第7版の特徴は?(原則ベース)
PMBOK®ガイド第7版は2021年に発行されました。第6版は、49のプロセスをインプット・ツールと技法・アウトプットで説明する形でした。第7版はその形をやめ、「何を大事にするか(原則)」と「どんな成果を目指すか(パフォーマンス領域)」で組み立て直しました。
背景には、アジャイルやハイブリッドの進め方の広がりがあります。決まった手順を一律に当てはめるやり方が、合わない場面が増えたのです。第7版は、どの進め方でも大事なことを示し、やり方は状況に合わせて選ぶ(テーラリングする)立場をとりました。
そのため第7版には、「このプロセスのアウトプットは何か」といった暗記向きの情報がほとんどありません。代わりに、モデル・方法・作成物(アーティファクト)が道具箱のように紹介されています。
POINT
この記事の第7版の原則と領域の日本語名は、当サイトの言葉で短くまとめたものです。第7版日本語版の正式な訳語とは異なる場合があります。
第6版とは何が違う?
第6版と第7版の違いを、観点ごとに並べます。PMI が公開している第7版の FAQ をもとに、当サイトで整理しました。
| 観点 | 第6版(2017年) | 第7版(2021年) |
|---|---|---|
| 中心にあるもの | 10の知識エリアと49のプロセス | 12の原則と8つのパフォーマンス領域 |
| 書き方 | プロセスごとに ITTO(インプット・ツールと技法・アウトプット)で説明 | 望ましい成果と、モデル・方法・作成物の紹介 |
| 目指すもの | 成果物を計画どおりに作る | 成果物に加えて、アウトカム(成果)と価値 |
| 進め方 | 予測型が中心 | 予測型・適応型・ハイブリッドを同じ枠で扱う |
| テーラリング | 知識エリアごとに留意点を記載 | 独立した章で扱う |
| プロセス群と ITTO | 本の中心 | 本には全部は載らず、PMIstandards+(デジタル・サービス)で提供 |
PMI は、第6版の要点や考え方は引き続き有効だとしています。プロセス群も、第7版では「モデル」の一つとして残りました。知識エリアの考え方は、複数のパフォーマンス領域に分かれて含まれています。
12の原則とは?
原則は、迷ったときの判断の拠り所です。12の原則を、英語の要点と当サイトによる一言の説明で並べます。
| # | 原則(英語の要点) | 当サイトの一言説明 |
|---|---|---|
| 1 | Stewardship(スチュワードシップ) | 誠実に、敬意と配慮をもって、預かったものを管理する |
| 2 | Team(チーム) | 協力し合えるチームの環境をつくる |
| 3 | Stakeholders(ステークホルダー) | 関係者と効果的に関わる |
| 4 | Value(価値) | 成果物そのものより、生み出す価値に目を向ける |
| 5 | Systems Thinking(システム思考) | 部分ではなく全体のつながりで考える |
| 6 | Leadership(リーダーシップ) | 肩書きに関係なく、リーダーとしてふるまう |
| 7 | Tailoring(テーラリング) | 状況に合わせてやり方を調整する |
| 8 | Quality(品質) | 品質をプロセスと成果物に作り込む |
| 9 | Complexity(複雑さ) | 複雑さを見極め、うまく乗りこなす |
| 10 | Risk(リスク) | リスクへの対応を最適にする(脅威も好機も) |
| 11 | Adaptability and Resiliency(適応力と回復力) | 変化に合わせ、つまずいても立ち直る |
| 12 | Change(変革) | 目指す未来の状態に向けて変化を後押しする |
原則は「これをすれば正解」という手順ではありません。PMI の FAQ でも、12の原則はアジャイル専用ではなく、進め方を問わない原則だと説明されています。
状況問題では、どの選択肢が原則に沿っているかを考える材料になります。たとえば「PM が一人で決めて指示する」より「チームに相談して合意する」方が、チームと関係者の原則に沿っています。
8つのパフォーマンス領域とは?
パフォーマンス領域は、プロジェクトが成果を出すために目を配るべき分野です。第6版の知識エリアのような「分野ごとの手順」ではありません。その分野がうまくいくとどうなるか(望ましい成果)で説明されているのが特徴です。
価値の提供
ステークホルダー
関係者と良い関係を築き、合意を保つ
チーム
責任を共有し、力を発揮できるチームにする
開発アプローチとライフサイクル
予測型・適応型などの進め方と段階を選ぶ
計画
状況に見合った粒度で計画を立て、調整する
プロジェクト作業
日々の作業・調達・知識の流れを回す
デリバリー
要求を満たし、価値を届ける
測定
指標で状況を把握し、判断に使う
不確かさ
リスク・曖昧さ・複雑さに備える
8つの領域は互いにつながっていて、全体として価値の提供を支える。
領域どうしは独立していません。たとえば「計画」の粒度は「開発アプローチ」によって変わり、「測定」の結果は「不確かさ」への対応に使われます。各領域の要点と、ECO のタスクとの対応は パフォーマンス・ドメインとは? で整理しています。
第8版では何が変わった?
2025年に第8版が発行され、第7版の構成は次のように整理されました(名前は第8版日本語版の目次のもの)。
- 原則:12から6つへ。「ホリスティックな視点を採用する」「価値に注力する」「プロセスと成果物に品質を組み込む」「説明責任を果たせるリーダーとなる」「すべてのプロジェクト領域に持続可能性を統合する」「自律的な文化を構築する」の6つです。
- パフォーマンス領域:8から7つへ。ガバナンス・スコープ・スケジュール・財務・ステークホルダー・資源・リスクの、管理対象の切り口になりました。
- プロセス:第7版で外れたプロセスの説明が、40のプロセスとして戻りました。5つの重点分野(立上げ・計画・実行・監視・コントロール・終結)でまとめられています。
つまり第8版は、第7版の「原則・柔軟さ」と第6版の「具体的なやり方」を合わせた版です。詳しくは PMBOK第8版の変更点 をご覧ください。第6版の知識エリアと見比べたい人は PMBOKの10の知識エリア が参考になります。
第7版の教材で勉強してよい?
考え方を学ぶ目的なら、第7版の教材も十分役に立ちます。価値・テーラリング・チームへの権限移譲・サーバント・リーダーシップなど、今の試験でも重視される考え方が詰まっているからです。
ただし、注意点が2つあります。
- 試験範囲は ECO 2026年版で確かめる:第7版の時代の教材は、旧 ECO(2021年版:People 42%・Process 50%・Business Environment 8%)を前提にしていることが多いです。今は People 33%・Process 41%・Business Environment 26% で、ガバナンスやコンプライアンス、持続可能性の比重が上がっています。
- 新しい問題形式で練習する:ECO 2026年版では、ケース(シナリオ)問題や図表を読む問題が新しく加わりました。古い問題集にはこの形式がありません。
手持ちの教材で考え方を固め、問題演習は ECO 2026年版に合わせたものを使う、という組み合わせが現実的です。新形式の問題は 無料模試30問 で試せます。ECO の中身は 新ECO(2026年版)の解説 にまとめています。
確認問題1
原則に沿った行動
(当サイトの独自問題)新しい業務システムを導入した。利用部門の担当者は「新しい画面は使いにくい」と不満を言い、古いシステムを使い続けている。導入の目的は業務時間の短縮だった。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。成果物ができても、使われなければ目的の価値(業務時間の短縮)は生まれません。価値と関係者の関与に目を向け、原因を確かめます。
1:価値が出ていない状態での終結は早すぎます。3:強制しても使いにくさは解決しません。4:原因を確かめずに上から指導させても、根本の問題は残ります。
確認問題2
パフォーマンス領域の考え方
(当サイトの独自問題)PMBOK®ガイド第7版のパフォーマンス領域の説明として、最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。パフォーマンス領域は、望ましい成果で説明される分野で、互いにつながっています。
1:第6版のプロセスの説明に近く、第7版の領域とは違います。2:試験の3領域を定めるのは ECO です。4:第7版の領域は進め方を問わず使えます。
確認問題3
教材の選び方
(当サイトの独自問題)同僚が、数年前に買った第7版対応の問題集だけで PMP の勉強を進めている。問題集は旧 ECO(2021年版)の出題比率に沿って作られている。最も適切な助言はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。第7版の考え方は今も役立ちます。ただ出題比率と問題形式が変わったので、ECO 2026年版に合わせた演習で補います。
2:役立つ考え方まで捨てるのは無駄です。3:ケース問題や図表問題、比重が上がった Business Environment に対応できません。4:プロセス名の暗記は、状況問題に向きません。