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コスト見積もりの手法と予算の作り方|類推・パラメトリック・ボトムアップ

コスト見積もりの3つの手法(類推・パラメトリック・ボトムアップ)の違いと使い分けを、比較表と数値例で解説。予備を足した予算の積み上げ方、見積りの手順とよくある誤り、PMPの確認問題3問つき。

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執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • コスト見積もりの主な手法は3つです。過去の似た案件から出す類推、単価×数量で出すパラメトリック、作業ごとに積み上げるボトムアップです。
  • 類推は速いが粗く、ボトムアップは正確だが手間がかかります。情報が増えるにつれて、精度の高い手法に切り替えます。
  • 予算は、見積りの合計にコンティンジェンシー予備を足してコスト・ベースライン、さらにマネジメント予備を足してプロジェクト予算、と積み上げます。
  • PMP では Process タスク6「財務の計画と管理」で、予備の管理や支出の差異の報告まで問われます。

コスト見積もりの手法は?3つの違い

コストの見積りでよく使う手法は、類推・パラメトリック・ボトムアップの3つです。見積りのぶれが大きい作業には、三点見積もりを組み合わせます。違いを表にまとめます。

コスト見積もりの主な手法(当サイトの整理)
手法出し方速さ・手間精度向く段階
類推見積もり似た過去のプロジェクト全体の実績をもとに、規模などの違いを補正する速い・安い低い構想・立ち上げ(詳細が決まる前)
パラメトリック見積もり単価 × 数量(1画面あたりの費用 × 画面数など)中くらい単価の根拠が確かなら高い作業の量が数えられるようになったとき
ボトムアップ見積もりWBS の作業ごとに見積もり、積み上げる遅い・手間がかかる最も高いWBS ができた計画の段階
三点見積もり楽観値・最可能値・悲観値から期待値を出す中くらい見積りの幅も示せるぶれが大きい作業

どれか1つに決めるより、段階に応じて切り替えるのが基本です。構想の段階では類推で概算を出し、計画が進んだらボトムアップで積み上げ直します。

初期の見積りほど、外れる幅は大きくなります。概算は「3,000万〜4,000万円」のように幅を付けて伝え、情報が増えるたびに幅を狭めていきます。

類推見積もりとパラメトリック見積もりはどう違う?

どちらも過去のデータを使う方法ですが、使い方が違います。

類推見積もりとパラメトリック見積もり

類推見積もり

トップダウン

  • 使うデータ似た過去のプロジェクト全体の実績
  • 例前回の類似案件が3,000万円、今回は規模が約1.2倍 → 約3,600万円
  • 長所速く安く出せる
  • 注意点精度は低い。過去と今回の違いが大きいと外れる

パラメトリック見積もり

単価 × 数量

  • 使うデータ作業量の単位あたりの単価(過去の統計)
  • 例1画面あたり25万円 × 40画面 = 1,000万円
  • 長所単価のデータが信頼できれば精度が高い
  • 注意点単価の根拠が弱いと、全体がずれる

情報が少ない初期は類推、単価の統計があればパラメトリックが向きます。

当サイトの架空の例と整理

類推見積もりでは、過去と今回の違い(規模・技術・チームの経験)を補正します。補正の根拠を書き残すと、後で見積りの妥当性を説明できます。

パラメトリック見積もりは、単価のもとになった過去の作業が、今回の作業と似ているかが要です。似ていなければ、単価そのものを見直します。

ボトムアップ見積もりとは?

ボトムアップ見積もりは、WBS の最下位にある作業のまとまり(ワーク・パッケージ)ごとにコストを見積もり、積み上げて全体を出す方法です。

作業の中身を知る担当者が見積もるので、最も精度が高くなります。その代わり、WBS ができていないと使えず、手間もかかります。

ボトムアップの積み上げ(当サイトの架空の例)
ワーク・パッケージ見積り
設計800万円
開発2,400万円
テスト1,000万円
移行300万円
合計4,500万円

見積りのぶれが大きい作業には、三点見積もり(楽観値・最可能値・悲観値)を組み合わせます。期待値だけでなく、見積りの幅も示せます。

見積もりはどんな手順で進める?

見積りの精度は、手法を選ぶ前の準備と、出した後の扱いで決まります。流れは次のとおりです。

コスト見積もりの手順
  1. 1

    範囲を確かめる

    スコープ・ベースライン(WBS)で、何を見積もるかを決める

  2. 2

    費用の項目を洗い出す

    人件費・外注・設備・ライセンス・研修・移行など

  3. 3

    手法を選んで見積もる

    段階と手元のデータに合わせて、類推・パラメトリック・ボトムアップ

  4. 4

    リスクの備えを足す

    特定済みのリスクには、コンティンジェンシー予備

  5. 5

    根拠を残し、承認を得る

    前提・制約・使ったデータを書き、コスト・ベースラインとして承認

  6. 6

    実績と比べて見直す

    差異が大きければ原因を分析し、必要なら変更管理へ

当サイトの整理

見積りの根拠を残しておくと、後で差異が出たときに、どの前提が崩れたかを追えます。根拠のない数字は、見直しもできません。

コスト・ベースラインと予算はどう積み上げる?

見積りを足しただけでは、まだ予算ではありません。リスクに備えるお金を2段階で足します。

予算の積み上げ

予算 = 作業の見積り合計 + コンティンジェンシー予備 + マネジメント予備

  1. 1ワーク・パッケージの見積り合計 = 4,500万円
  2. 2+ コンティンジェンシー予備(特定済みのリスクへの備え)500万円
  3. 3= コスト・ベースライン 5,000万円(= BAC)
  4. 4+ マネジメント予備(特定できていないリスクへの備え)300万円
  5. 5= プロジェクト予算 5,300万円

コスト・ベースライン 5,000万円、予算 5,300万円

当サイトの架空の例

コスト・ベースラインは、EVM で使う BAC(完成時総予算)になります。プロジェクト・マネジャー(PM)が実績と比べる基準です。

マネジメント予備は、ベースラインの外にあります。使うには、スポンサーや運営委員会(ステアリング・コミッティ)など、ガバナンスで決めた承認者の許可が必要です。2つの予備の違いと使う手続きは コンティンジェンシー予備とマネジメント予備の違い で解説しています。

コンティンジェンシー予備の金額は、特定済みのリスクの期待金額価値(EMV)の合計などを根拠に決めます。

よくある誤りは?

見積りが外れる原因は、手法の選び方より、扱い方にあることが多いです。次の5つは避けてください。

  • 見積りに余裕を隠して上乗せする:担当者ごとに上乗せすると合計が膨らみ、余裕は使い切られがちです。不確かさはリスクとして洗い出し、予備として見える形で持ちます。
  • 費用の項目が抜ける:ライセンス、研修、データ移行、運用への引き継ぎなど、作業以外の費用は漏れやすい項目です。
  • 受注したい金額から逆算する:値引き後の数字を見積りにすると根拠が失われ、後で大きな差異が出やすくなります。
  • 見積りの合計をそのまま予算にする:予備がないので、リスクが起きるたびに予算が足りなくなります。
  • 前提を書かない:前提が変わっても気づけず、見積りを見直すきっかけを失います。

支出の追跡と財務報告はどうする?

予算ができたら、いつ、いくら使うかの計画を作ります。時間に沿って累計すると、S字カーブの形になります。

財務部門が四半期ごとなどに資金を出す場合は、その上限と支出の計画を合わせます。ある時期の支出が上限を超えるなら、作業の時期をずらすなどして調整します。

実行中は、次の流れで支出を追跡し、報告します。

  1. 実績を集める:作業ごとの実コスト(AC)と出来高(EV)を、決めた周期で集める。
  2. 計画と比べる:コストの差異(CV)や効率(CPI)を出し、完成時の見込み(EAC)を更新する。予算内に収めるのに必要な効率は TCPI で確かめる。
  3. 原因を分析する:差異が許容範囲(しきい値)を超えたら、原因と今後の影響を分析する。
  4. 報告し、手続きに乗せる:スポンサーや運営委員会に報告する。予算の変更や予備の使用が必要なら、ガバナンスの手続きで承認を得る。

EVM の計算と完成時の見込みの式は、PMPの計算問題の公式一覧 にまとめています。予算は全体の計画の一部なので、スコープやスケジュールの計画との整合も確かめます。

アジャイルのプロジェクトでは予算をどう扱う?

アジャイルでは、チームの人数と期間がほぼ決まっていることが多いです。コストはおおむね「チームの1イテレーションあたりの費用 × イテレーション数」で決まります。

予算を固定し、その範囲で価値の高い機能から作るのが基本です。たとえば1イテレーション(2週間)のチーム費用が200万円で、予算が2,400万円なら、使えるのは12イテレーションです。

予測型はスコープを固めてから費用を見積もり、アジャイルは費用と期間を固めてスコープを調整します。試験では、どちらの前提の問題かを問題文から読み取ります。

PMPのProcessタスク6では何が問われる?

ECO 2026年版の Process タスク6は「財務の計画と管理(Plan and manage finance)」です。イネーブラー(タスクに含まれる仕事の例)として、次の7つが挙がっています(当サイトによる要約)。

  • プロジェクトに必要な資金を分析する
  • リスクとコンティンジェンシーのための資金を定量化する
  • ライフサイクルを通じた支出の追跡を計画する
  • 財務の報告を計画する
  • 将来の財務上の課題を予測する
  • 財務上の差異を監視し、ガバナンスのプロセスと連携する
  • 財務上の予備を管理する

旧版(2021年版)の ECO では「予算と資源の計画と管理」というタスクでした。2026年版では財務が独立したタスクになり、予備の管理やガバナンスとの連携がはっきり書かれました。見積りの手法そのものより、「予算をどう守り、差異をどう扱うか」の判断が問われると考えてください。

確認問題1

初期の段階で使う見積り手法

(当サイトの独自問題)経営会議で、新しい物流システムの構想が承認されました。まだ要件は固まっておらず、WBS もありません。スポンサーからは、来週までに概算の費用を示すよう求められています。社内には、2年前に行った似た規模の物流システム導入の実績データがあります。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。要件も WBS もない初期の段階で、似た過去のプロジェクトの実績があります。速く出せる類推見積もりが適しています。概算なので、幅を付けて伝えます。

1:要件が固まらないうちは WBS を作れず、来週までに間に合いません。2:作業の詳細がないので、作業ごとに積み上げられません。4:要件がないまま正式な見積りは取れず、時間もかかります。

確認問題2

コスト・ベースラインの金額

(当サイトの独自問題)ワーク・パッケージの見積りの合計は2,000万円です。リスク分析にもとづくコンティンジェンシー予備は200万円、組織の方針によるマネジメント予備は150万円です。EVM で使う BAC として、コスト・ベースラインを確定します。正しい金額はどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:2。コスト・ベースライン = 作業の見積り合計 + コンティンジェンシー予備です。2,000 + 200 = 2,200万円になります。

1:コンティンジェンシー予備を入れていません。3:マネジメント予備まで足したプロジェクト予算です。4:コンティンジェンシー予備の代わりに、マネジメント予備を足しています。

確認問題3

支出の計画が資金の上限を超える

(当サイトの独自問題)財務部門は、四半期ごとに上限を決めて資金を出しています。この上限は変えられないと説明を受けています。支出の計画を確認すると、第2四半期の支出が上限を15%上回っていました。プロジェクト全体の予算は承認済みで、総額は変わりません。一部の作業には、時期をずらせる余裕(フロート)があります。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。総額ではなく、支出の時期の問題です。フロートのある作業を後ろにずらせば、四半期ごとの支出を上限に収められます。財務部門と計画を合わせ、必要ならスケジュールを更新します。

2:マネジメント予備は想定外のリスクへの備えで、資金の時期の調整には使いません。3:時期をずらせば解決します。スコープを減らすのは行き過ぎです。4:上限は変えられないと説明を受けており、了承は得られません。

次に何をすればいい?

見積りの3つの手法の違いと、予算の積み上げの順番を、白紙に書けるようにしてください。この2つが分かれば、予備費や EVM の問題がずっと解きやすくなります。

Process のタスクごとに問題を解いて確かめたい人は、タスク別ドリルでタスク6を集中的に練習できます。

よくある質問

類推見積もりとパラメトリック見積もりは、どちらが正確ですか?

一般にはパラメトリック見積もりの方が正確です。ただし、単価の統計が信頼できる場合に限ります。最も正確なのは、作業ごとに積み上げるボトムアップ見積もりです。

コスト・ベースラインと予算の違いは何ですか?

コスト・ベースラインは、作業の見積りにコンティンジェンシー予備を足したもので、実績と比べる基準です。予算は、それにマネジメント予備を足した総額です。

見積りはいつ見直しますか?

情報が増えたとき、前提が変わったとき、差異が大きくなったときです。ベースラインを変える場合は、変更管理の手続きで承認を得ます。

出典・参考

  1. [1]PMI: PMP Examination Content Outline – 2026(PDF。Process タスク6)
  2. [2]PMI: PMP Examination Content Outline – January 2021(PDF・旧版。Process タスク5)
  3. [3]PMI: Project Management Professional (PMP)(試験内容の概要 ECO 2026年7月版の入手先)

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