BAC・EAC・ETC・VACはどういう関係?
4つの値は、1本の線で考えると混乱しません。今までに使ったお金が AC、これから使うお金が ETC、その合計が EAC です。最初の予算 BAC と EAC の差が VAC です。
| 略語 | 名前 | 意味 | 式 |
|---|---|---|---|
| BAC | 完成時総予算 | 最初に承認された予算の総額 | (ベースラインの合計) |
| EAC | 完成時総コスト見積り | 最終的にかかる総額の見込み | AC + ETC |
| ETC | 残作業コスト見積り | 今から完成までにかかる額 | EAC − AC |
| VAC | 完成時差異 | 予算に対する最終的な過不足 | BAC − EAC |
VAC がマイナスなら予算が足りなくなる見込み、プラスなら余る見込みです。CPI や SPI の意味があやしい場合は、先に EVMの計算問題|SV・CV・SPI・CPI を確認してください。
EACの4つの式とは?
EAC の式は、標準的に次の4つです。違いは「残りの作業がどんな効率で進むと考えるか」だけです。
| 式 | 前提(問題文の手がかり) |
|---|---|
| ① EAC = BAC ÷ CPI | 今のコスト効率が最後まで続く(「現在の傾向が続く」「典型的な差異」) |
| ② EAC = AC + (BAC − EV) | これまでの差異は一時的。残りは計画どおりの効率で進む(「非典型的」「一度きり」) |
| ③ EAC = AC + (BAC − EV) ÷ (CPI × SPI) | コストとスケジュールの両方の効率が残りに影響する(「納期を守る必要がある」「両方の指数を考慮」) |
| ④ EAC = AC + ボトムアップETC | 当初の見積りの前提が崩れた。残りを積み上げで見積り直す(「見積りに根本的な誤り」「前提が変わった」) |
POINT
(BAC − EV) は「残りの作業の予算額」です。②〜④はすべて「使った分(AC)+残りにかかる額」という同じ形をしています。
1つの例で4つの式を比べると?
(当サイトの架空の例)BAC 1,000万円、現時点で PV 500万円、EV 400万円、AC 500万円とします。CPI = 400 ÷ 500 = 0.8、SPI = 400 ÷ 500 = 0.8 です。残りの作業の予算は、BAC − EV = 600万円です。
BAC 1,000・PV 500・EV 400・AC 500(万円)、CPI 0.8・SPI 0.8
- 1① BAC ÷ CPI = 1,000 ÷ 0.8 = 1,250万円
- 2② AC + (BAC − EV) = 500 + 600 = 1,100万円
- 3③ CPI × SPI = 0.8 × 0.8 = 0.64
- 4③ AC + 600 ÷ 0.64 = 500 + 937.5 = 1,437.5万円
- 5④ チームが残りを積み上げ直した結果 ETC = 700万円 → 500 + 700 = 1,200万円
② 1,100 < ④ 1,200 < ① 1,250 < ③ 1,437.5(万円)
当サイトの架空の例。④の700万円は仮の見積り
同じ状況でも、前提によって見込みが300万円以上変わります。試験で問われるのは、計算力より「前提を読み取る力」です。
①は、0.8という効率が続けば「1円分の作業に1.25円かかる」ので、BAC を0.8で割ります。③は、遅れを取り戻すための追加コストも見込む式で、最も厳しい(大きい)値になりやすいのが特徴です。
問題文からどの式かを見分けるには?
次の順番で問題文を読むと、迷いにくくなります。
- 1
見積りの前提が崩れた?
「当初の見積りに誤り」「前提条件が変わった」→ ④ AC+ボトムアップETC
- 2
差異は一時的?
「一度きり」「今後は計画どおり」→ ② AC+(BAC−EV)
- 3
納期も守る必要がある?
「スケジュールの制約」「両方の指数」→ ③ ÷(CPI×SPI)
- 4
それ以外
「現在の傾向が続く」または特に指定なし → ① BAC÷CPI
前提の指定がなければ、まず ① BAC÷CPI を考えます。
当サイトの整理
「特に指定なし」で ① を選ぶのは、多くの教材で採られている考え方です。ただし、問題文に手がかりがあれば、そちらを優先してください。
ETCとVACはどう計算する?
EAC が出れば、ETC と VAC は引き算だけです。先ほどの①(EAC 1,250万円)で計算します。
ETC = EAC − AC、VAC = BAC − EAC
- 1ETC = 1,250 − 500 = 750万円
- 2VAC = 1,000 − 1,250 = −250万円
- 3検算:AC + ETC = 500 + 750 = 1,250 = EAC
あと750万円かかり、予算は250万円不足する見込み
当サイトの架空の例
| 式 | EAC | ETC(EAC−AC) | ETC を直接求める式 | VAC(BAC−EAC) |
|---|---|---|---|---|
| ① BAC÷CPI | 1,250 | 750 | (BAC − EV) ÷ CPI = 600 ÷ 0.8 | −250 |
| ② AC+(BAC−EV) | 1,100 | 600 | BAC − EV = 600 | −100 |
| ③ ÷(CPI×SPI) | 1,437.5 | 937.5 | (BAC − EV) ÷ (CPI × SPI) = 600 ÷ 0.64 | −437.5 |
| ④ ボトムアップ | 1,200 | 700 | 残りを見積り直した額 | −200 |
試験で「あといくら必要か」と聞かれたら ETC です。「総額はいくらか」なら EAC、「予算に対していくら足りないか」なら VAC を答えます。聞かれている値を取り違える誤答が多いので、最後に問いを読み直してください。
VACがマイナスになったら何をする?
VAC がマイナスでも、すぐに予算の追加を求めるのは早すぎます。状況問題では、次の順番で考えると判断を誤りにくくなります。
- 原因を分析する:差異が一時的か、今後も続くか、見積りの前提が崩れたのかを確かめる。
- 見通しを出し直す:原因に合った EAC の式を選び、ETC と VAC を計算し直す。
- 対応策を検討する:効率の改善、スコープの優先順位の見直し、リスクへの対応などを考える。
- 報告し、必要な承認を得る:見通しと対応策をスポンサーなどに伝える。予備の使用や予算の変更が必要なら、変更管理などガバナンスの手続きに乗せる。
予算内に収めるには残りをどの効率で進める必要があるかは、TCPI で確かめます。詳しくは TCPI(残作業効率指数)とは? を参照してください。予算と予備費の関係は コスト見積もりの手法と予算の作り方 で解説しています。
アジャイルでは完成時のコストをどう見通す?
アジャイルでは、チームの人数とイテレーションの長さがほぼ一定なので、1イテレーションあたりのコストも一定に近くなります。そこで、残りのイテレーション数から完成時のコストを見通す方法がよく使われます。
ETC = 残りのイテレーション数 × 1イテレーションあたりのコスト、EAC = AC + ETC
- 1これまでの AC = 600万円、予算(BAC)= 800万円
- 2残りのバックログ 120ポイント ÷ 平均ベロシティ 20 = 6イテレーション
- 3ETC = 6 × 50万円 = 300万円
- 4EAC = 600 + 300 = 900万円、VAC = 800 − 900 = −100万円
- 5ベロシティが16〜24で揺れる場合:120 ÷ 24 = 5、120 ÷ 16 = 7.5 → 8イテレーション
EAC は約900万円。幅で示すなら850〜1,000万円
当サイトの架空の例。1イテレーションあたりのコストは50万円とした
予算が足りないと分かったら、プロダクトオーナーと優先順位を見直し、予算の中で価値の高いものから届ける選択肢もあります。
確認問題1
超過の原因が一度きりの場合
(当サイトの独自問題)BAC 600万円のプロジェクトで、EV は200万円、AC は260万円です。超過の原因は、ある部品の価格が一度だけ高騰したことで、その部品の購入はすでに終わりました。残りの作業は当初の見積りどおりに進む見込みです。スポンサーに報告する EAC はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。差異は一度きりで、残りは計画どおりなので ② AC + (BAC − EV) = 260 + 400 = 660万円です。
1:BAC ÷ CPI = 600 ÷ (200 ÷ 260) = 780万円。今の効率が続く前提の式で、この状況には合いません。3:AC + BAC = 860万円で、完了済みの作業の予算を引き忘れています。4:BAC のままで、すでに出た超過を無視しています。
確認問題2
残りにいくら必要か
(当サイトの独自問題)BAC 2,000万円のプロジェクトで、EV は800万円、AC は1,000万円です。原因分析の結果、現在のコスト効率は今後も続くと判断しました。財務部門から、完成までにあといくら必要かを聞かれています。回答すべき金額はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。CPI = 800 ÷ 1,000 = 0.8、EAC = 2,000 ÷ 0.8 = 2,500万円です。聞かれているのは「あといくら」なので、ETC = 2,500 − 1,000 = 1,500万円です。
1:BAC − EV = 1,200万円で、残りが計画どおりの効率で進む前提の値です。2:EAC(総額)を答えています。4:BAC − AC = 1,000万円で、残りの予算を答えているだけです。
確認問題3
見積りの前提が崩れた
(当サイトの独自問題)システム移行プロジェクトの途中で、移行対象のデータ量が当初の想定の3倍あると判明しました。これまでの CPI は0.95です。スポンサーから、完成時の総コストの見込みを出し直すよう求められました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。当初の見積りの前提(データ量)が崩れたので、過去の効率から延長しても意味がありません。残りをボトムアップで見積り直し、EAC = AC + ボトムアップETC とします。
2:今の効率が続く前提の式で、作業量が3倍になったことを反映できません。3:前提の変化は、一時的な差異ではありません。4:効率から延長する点で、2と同じ問題があります。
次に何をすればいい?
4つの式は、表を見ずに書けるまで手で書いて覚えます。そのうえで「前提の言葉」から式を選ぶ練習を、問題で繰り返します。
本番の画面で計算と判断を組み合わせて練習したい人は、無料模試30問から始めてください。ほかの計算の公式は PMPの計算問題の公式一覧 にあります。