぼ損得なし |
| 15% | 約1,141.6 | 約 −58.4 | 金銭面では見送る |
NPV がほぼ0になるのは、割引率が約12%のときです。この約12%が、次に説明する IRR です。会社が求める収益率が12%より低ければ投資の価値があり、高ければ見送る、という判断になります。
IRR(内部収益率)とは?
IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)は、NPV がちょうど0になる割引率です。そのプロジェクトの「利回り」と考えると分かりやすくなります。
- IRR > 会社が求める収益率(割引率) → NPV はプラス。投資する価値がある。
- IRR < 会社が求める収益率 → NPV はマイナス。金銭面では見送る。
- 候補の比較 → IRR が大きい方を選ぶ。
IRR は試行錯誤で求めるため、試験で計算させることはまずありません。「IRR が大きい方を選ぶ」「求める収益率と比べる」という判断の仕方を押さえれば十分です。
回収期間法とはどう違う?
| 指標 | 時間価値 | 見ているもの | 選び方 |
|---|---|---|---|
| NPV | 考える | 価値の総額(規模) | 大きい方 |
| IRR | 考える | 利回り(効率) | 大きい方 |
| 回収期間 | 通常は考えない | 投資を取り戻す速さ | 短い方 |
| BCR | 現在価値で比べれば考える | 費用1円あたりの便益 | 大きい方 |
回収期間法は計算が簡単ですが、回収した後に得られる収入を見ません。長く効果が続くプロジェクトを低く評価しやすい点が弱点です。詳しくは 回収期間法の計算方法 で解説しています。BCR との違いは、費用便益分析とBCRの計算方法 を参照してください。
PMPの選定問題はどう解く?
PMP で NPV が出る問題の多くは、複雑な計算ではなく「どれを選ぶか」の判断です。次の3点を押さえます。
- NPV が示されていれば、大きい方を選ぶ。期間が書かれていても、NPV にはすでに期間が反映されているので、年数で割らない。
- IRR が示されていれば、大きい方を選ぶ。会社の求める収益率と比べる問題もある。
- 回収期間だけが示されていれば、短い方を選ぶ。ただし NPV などがあれば、そちらを優先する。
選ばなかった候補から得られたはずの価値を、機会費用と呼びます。NPV 120万円の A と 90万円の B から A を選べば、機会費用は B の90万円です。
ECO 2026年版の Process タスク3は「価値に基づく提供」です。プロジェクトを通じてビジネス価値を確かめることが含まれます。旧版(2021年版)では、タスク3にあたる内容が2つのタスクに分かれていました。Process タスク1 と、Business Environment タスク2 です。選定の時点だけでなく、実行中に前提が変わったときも、これらの指標で価値を確かめ直します。考え方は PMPの価値提供とは? で解説しています。
確認問題1
2年後の金額の現在価値
(当サイトの独自問題)顧客は、システムの納品から2年後に1,210万円を支払う条件を提案しています。会社の割引率は年10%です。営業部門から、この支払いの現在価値を聞かれました。正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。1,210 ÷ 1.1² = 1,210 ÷ 1.21 = 1,000万円です。
2:1年分しか割り引いていません(1,210 ÷ 1.1)。3:割り引いていない金額です。4:1,210 から10%を引いた値(1,210 × 0.9)で、割引の計算ではありません。
確認問題2
期間の違う2つの候補
(当サイトの独自問題)ポートフォリオ委員会に、2つの候補の比較資料を出します。候補 A は期間5年で NPV 120万円、候補 B は期間2年で NPV 90万円です。どちらか一方しか選べません。金銭面の指標から推薦すべきものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:3。NPV は、時間価値を反映した後の価値の総額です。期間で割って比べる必要はなく、大きい方の A を選びます。
1:NPV を年数で割るのは誤りです(A 24万円/年、B 45万円/年と比べてしまう誤り)。2:回収の速さは、回収期間法など別の観点です。4:結論は正しいものの、理由が誤りです。期間が長いこと自体は、選ぶ理由になりません。
確認問題3
IRRが求める収益率に届かない
(当サイトの独自問題)提案中のプロジェクトの IRR は6.5%と試算されました。会社が新規投資に求める収益率は8%です。スポンサーから、財務面の評価を簡潔に説明するよう求められました。プロジェクト・マネジャーの説明として正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。IRR は、NPV がちょうど0になる割引率です。求める収益率(8%)が IRR(6.5%)より高いので、8%で割り引くと NPV はマイナスになります。財務面では基準に届かないと説明し、判断はスポンサーやガバナンスに委ねます。
1:IRR がプラスでも、求める収益率より低ければ NPV はマイナスです。2:基準に届いていない事実を、軽く扱っています。3:IRR は NPV が0になる割引率なので、NPV の正負と直接つながっています。
次に何をすればいい?
現在価値の式(÷ (1 + 割引率)^年数)を1つ覚えれば、NPV は足し算と引き算で解けます。選定問題は「NPV は大きい方・年数で割らない」を確実にしてください。ほかの計算は PMPの計算問題の公式一覧 にまとめています。
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