コンティンジェンシー予備とマネジメント予備の違いは?
結論から言うと、違いは「備えるリスク」と「ベースラインの中か外か」です。コンティンジェンシー予備は特定済みのリスクに、マネジメント予備は特定できていないリスクに備えます。
| 観点 | コンティンジェンシー予備 | マネジメント予備 |
|---|---|---|
| 備えるリスク | 特定済み(既知の未知) | 特定できていない(未知の未知) |
| 金額の根拠 | リスクの定量分析(EMV など) | 組織の方針・過去の実績 |
| ベースラインとの関係 | コスト・ベースラインに含む | コスト・ベースラインの外 |
| EVM の BAC に | 含む | 含まない |
| 使う人・承認 | PM が計画に沿って使う | スポンサーなどの承認が必要 |
| 使った後 | ベースラインは変わらない | 変更管理でベースラインに組み込む |
承認の違いは、「ベースラインの中か外か」から生まれます。中にあるお金は、計画どおりに使う限りベースラインを変えません。外にあるお金を使うと、ベースラインが変わるので承認が要ります。
なぜ予備費が必要なのか?
どれだけ丁寧に見積もっても、プロジェクトには不確かさが残ります。部品が値上がりするかもしれず、誰も想定していなかった法改正が起きるかもしれません。予備費は、こうした不確かさに備えて、あらかじめ確保しておくお金です。
予備がないと、リスクが起きるたびに予算が足りなくなり、そのつど承認を取り直すことになります。逆に、根拠なく大きな予備を積むと、資金が無駄に眠ります。そこで、リスクの性質に応じて2種類の予備を分けて持つのが基本です。
ECO 2026年版では、Process タスク6「財務の計画と管理」に、リスクとコンティンジェンシーのための資金の定量化と、財務上の予備の管理が含まれています。Business Environment タスク5「リスクの計画とマネジメント」とも深く関わります。
コンティンジェンシー予備とは?(既知の未知)
コンティンジェンシー予備は、リスク登録簿に載っている、特定済みのリスクに備えるお金です。「起きるかどうかは分からないが、起きうることは分かっている」リスクなので、既知の未知(known unknowns)と呼ばれます。
金額は、リスクの定量分析の結果を根拠に決めます。たとえば、各リスクの期待金額価値(EMV = 確率 × 影響額)を合計する方法です。計算の詳しい手順は 期待金額価値(EMV)とデシジョンツリーの計算 で解説しています。
コンティンジェンシー予備 = 特定済みのリスクの EMV の合計(の絶対値)
- 1脅威 R1:20% × (−300万円) = −60万円
- 2脅威 R2:10% × (−500万円) = −50万円
- 3好機 O1:30% × (+100万円) = +30万円
- 4合計 −80万円 → コンティンジェンシー予備 80万円
80万円をコスト・ベースラインに含める
当サイトの架空の例
コンティンジェンシー予備はコスト・ベースラインに含まれます。計画した対応策に沿って使う限り、ベースラインを変える必要はありません。PM が、リスク管理計画の手順に従って使います。
マネジメント予備とは?(未知の未知)
マネジメント予備は、特定できていない、想定外のリスクに備えるお金です。「何が起きるかも分からない」ので、未知の未知(unknown unknowns)と呼ばれます。
金額は、組織の方針や過去の実績から、予算の一定割合などで決めることが多いです。マネジメント予備はコスト・ベースラインの外にあり、EVM の BAC にも含まれません。
使うときは、スポンサーや運営委員会(ステアリング・コミッティ)など、ガバナンスで決めた権限者の承認が必要です。使った分はコスト・ベースラインに組み込まれるので、変更管理の手続きでベースラインを変更します。
予算とベースラインの関係を図で見ると?
- マネジメント予備300万円。未知の未知に備える。使うには承認が必要ベースラインの外
- コンティンジェンシー予備500万円。特定済みのリスクに備えるコスト・ベースライン
- ワーク・パッケージの見積り4,500万円。WBS の作業ごとの見積りの合計コスト・ベースライン
コスト・ベースライン 5,000万円(= BAC)+ マネジメント予備 300万円 = プロジェクト予算 5,300万円
当サイトの架空の例(上の算定例とは別のプロジェクト)。幅は金額に比例しない
見積りから予算を積み上げる手順は、コスト見積もりの手法と予算の作り方 で解説しています。
同じ考え方は期間にも使えます。スケジュールにも、特定済みのリスクに備える余裕(スケジュールのコンティンジェンシー予備)を持たせることがあります。スケジュールの立て方は スケジュール管理の手順 で扱っています。
予備を使うときの手続きは?
- 1
何が起きたかを確かめる
影響と原因を分析する
- 2
リスク登録簿にあるか
ある → 特定済みのリスク/ない → 想定外のリスク
- 3
特定済みなら
計画した対応策を実行し、コンティンジェンシー予備を充てる
- 4
想定外なら
対応策を検討し、マネジメント予備の使用を変更要求として出し、承認を得る
- 5
記録と報告
登録簿・予備の残高・ベースラインを更新し、関係者に報告する
当サイトの整理。承認者や手順は組織のガバナンスで決まる
マネジメント予備の使用は、変更要求として変更管理の手続きに乗せます。手続きの流れは 変更管理の手順 で解説しています。
コンティンジェンシー予備が足りなくなりそうな場合も、早めに状況を報告し、ガバナンスの手続きに沿って対応を相談します。予備の残高は、リスクの減少や発生にあわせて見直します。使われなかった予備の扱いも、組織の方針に従います。
よくある誤りは?
予備の問題は、次の5つの取り違えを避ければ、ほぼ迷わず解けます。
- 予備でスコープの追加をまかなう:画面の追加などはリスクではなく、スコープの変更です。変更管理で、予算の変更とあわせて扱います。
- マネジメント予備を BAC に入れる:BAC はコスト・ベースラインの合計です。マネジメント予備は、使用が承認されてベースラインに組み込まれるまで含みません。
- コンティンジェンシー予備を使ったら BAC を増やす:もともとベースラインの中にあるので、BAC は変わりません。
- 想定外の出来事にコンティンジェンシー予備を使う:登録簿にない出来事は、マネジメント予備の対象です。
- 予備を作業の見積りに隠す:作業ごとに上乗せせず、予備として分けて、見える形で持ちます。
確認問題1
想定外の出来事が起きた
(当サイトの独自問題)プロジェクトの途中で、どのリスク分析でも想定していなかった規制の変更が発表されました。対応には120万円の追加費用がかかる見込みです。リスク登録簿には、該当するリスクがありません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。登録簿にない想定外の出来事は、マネジメント予備で備える対象です。影響を分析したうえで、変更管理の手続きでスポンサーなどの承認を得ます。
1:コンティンジェンシー予備は、特定済みのリスクのためのお金です。2:他の作業の予算を勝手に削ると、そちらで別の問題が起きます。3:登録簿への記録は必要ですが、後から載せても想定外の出来事であることは変わりません。
確認問題2
マネジメント予備を使った後の BAC
(当サイトの独自問題)コスト・ベースラインは5,000万円、マネジメント予備は300万円です。想定外の出来事への対応として、スポンサーがマネジメント予備から120万円の使用を承認しました。EVM の計算に使う BAC を更新します。正しい金額はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。承認されたマネジメント予備はコスト・ベースラインに組み込まれるので、BAC は 5,000 + 120 = 5,120万円になります。マネジメント予備の残りは180万円です。
1:ベースラインの変更を反映していません。2:使っていない予備まで含めた、プロジェクト予算の額です。4:予備を使った分を差し引いており、向きが逆です。
確認問題3
予備でスコープの追加をまかなう提案
(当サイトの独自問題)顧客から、画面を2つ追加してほしいという依頼がありました。チームリーダーは「コンティンジェンシー予備がまだ十分残っているので、それで作ればよい」と提案しています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。画面の追加はリスクではなく、スコープの変更です。変更要求として、コスト・スケジュールへの影響を分析し、変更管理の手続きで判断します。
1・4:予備はリスクに備えるお金で、スコープの追加には使いません。残高を確かめても同じです。3:マネジメント予備も想定外のリスクへの備えで、スコープの追加の財源ではありません。
次に何をすればいい?
覚えるときは、次の2本の対応をセットにします。「既知の未知 → コンティンジェンシー予備 → ベースラインの中 → PM が使う」。「未知の未知 → マネジメント予備 → ベースラインの外 → スポンサーの承認」。
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