アジャイルとウォーターフォールの違いを一言でいうと?
結論から言うと、違いは「最初に全体を決めて順に作るか、作りながら決めていくか」です。
ウォーターフォールは、要件定義・設計・開発・テスト・リリースを順番に進める方法です。前の工程が終わってから次へ進む様子を、上から下へ流れる滝にたとえた名前です。PMI の用語では「予測型(predictive)」と呼びます。最初にスコープ・スケジュール・コストを決め、計画との差を管理します。
アジャイルは、1〜4週間ほどの短い期間ごとに、使える成果物を作って関係者に見せる方法です。この期間をイテレーション、スクラムではスプリントと呼びます。見せたときの反応で、次に作るものを決めます。PMI の用語では「適応型(adaptive)」とも呼びます。スクラムやかんばんが代表的な手法です。
どちらが優れているという話ではありません。プロジェクトの性質に合う方を選ぶ、というのが PMI の立場です。
ウォーターフォール(予測型)
- 計画全体を最初に計画する
- 進め方工程を1回ずつ順に進める
- 届け方最後にまとめて納品する
アジャイル(適応型)
- 計画近い分だけ詳しく計画する
- 進め方短い周期で作る・見せる・直すを繰り返す
- 届け方周期ごとに少しずつ届ける
計画・変更・テストはどう違う?(比較表)
違いを9つの観点で並べると、次の表のようになります。PMP の問題を解くうえで特に大事なのは「変更」と「顧客の関わり方」の行です。
| 観点 | ウォーターフォール(予測型) | アジャイル(適応型) |
|---|---|---|
| 要求 | 最初に確定させる | 進めながら見つけ、磨いていく |
| 計画 | 全体を詳しく作り、ベースラインにする | 全体は粗く、直近のスプリントだけ詳しく |
| 変更 | 変更管理の手続きで評価・承認する | バックログを並べ替えて取り込む |
| 固定するもの | スコープを固定し、時間とコストを見積もる | 期間とチームを固定し、スコープを調整する |
| テスト | 終盤のテスト工程でまとめて行う | スプリントごとに完了の定義(DoD)に沿って行う |
| 成果物の届け方 | 終盤にまとめて1回 | スプリントごとに使えるインクリメント |
| 顧客の関わり方 | 最初の要件定義と最後の受け入れが中心 | スプリントレビューなどで継続的に関わる |
| 進捗の測り方 | 計画との差(ガントチャート、アーンド・バリューなど) | 完成した成果物(ベロシティ、バーンダウンなど) |
| リーダーの役割 | 計画を立て、指示し、統制する | チームを支え、障害を取り除く |
「固定するもの」の行は覚えておくと便利です。予測型はスコープが決まっていて、時間とコストが見積もりで動きます。アジャイルは期間とチームが決まっていて、何をどこまで作るかを価値の順に調整します。
「テスト」の行も大きな差です。予測型では問題が後半のテストで見つかりやすく、直す費用が膨らみがちです。アジャイルでは毎回のレビューで早く見つかります。予測型の計画と進み具合の表し方はガントチャートとは?で扱います。
それぞれのメリット・デメリットは?
どちらにも得意と不得意があります。デメリットは、向かない場面で使ったときに出る弱点と考えると整理しやすくなります。
| 進め方 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ウォーターフォール(予測型) | 予算と納期の見通しを最初に示しやすい/工程ごとの承認や契約の区切りが明確/役割を分けて大人数で進めやすい | 途中の変更が高くつく/価値が届くのは終盤になる/問題が後半まで見えにくい |
| アジャイル(適応型) | 変化に合わせて優先順位を変えられる/早く価値を届けて反応から学べる/問題が早く見つかる | 全体の費用と期日を最初に確定しにくい/顧客やプロダクトオーナーの継続的な関わりが必要/チームの自律と組織の支援が必要 |
デメリットの一部は、進め方の工夫で小さくできます。たとえばアジャイルでも、期日と予算の枠を先に決め、その中で届ける範囲を価値の順に調整する方法があります。
どんなプロジェクトにどちらが向いている?
判断の軸は2つです。要求がどれだけ確定しているかと、途中で変えたときの費用がどれだけ高いかです。
- 予測型が向く: 建物やプラントの建設、法令で仕様が決まったシステム改修、契約で成果物が細かく決まっている案件などです。要求が固く、作り直しが高くつき、一部だけ使っても価値が出にくい場合です。
- アジャイルが向く: 新しいサービスやアプリの開発、利用者の反応を見ないと正解が分からない改善などです。要求が不確かで、小さく作って試す費用が安く、早く出すほど学びが大きい場合です。
- ハイブリッドが向く: ハードウェアは予測型、ソフトウェアはアジャイルで作る製品開発などです。部分ごとに性質が違う場合に使います。詳しくはハイブリッド開発とは?で扱います。
よく見かける「大規模ならウォーターフォール、小規模ならアジャイル」という分け方は、規模しか見ていない点で不十分です。複数のチームでスクラムを回す手法(スクラム・オブ・スクラムズ、LeSS など)もあります。規模より、要求の確定度と変更の費用で判断します。
「アジャイルは計画しない」「文書を作らない」も誤解です。計画はスプリントごとに作り直し、必要な文書は作ります。
適合性はどう評価する?(アジャイル適合性フィルター)
PMI と Agile Alliance は、共同で『アジャイル実務ガイド』を出しています(2017年。日本語版あり)。その付録に、アジャイル適合性フィルターという評価の道具があります。文化・チーム・プロジェクトの3つのカテゴリーに3項目ずつ、合計9項目を1〜10点で採点します。
点が低いほどアジャイル寄りです。結果をレーダー図に描き、中心付近に集まればアジャイル、外側なら予測型、その間ならハイブリッドが合う、と読みます。
大事なのは使い方です。1人で採点せず、スポンサーや顧客の代表を含むグループで話し合って点を付けます。結果は決定ではなく、関係者と進め方を話し合うための材料です。
| カテゴリー | 項目 | 確かめること(当サイトの要約) |
|---|---|---|
| 文化 | 賛同 | 上級スポンサーが、アジャイルで進めることを理解して支えているか |
| 文化 | 信頼 | スポンサーや業務の担当者が、チームに任せて支え続けると思えるか |
| 文化 | 意思決定 | 作業の進め方を、チームが自分たちで決められるか |
| チーム | チームの規模 | 中心メンバーの人数。少ないほどアジャイル寄り |
| チーム | 経験 | それぞれの役割に、経験のある人がいるか |
| チーム | アクセス | 業務の担当者や顧客に、毎日相談できるか |
| プロジェクト | 変更 | 要求が変わったり増えたりする見込みはどれくらいか |
| プロジェクト | 重要度 | 失敗したときの損失の大きさ(時間の損失から人命まで) |
| プロジェクト | デリバリー | 一部だけ作って使い、評価やフィードバックができるか |
採点の結果はどう読む?(当サイトの例)
架空の例で読み方を確かめます。会員向けのアプリに、新しく決済の機能を足すプロジェクトを採点したとします。
- 賛同2
- 信頼3
- 意思決定3
- チームの規模1
- 経験4
- アクセス2
- 変更3
- 重要度7
- デリバリー6
多くの項目は低い(中心寄り)一方で、重要度とデリバリーだけが高く出ています。
1〜10点で、低いほどアジャイル寄り。当サイトの架空の例です。
文化とチームの点が低いので、アジャイルで進める土台はあります。ただし、決済の誤りは大きな損失につながります。一部だけ出して試すのも難しい部分です。
そこで、画面や会員機能はアジャイルで進め、決済の部分は検証と文書を厚くする、といったハイブリッドが候補になります。『アジャイル実務ガイド』も、中心に寄りつつ一部の軸が突き出す結果には、ハイブリッドが合いやすいと説明しています。
反対に、プロジェクトの性質はアジャイル向きでも、文化やチームの点が高い(外側に出る)こともあります。その場合はいきなり切り替えず、教育や小さな試行から始めるのが現実的です。
PMP試験ではどう問われる?
新ECO(2026年版)の Process のタスク1には、開発アプローチの推奨が含まれます。プロジェクトの必要性・複雑さ・規模を評価し、予測型・アジャイル・ハイブリッドから選ぶ仕事です。問題文は、たとえば次のような形で出ます。
- 場面の特徴(要求の確定度、関係者の関わり方、規制の有無)を読んで、最も合うアプローチを選ぶ問題
- 途中で状況が変わったとき(要求が頻繁に変わり始めた、など)に、アプローチの見直しを提案する問題
- アジャイルに慣れていない組織で、まず何をするか(教育・試行・関係者の合意)を選ぶ問題
いずれも「どちらが優れているか」ではなく、「この場面に合うのはどれか」を問います。問題文の手がかりから場面を見分けるコツは予測型かアジャイルかを見分ける方法にまとめています。アジャイル問題全体の考え方は、PMPのアジャイル対策が参考になります。
確認問題1
新しい予約アプリの開発
(当サイトの独自問題)ある会社が、店舗の予約をスマートフォンで受け付ける新しいアプリを作ることになりました。利用者がどんな機能を求めるかは、まだ分かっていません。経営層は「早く出して反応を見たい」と考えています。社内には、少人数で経験のある開発チームがあります。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。要求が不確かで、早く出して学ぶことに価値があります。チームの条件もそろっているので、アジャイルが合います。
1:要求が分からない段階で全体を確定させると、作り直しが増えます。2:調査に数か月かけると、その間に学びの機会を失い、市場に出るのも遅れます。小さく出して反応を見る方が早く確かめられます。4:変更を手続きで管理する予測型では、要求が頻繁に変わると承認待ちが積み上がります。
確認問題2
規制の厳しい設備の更新
(当サイトの独自問題)病院の医療ガス設備を更新するプロジェクトです。仕様は法令と設計基準で細かく決まっています。工事の途中で変更すると、大きな手戻りと再検査が必要になります。チームの一部から「流行しているアジャイルで進めたい」という声が出ています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。要求が固く、途中の変更が高くつき、一部だけ使って評価することもできません。予測型が合います。理由を説明して関係者の合意を得るのは、PM の役割です。
2:場面の性質に合わないアプローチを、意欲だけで選ぶのは誤りです。3:開発アプローチの推奨は、新ECO の Process 1 で PM の仕事に含まれています。判断を任せて待つのは役割の放棄です。4:医療設備を未完成のまま使いながら仕様を決めるのは、安全面で受け入れられません。
確認問題3
変更が増えてきた予測型のプロジェクト
(当サイトの独自問題)予測型で進めている社内システムの開発です。顧客の業務部門から、仕様の変更要求が毎週のように届くようになりました。変更管理の手続きが追いつかず、承認待ちの変更が積み上がっています。業務部門は「実際に画面を触らないと決められない」と言っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。原因は「触ってみないと要求が決まらない」ことです。その部分はアジャイル(またはハイブリッド)で、短く作って見せる方が合います。進め方の見直しを提案するのが適切です。
1:顧客にとっての価値を無視し、使われないシステムになるおそれがあります。2:手続きを速めても、要求が決まらないという原因は残ります。3:触らないと決められない相手に詳しい仕様書を求めても、同じ問題が続きます。
こうした「場面からアプローチを選ぶ」問題は、無料模試30問にも含まれています。