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ステークホルダー分析の手法と手順|権力・関心度グリッドの使い方と例

ステークホルダー分析の手順と手法を記入例で解説。権力・関心度グリッドの4区分と関わり方、顕著性モデルの7類型、影響の方向、よくある失敗と更新の時期を、PMP新ECOに沿って確認問題3問で確かめます。

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約10分
執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • ステークホルダー分析は、関係者を洗い出し、影響力や関心で分類し、優先順位と関わり方を決める作業です。
  • 手順は6つです。洗い出す、登録簿に記録する、評価する、分類する、関わり方を決める、更新する。
  • よく使うのは権力・関心度グリッドです。関係者が多いときは顕著性モデル、窓口の整理には影響の方向(上向き・下向き・外向き・横向き)が役立ちます。
  • 分析は一度で終わりません。フェーズの節目や関係者の交代のたびに更新します。

ステークホルダー分析とは?なぜ必要?

ステークホルダー分析は、関係者を洗い出し、影響力や関心で分類し、誰に・どれだけ・どう関わるかを決める作業です。

ステークホルダーとは、プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける個人や組織です。プロジェクトによっては数十から数百にもなります。全員に同じだけ時間はかけられないので、優先順位が要ります。言葉の基本はステークホルダーとはで解説しています。

新しい試験内容の概要(ECO 2026)では、People 領域のタスク4「ステークホルダーを巻き込む」に「特定する」「分析する」が挙がっています。タスク5「ステークホルダーの期待をそろえる」には「分類する」があります(当サイトによる要約)。分析は、巻き込みと期待のすり合わせの出発点です。

ステークホルダー分析の手順は?

分析は、次の6つの手順で進めます。分類したら終わりではなく、関わり方を決めて計画に入れるところまでが分析です。

ステークホルダー分析の6つの手順(当サイトの整理)
  1. 1

    洗い出す

    憲章・契約・組織図・過去の記録から、関係者を漏れなく挙げる

  2. 2

    登録簿に記録する

    役割・要求・期待・連絡先などを一覧にする

  3. 3

    評価する

    権力(影響力)、関心、今の態度(支持・中立・抵抗)を見る

  4. 4

    分類し、優先順位をつける

    グリッドやモデルで分け、重点的に関わる相手を決める

  5. 5

    関わり方と伝え方を決める

    相手ごとの関わり方を、エンゲージメント計画とコミュニケーション計画に入れる

  6. 6

    更新する

    フェーズの節目や関係者の交代のたびに見直す

分類はゴールではない。関わり方を決めて初めて役に立つ。

ステークホルダーをどう特定する?登録簿に書くこと

最初は、関係者を漏れなく洗い出すことです。プロジェクト憲章、契約書、組織図、過去の似たプロジェクトの記録を手がかりにします。関係者への面談やブレインストーミングも使います。

洗い出した関係者は、ステークホルダー登録簿(関係者の一覧)に記録します。主な項目は次のとおりです。

  • 基本情報: 名前、所属、役職、プロジェクトでの役割、連絡先。
  • 評価の情報: 主な要求と期待、プロジェクトへの影響力、関心の度合い、最も関わる時期。
  • 分類: 社内か社外か、支持・中立・抵抗のどれか、などの区分。

見落としやすいのは、直接の利用者ではないが影響を受ける人です。作業手順が変わる隣の部署、規制当局、地域の住民などが当たります。後から見つかると、要求の追加や反対で大きな手戻りになります。

権力・関心度グリッドの使い方は?

権力・関心度グリッドは、関係者を2つの軸で4つに分ける方法です。軸は「プロジェクトへの権力(決定を左右する力)」と「プロジェクトへの関心」です。権力の代わりに影響力を使うなど、軸の組み合わせにはいくつかの形があります。

権力・関心度グリッドの4つの区分(当サイトの整理)

関心が低い

  • 権力が高い満足を保つ:要望を満たし、必要な判断の場に呼ぶ。情報を出しすぎない
  • 権力が低い様子を見る:最小限の情報で、変化がないかを見守る

関心が高い

  • 権力が高い重点的に関わる:意思決定に参加してもらい、密に連絡する
  • 権力が低い情報を伝え続ける:進捗や影響をこまめに知らせ、意見を聞く

区分は関わり方の「出発点」。人ごとの事情に合わせて調整する。

記入例:社内の経費精算システムの刷新(架空の例)
関係者権力関心区分関わり方の例
管理本部長(スポンサー)高高重点的に関わる隔週の報告会で判断を仰ぐ。重要な変更は事前に相談する
財務部長(予算の承認者)高低満足を保つ1枚の月次報告。予算の判断の前に個別に説明する
経理部の担当者(毎日使う)低高情報を伝え続ける試作の画面を見てもらう会を開き、意見の窓口を設ける
一般社員(月に数回申請する)低低様子を見る社内ポータルで予定を知らせ、リリース前に操作の案内を出す

区分は関わり方の出発点です。同じ区分でも、人ごとの事情に合わせて調整します。

区分が変わることもあります。最初は関心の低かった財務部長が、予算の見直しをきっかけに強い関心を持つ、といったことはよくあります。その場合は「重点的に関わる」に移し、関わり方も変えます。

顕著性モデルなど、ほかの分類法は?

権力・関心度グリッドのほかにも、目的に応じて次のような分類法があります。

ステークホルダーの主な分類法(当サイトの整理。影響の方向の呼び方は PMBOK ガイド第8版日本語版に合わせた)
分類法見る観点向いている場面
権力・関心度グリッド権力(影響力)× 関心小〜中規模で、関係者がそれほど多くないとき
顕著性モデル権力・正当性・緊急性の3つ関係者が多く、誰を優先するかを決めたいとき
影響の方向上向き(経営層・スポンサー)・下向き(チーム)・外向き(顧客・規制当局など)・横向き(同僚の PM など)伝え方や窓口を整理したいとき
立方体(キューブ)権力・関心・態度など3つの軸グリッドより細かく分けたいとき

顕著性モデルは、ミッチェル、アグル、ウッドが1997年の論文で示した考え方です。権力(相手に影響を与えられるか)、正当性(関わることが正当と認められるか)、緊急性(すぐの対応を求めているか)の3つで見ます。多くの属性を持つ関係者ほど、優先度が高いと考えます。

顕著性モデルの7つの類型とは?

顕著性モデルでは、3つの属性の持ち方で関係者を7つに分けます。属性が1つなら潜在的な関係者、2つなら期待的な関係者、3つすべてなら最も重視すべき関係者です。

顕著性モデルの7つの類型(分類は Mitchell, Agle & Wood〈1997〉による。訳語と例は当サイト)
持つ属性類型プロジェクトでの例
権力だけ休眠的力はあるが、プロジェクトへの正当な要求も急ぎの要求もない他部門の役員
正当性だけ裁量的意見を言う正当な立場はあるが、力も急ぎの要求もない部署
緊急性だけ要求的すぐの対応を強く求めるが、権力も正当な立場も弱い相手
権力+正当性支配的予算を承認する財務部長
権力+緊急性危険正当な立場がないのに、強い圧力で要求を通そうとする相手
正当性+緊急性依存的騒音を心配する近隣住民など、影響を受けるが力のない相手
3つすべて決定的期限を切って判断を迫るスポンサーや規制当局

決定的な相手には、最優先で関わります。依存的な相手も軽く見てはいけません。力を持つ別の関係者(自治体など)と結びつくと、決定的な相手に変わることがあります。属性の組み合わせは固定ではないので、とくに緊急性の変化に注意して見直します。

分析の結果を伝え方にどう反映する?

分析は、関わり方とコミュニケーションの計画に生かして初めて意味を持ちます。ECO も「ステークホルダーのニーズに合わせて伝え方を分析し調整する」ことを挙げています。

  • 重点的に関わる人: 定例の打ち合わせ、意思決定への参加、個別の相談。
  • 満足を保つ人: 要点をまとめた短い報告、判断が必要なときの説明の場。
  • 情報を伝え続ける人: ニュースレターや共有ページでの定期的な発信、説明会、意見を出せる窓口。
  • 様子を見る人: 必要なときに見られる情報の置き場所。

分析の結果は、関与度の評価と組み合わせてエンゲージメント計画にまとめます。関与度の評価とは、今どれくらい関わっているかと、どれくらい関わってほしいかを比べることです。詳しくはステークホルダーエンゲージメントの記事で解説しています。伝える内容と頻度は、コミュニケーション計画に落とし込みます。

関係者の評価には、本人が見ると不快に感じる内容(「抵抗している」など)も入ります。登録簿や分析の結果をどこまで公開するかには、注意が必要です。

ステークホルダー分析でよくある失敗は?

分析の手順を知っていても、次の失敗はよく起きます。

  • 社内だけで洗い出す: 規制当局や地域の住民、取引先など、社外の関係者が抜ける。
  • 役職だけで権力を判断する: 実際の影響力は、役職のない古参の担当者や、相談を受ける立場の人にあることもある。
  • 分類して終わる: 関わり方を決めて計画に入れないと、分析が役に立たない。
  • 一度作って終わる: 異動や組織変更で、関係者も影響力も変わる。

分析はいつ更新する?

ステークホルダー分析は、プロジェクトの初めに行うだけでは足りません。関係者の顔ぶれも、影響力も、関心も変わります。次のようなときに更新します。

  • 新しいフェーズに入るとき。
  • 組織変更や人事異動で、関係者が替わったとき。
  • 新しい関係者(規制当局、別の部署など)が見つかったとき。
  • 重要な変更が承認され、影響を受ける人が変わったとき。

分類した関係者の期待をそろえる方法は、期待のすり合わせの記事で解説しています。分析を使った状況問題は、無料模試30問でも試せます。

確認問題1

権力が高く関心の低い役員への関わり方

(当サイトの独自問題)権力・関心度グリッドで分析した結果、財務担当の役員は「権力が高く、関心が低い」区分に入りました。この役員は予算の承認権を持っていますが、細かい進捗には興味がないと話しています。プロジェクト・マネジャーがこの役員に対してとるべき関わり方として、最も適切なものはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:2。権力が高く関心が低い人は「満足を保つ」区分です。負担をかけすぎずに要点を伝え、判断が必要なときに説明の場を設けます。

1:関心の低い人に詳しい情報を送りすぎると、かえって満足を損ねます。3:予算の承認権を持つ人に、終結まで報告しないのは危険です。4:権力の高い人を「様子を見る」と同じ扱いにしています。

確認問題2

計画の途中で新しい関係者が見つかった

(当サイトの独自問題)工場の設備更新プロジェクトを実行中です。更新後の設備の騒音について、近隣の住民団体が市に問い合わせていると分かりました。住民団体は、ステークホルダー登録簿に記載されていません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:4。見落としていた関係者が見つかったら、まず登録簿に加えて影響力や関心を分析し、どう関わるかを計画に反映します。そのうえで、要望を聞く場を設けます。

1:プロジェクトに影響を与えうる関係者への対応を、外部に任せています。2:要望を確かめる前に工事を発注するのは早すぎます。3:一方的な発表だけでは、関係者の懸念を聞けません。

確認問題3

関係者が多く、優先順位をつけたい

(当サイトの独自問題)全国規模の制度変更に対応するプロジェクトで、関係者が200以上の団体や部署にのぼります。PM は、限られた時間の中で誰を優先して関わるべきかを判断したいと考えています。とくに「すぐに対応を求めている関係者」を見分けたいと考えています。このとき使う分析の方法として、最も適切なものはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。顕著性モデルは、権力・正当性・緊急性の3つで関係者の優先度を見る方法です。関係者が多く、緊急性も考えたいときに向いています。

2:責任分担表は、作業ごとの役割と責任を決める道具です。関係者の優先度づけには使いません。3:関与度の比較は大切ですが、緊急性で優先度をつける目的には直接合わない方法です。4:回答の多さは、影響力や緊急性とは関係がありません。

よくある質問

ステークホルダー分析はどんな手順で進めますか?

関係者を洗い出して登録簿に記録し、権力や関心を評価して分類します。そのうえで関わり方と伝え方を決め、節目ごとに更新します。

権力・関心度グリッドの4つの区分は何ですか?

権力も関心も高い人は「重点的に関わる」、権力が高く関心が低い人は「満足を保つ」に分けます。権力が低く関心が高い人は「情報を伝え続ける」、どちらも低い人は「様子を見る」とするのが一般的です。

顕著性モデルとは何ですか?

ミッチェル、アグル、ウッドが1997年に示した考え方で、関係者を権力・正当性・緊急性の3つの属性で見ます。属性の持ち方で7つの類型に分け、3つすべてを持つ関係者を最も重視します。

ステークホルダー分析はいつ行いますか?

プロジェクトの初めに行い、その後もフェーズの切れ目、関係者の交代、新しい関係者の発見、重要な変更の承認などのたびに更新します。

出典・参考

  1. [1]Mitchell, R. K., Agle, B. R., & Wood, D. J. (1997). Toward a Theory of Stakeholder Identification and Salience. Academy of Management Review
  2. [2]PMI: PMP Examination Content Outline – July 2026(PDF)

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