PMIの倫理・職業行動規範とは?
PMIは「Code of Ethics and Professional Conduct(倫理・職業行動規範)」を定めています。日本語では「倫理・職務規定」と訳されることもあります。
PMIの倫理のページによると、改訂版は2025年11月17日から有効です。守る対象は、PMIの会員、資格保持者、資格の申請者、ボランティアです。PMPを受験する人も含まれます。
規範は4つの価値ごとに、理想の基準と必須の基準を分けています。理想の基準は目指す行動、必須の基準は守らなければならない行動です。必須の基準に反すると、PMIの倫理審査委員会による懲戒の手続きの対象になります。
ECO 2026でも、倫理はガバナンスの一部です。Business EnvironmentのTask 1は、規則・手順・報告・倫理・方針などを定めることを挙げています。
責任・尊重・公正・誠実の4つの価値とは?
規範は、責任(responsibility)・尊重(respect)・公正(fairness)・誠実(honesty)の4つを土台にしています。それぞれの意味と、試験での場面を整理します。
| 価値 | 考え方の要点 | 試験での場面の例 |
|---|---|---|
| 責任 | 自分の判断と行動に、しなかったことも含めて責任を持つ | 自分の誤りを認めて報告する、能力を超える仕事は正直に伝える |
| 尊重 | 自分・他者・預かった資源(人・お金・安全・環境など)を大切にする | 対立は当事者と直接話す、他者の知的財産やデータを勝手に使わない |
| 公正 | 私利・偏見・えこひいきなく、公平に判断する | 知人の会社を仕入先に選ぶ、個人的な利益が絡む判断 |
| 誠実 | 真実を理解し、言葉と行動で正直にふるまう | 進捗や品質の数字を正しく伝える、都合の悪い情報を隠さない |
改訂版には、AIを含む技術を責任を持って使うことや、社会・安全・環境の利益を考えて判断することも書かれています。善意で倫理の懸念を伝えた人に報復しないことも、必須の基準です。
4つの価値は、選択肢を消すときの物差しになります。「数字を整える」「黙っておく」「知人を優遇する」といった選択肢は、どれかの価値に反するので外せます。
利益相反と贈答はどう扱う?
利益相反とは、プロジェクト・マネジャー(PM)としての判断に、自分や身内の個人的な利益が絡む状態です。たとえば、仕入先の候補に家族が勤める会社が入っている場合です。
規範の必須の基準では、実際の利益相反も、そのおそれがあるものも、関係者に進んで開示します。そのうえで、開示を受けた側が対策を承認し、同意するまでは、判断に加わりません。
隠したまま「公正に選ぶから問題ない」と考えるのは誤りです。規範は、自分では公正に判断できると思っても、利益相反に見える状態は利益相反として扱うとしています。
贈答や接待は、組織の規程と、その国の法令に従います。規程を超えるものや、判断に影響しかねないもの(契約の判断の前の高価な贈り物など)は受け取りません。規程がわからなければ、受け取る前に確かめます。
報告の改ざんや隠ぺいを求められたら?
PMPの中でも、答えがはっきり決まる場面です。上司や顧客に頼まれても、改ざん・隠ぺいには加わりません。
規範は、うそだけでなく、半分だけの事実や、誤解を招くように情報を伏せることも、欺く行為として禁じています。
- 1
応じない
数字の書き換えや情報の削除に加わらない
- 2
事実を確かめる
実際の状況とデータを確認する
- 3
正しく報告する
決められた経路で、事実どおりに伝える
- 4
必要なら上に上げる
組織の倫理・順守の窓口や上位者へ
倫理の問題では、納期やコストより、事実を正しく伝えることが優先します。
当サイトの整理です。
似た場面として、品質の検査を省くよう求められる、安全基準を満たさないまま出荷を急がされる、といったものがあります。どちらも、規則と安全を守ったうえで、遅れや影響を正直に報告して判断してもらうのが正しい行動です。
予測型のプロジェクトでは、遅れを隠したまま計画どおりと報告する選択肢は、誤答の典型です。進捗の扱いは予測型の問題の考え方でも扱っています。
倫理問題の典型例と、例外の考え方は?
倫理の問題では、他の問題で使う原則と順番が変わることがあります。
- 安全や法令違反が明らかなとき:「まず分析」より先に、作業を止める・報告する。
- 他の人の違反に気付いたとき:黙認せず、事実を確かめたうえで、決められた窓口や上位者に伝える。事実に基づかない申し立てはしない。
- 文化の違い:相手の習慣は尊重するが、法令や規程に反することはしない。
- 自分の誤り:隠さずに認めて報告し、影響を抑える。
- 能力を超える依頼:引き受けられないことを正直に伝える。
AIの利用でも、機密情報の扱いや結果の説明で、責任と誠実が問われます(AI関連問題の考え方)。倫理の価値がPMIの考え方全体の土台になっていることは、PMIイズムとはで扱っています。倫理の場面を含む問題を本番の形式で解くなら、無料模試30問が使えます。
受験者自身が守る倫理は?
倫理は、試験の中身だけの話ではありません。PMPの申請者として、受験者自身も守る規則があります。PMIのハンドブック(2026年6月改訂版)から、要点をまとめます。
- 試験の問題の中身を話さない。受験後に問題について話すことは、申請時に同意した規約に反するおそれがあり、資格の取り消しなどにつながりえます。
- 不正に気付いたら報告する。会員・資格保持者・受験者は、PMIの規則への違反を報告するよう求められています。
- 申請の内容を正直に書く。申請は監査の対象になることがあります。経験や研修の記録は、事実どおりに書きます。
「過去問」「本番の再現」をうたう問題を使わないほうがよいのも、このためです。
確認問題1
家族が勤める会社が入札に参加した
(当サイトの独自問題)プロジェクト・マネジャーは、部品の仕入先を選ぶ評価チームの責任者を務めている。入札に参加した会社の1つに、自分の兄が営業部長として勤めていることがわかった。プロジェクト・マネジャーが行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。利益相反があるときは、事実を開示して判断から外れます。開示を受けた側が対策を決めて同意するまで、選定に加わりません。公正さを自分で保証することはできません。
1:基準を曲げており、逆の意味で公正ではありません。2:開示していません。4:入札の手続きに私的に介入しています。
確認問題2
進捗の数字を良く見せるよう頼まれた
(当サイトの独自問題)月次の運営委員会(ステアリング・コミッティ)の前日、上司から頼まれた。「今月の遅れは来月取り戻せるはずだ。報告では計画どおりと書いておいてほしい」。実際には、重要なマイルストーンが2週間遅れている。プロジェクト・マネジャーが行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。上司の指示でも、事実と違う報告はしません。遅れを正しく伝え、取り戻す計画を一緒に示すことで、運営委員会に適切な判断をしてもらえます。
1:虚偽の報告です。2:重要な事実を伏せており、誤解を招きます。3:報告の責任から逃げています。
確認問題3
海外の取引先からの贈り物
(当サイトの独自問題)海外の仕入先を訪問したプロジェクト・マネジャーに、仕入先の社長が高価な腕時計を贈ろうとした。現地では、取引先に贈り物をする習慣がある。来月、この仕入先との契約の更新を判断する予定である。プロジェクト・マネジャーが行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。文化は尊重しますが、契約の判断を控えた時期の高価な贈り物は、判断の公正さを疑われます。丁寧に断り、組織の規程に沿って報告します。
2:習慣を理由に、来月契約の更新を判断する相手から高価な贈り物を受けており、判断の公正さを疑われます。3:影響させないと自分で決めても、公正さへの疑いは消えません。4:受け取ったこと自体の問題が解決していません。