自己組織化チームとは?
自己組織化チームとは、上司やプロジェクト・マネジャー(PM)から作業を一つひとつ割り当てられるチームではありません。メンバーが自分たちで分担・進め方・段取りを決め、目標に向かって動くチームです。
アジャイルソフトウェア開発宣言の原則にも、最も良い設計や要求は自己組織的なチームから生まれる、という趣旨の一文があります。原則はアジャイルソフトウェア開発宣言の4つの価値と12の原則で解説しています。
大事なのは、自己組織化は「何でも自由」という意味ではないことです。チームは、目標と枠(ルール・予算・品質の基準)の中で、やり方を自分たちで決めます。
自己管理(self-managing)とはどう違う?
スクラムガイドは、2017年版まで「自己組織化(self-organizing)」という言葉を使っていました。2020年版では「自己管理(self-managing)」に変わっています。違いは次のとおりです。
| 観点 | 2017年版(自己組織化) | 2020年版(自己管理) |
|---|---|---|
| 主語 | 開発チーム | スクラムチーム(プロダクトオーナー・スクラムマスターを含む) |
| 自分たちで選ぶこと | 誰が・どのように作業するか | 誰が・どのように・何の作業をするか |
「何の」作業を選べるといっても、何を先に作るかの並び順は、チームの中でもプロダクトオーナーの責任です。日本では今も「自己組織化チーム」の方が広く使われているため、この記事ではその言葉で説明します。
チームが決めること・決めないことは?
自己組織化チームの範囲は、次の図で考えると分かりやすくなります。
チーム(開発者)が決める
- 作業の分担(誰が何をやるか)
- 作り方・技術的な進め方
- 作業の見積もり
- 1スプリントで選ぶ量
- チーム内の取り決め(グランドルールなど)
チームの外や他の役割が決める
- 何を先に作るか(プロダクトオーナー)
- プロダクトゴール(プロダクトオーナー)
- 組織の規則・法令・安全の基準
- 予算や契約の枠(スポンサー・組織)
- 組織の品質の最低基準(組織の標準)
チームは「枠の中のやり方」を決め、枠そのものは組織や他の役割が決めます。
枠の中であっても、チームが決めたことに理由のない口出しをすると、チームは自分で考えなくなります。逆に、枠を示さずに「自由にやって」と言うと、チームは何を守るべきか分からず迷います。リーダーの仕事は、枠をはっきり示し、その中ではチームを信頼することです。
クロスファンクショナルなチームとは?
クロスファンクショナル(機能横断型)なチームとは、価値のある成果物を作るのに必要な技能を、チームの中にそろえたチームです。企画・設計・開発・テスト・デザインの技能を持つ人が1つのチームにいて、他の部署に作業を渡さなくても完成させられる状態です。
スクラムガイドでも、スクラムチームは機能横断型とされています。スプリントごとに価値を生み出すのに必要な、すべての技能を持つチームです。
| 観点 | 機能別に分かれたチーム | クロスファンクショナルなチーム |
|---|---|---|
| 作業の流れ | 設計部→開発部→テスト部と引き渡す | 1つのチームの中で完成させる |
| 待ち時間 | 引き渡しのたびに待ちが出る | 少ない |
| 自己組織化 | 他部署に頼るので、自分たちで決められる範囲が狭い | 必要な技能がそろい、自分たちで決めやすい |
| 技能の広がり | 専門が固定されやすい | 専門を持ちつつ、周辺の技能も学び合う |
全員が何でもできる必要はありません。一人ひとりが専門を持ちつつ、周辺の技能も少しずつ身につける「T字型」の人材が理想とされます。特定の人にしかできない作業があると、その人が休んだときに流れが止まります。チームで学び合う工夫が欠かせません。
自己組織化チームはどう作る?
いきなり「今日から自己組織化で」と言っても、指示を待つことに慣れたチームはすぐには動けません。次の手順で、任せる範囲を少しずつ広げます(当サイトの整理)。
- 1
1. 目的と枠を示す
プロダクトゴールと、守るべき規則・予算・品質の基準を説明する
- 2
2. グランドルールを作る
会議・連絡・意思決定の決まりをチームで決める
- 3
3. 小さな判断から任せる
作業の分担や段取りなど、失敗しても取り返せる範囲から
- 4
4. 障害を外し、質問で支える
答えを渡さず、考えるための問いを投げる
- 5
5. ふりかえりで広げる
うまくいった範囲を確かめ、任せる範囲を広げる
任せる範囲は一度に広げず、チームの成熟度に合わせて段階的に広げます。
- 立ち上げの時期: 目標と枠を丁寧に説明し、グランドルールをチームで作る。小さな判断から任せる。
- 慣れてきた時期: 作業の分担や見積もりを完全に任せ、PMは質問とコーチングに回る。
- 成熟した時期: 進め方の改善もチームが主導し、PMは外との調整と障害の除去に集中する。
チームが自分で決めて失敗したときに責めないことも大切です。失敗をふりかえりで学びに変えられる、心理的に安全な環境が土台になります。
つまずきやすい点と支え方は?
自己組織化は、任せれば自然にうまくいくものではありません。よくあるつまずきと、リーダーの支え方を整理します。
| つまずき | 起きやすい原因 | リーダーの支え方 |
|---|---|---|
| 目的からずれる | 目標や枠が共有されていない | プロダクトゴールと枠を繰り返し示す |
| 一部の人に頼りきりになる | 特定の技能が一人にしかない | ペア作業などで学び合う機会を作る |
| 対立が長引く | 決め方が決まっていない | 決め方(合意・多数決・期限)をグランドルールに入れる |
| 誰も決めない | 失敗を責められる不安、責任の押し付け合い | 失敗を学びとして扱い、小さく試すことを促す |
| チームの外から口出しが続く | 要望の窓口が決まっていない | 要望はプロダクトオーナーを通す流れを関係者に説明する |
PMが口を出すべきでない場面・動くべき場面は?
PMP の問題で特に大事なのがここです。PMは、「任せる」と「動く」の線引きをします。迷ったら、次の順で確かめます(当サイトの整理)。
- 安全・法令・倫理に関わるか? 関わるなら、PMがすぐに動きます。必要なら作業を止めます。
- 組織の規則・予算・契約の枠に触れるか? 触れるなら、枠を改めて示し、是正します。
- チームの力では外せない障害か? そうなら、PMが関係部署と調整して取り除きます。
- チームの中のやり方か? そうなら、任せます。気づいたことは質問の形で伝えます。
| 場面 | PMの行動 | 理由 |
|---|---|---|
| 誰がどの作業をやるか | 口を出さない。チームに任せる | 作業の分担はチームが決める |
| 作業の見積もり | 口を出さない。数字を変えさせない | 見積もりは作業をする人が行う |
| 技術的な作り方の選択 | 基本は任せる。判断の基準の整理は手伝う | 作り方はチームの専門の領域 |
| チーム内の意見の対立 | まずチームの話し合いを促す。長引けば進行役を務める | 自分たちで解決する力を育てる |
| チームの外の障害 | 動く。関係部署と調整して取り除く | チームの力では外せない |
| 規則・法令・倫理の違反 | 動く。すぐに是正する | 枠そのものを守るのはリーダーの責任 |
| 安全に関わる問題 | 動く。必要なら作業を止める | 任せる範囲を超えている |
まとめると、チームの中のやり方には口を出さず、チームの外の障害と枠を守ることには責任を持って動くのが、PMの姿です。
新ECO(2026年版)の People のタスク3は「チームを率いる」です。チームに権限を与えること、問題を解決すること、適切なリーダーシップの型を決めることなどが含まれます。型の選び方はチームを率いるリーダーシップで扱います。
アジャイルのチームの支え方をさらに深く学びたい人には、PMI のアジャイルの資格もあります。PMP との違いはPMI-ACPとは?で比べています。
確認問題1
作業の分担を決めてほしいと言われた
(当サイトの独自問題)アジャイルに切り替えたばかりのチームです。開発者たちが「誰がどの作業をやるか、これまでどおりPMが決めてほしい」と言ってきました。チームには経験のあるメンバーもそろっています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。自己組織化の意味を説明し、最初はチームが自分たちで決められるよう進行役として支えます。慣れてきたら、徐々に手を離していきます。
1:チームが自分で考える機会を奪います。3:PMが選んだ人に決めさせるのは、形を変えた指示です。4:慣れていないチームを放置すると、混乱が起きやすくなります。
確認問題2
チームの見積もりが楽観的に見える
(当サイトの独自問題)経験豊富なPMが、チームの見積もりを見て「この機能は自分の経験なら倍はかかる」と感じました。チームはプランニングポーカーで合意して見積もっています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。見積もりは作業をする人が行います。PMの経験は大切な情報なので、「この部分の難しさはどう考えた?」など質問の形で伝え、判断はチームに任せます。
1:PMの数字に合わせて直させると、チームの見積もりではなくなり、自己組織化を損ないます。2:隠れた予備を持つのは、透明性に反する行為です。4:責任を押し付ける姿勢は、心理的安全性を損ないます。
確認問題3
チームが組織の規則を外れた
(当サイトの独自問題)あるチームが、会社が承認していないクラウドサービスに顧客のデータを置いて開発していました。作業を早めるためで、チームは「自分たちで決めてよいと言われた」と話しています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。組織の規則やデータの扱いは、チームが自由に決められる枠の外です。違反はすぐに是正し、枠を改めて明確に示します。
1:枠を守るのはリーダーの責任です。2:顧客のデータに関わる違反を放置することになります。3:違反への対応として、すべての判断を承認制にするのは行き過ぎです。自己組織化を壊してしまいます。
任せる範囲が問われる問題は、タスク別ドリルの People のタスクで練習できます。